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ボーズ粒子とフェルミ粒子と4つの力について

粒子は大きく分けるとボーズ粒子フェルミ粒子があります。
ここでは、そのことについてここで説明します。

1 シュテルン・ゲルラッハの実験

回転している物体には、角運動量と言われる物理量を持っています。また、原子の場合もまた、原子核の周りに電子が回っているので、電子は角運動量を持ちます。この角運動量を軌道角運動量と言います。またこれとは別に、回転運動とは関係のない角運動量というものが存在し、それをスピン角運動量(スピン)です。電子がスピンを持っていると示したのがシュテルン・ゲルラッハの実験です。この実験は1921年に実施され、以下のように不均一な磁場中に銀原子線のビームを通す実験を行い、ビームが2つに分かれるのを見出しました。

この事実を説明するには、電子が軌道角運動量とは違う、運動とは関係ない角運動量がなければならないことを示しました。その角運動量をスピンといいます。これは磁気モーメントと言われる物理量によって決まる角運動量です。スピンの大きさは±ħ=h/2π(hはプランク定数)ずつのとびとびの値を取ります。

2 同種粒子

電子や陽子、中性子、光子などは質量、電荷、スピンを持ちます。ここで、同じ種類の粒子は全く同じ質量、電荷、スピンといった物理量を持ちますので、同じ種類の粒子は互いに区別ができません。その区別ができない同じ種類の粒子を同種粒子といい、その粒子の状態を表すものを波動関数と言います。
 ここで2つの同種粒子の位置とスピンを入れ替えた場合、2つの粒子は区別できないので、粒子の状態も区別できません。なので、入れ替えた後の波動関数の絶対値に変化はありません。その時、2つの粒子を入れ替えたら、波動関数の符号がマイナスになる粒子をフェルミ粒子(フェルミオン)と言い、プラスとなる粒子をボーズ粒子(ボゾン)といいます。

 その結果、ボーズ粒子同士は同じ場所に重ね合わせられる事ができ、フェルミ粒子同士はそれができない性質を持ちます。その事を抽象的に言うと、ボーズ粒子は同じ位置において量子状態を取ることができ、フェルミ粒子は同じ位置において量子状態は1つのみしか取れないと言う事であり、このフェルミ粒子の性質をパウリの排他律といいます。(量子状態とは、わかりやすく言うと量子力学で記述される空間における状態です)

 また他の性質として、ボーズ粒子はスピンの大きさが0、1、2と整数倍をとるのに対し、フェルミ粒子は1/2、3/2と半整数倍をとります。電子の場合はスピンの大きさが1/2を持つ(ħ/2と-ħ/2の2つの状態を取れる)フェルミ粒子であることがわかり、光子の場合はスピン1(+ħ、0、-ħの3つの状態を取れる)のボーズ粒子であるのがわかっています。このように、自然界に存在する粒子は以上の2つに分類できます。例として、以下のようになっています。

 ボーズ粒子:フォトン、グルオン、ヒッグス粒子
 フェルミ粒子:電子、陽子、中性子、クォーク、ニュートリノ

3 フェルミ粒子の性質

温度を下げると、粒子はエネルギー準位が低い所に落ち込みます。一方、電子などのフェルミ粒子はパウリの排他律により、2個以上の粒子が一つのエネルギーおよびスピンの状態を占めることができません。したがって、フェルミ粒子の状態は低い順から1つの状態のみ占有することになります。しかしある温度以下になるとエネルギー準位がいっぱいになって、高いエネルギーのまま残ります。つまり、温度を下げても状態がそのままになるといことです。それは以下の図のようになるということです。縦軸はエネルギー準位となります。

この状態をフェルミ縮退といい、それが起き始める温度をフェルミ温度といいます。また、フェルミ温度の時の粒子のエネルギーをフェルミエネルギーと言います。フェルミ温度は粒子の質量が小さいほど、密度が高いほど大きいです。なのでフェルミ温度以下の状態では、エネルギーを高くすることも下げることもできません。ここで、励起とは原子や分子が外からエネルギーを与えられることで、エネルギーの低い状態からエネルギーの高い状態へと移ることを言います。

フェルミ縮退は、低温で粒子の密度が高い時に起きますので室温程度の金属中の自由電子、恒星の中心核、白色矮星や中性子星などで生じると言われています。なので、金属中の自由電子にエネルギーを与えても状態は変わりません。

4 ボーズ粒子の性質

温度を下げた時、光子などのボーズ粒子の場合は、同じ場所で同じ量子状態が取れることから、以下の図のように一番最低のエネルギー準位に全て落ち込みます。

そうすると、多数の粒子が合わさってあたかも一つの粒子として振る舞うことができ、その現象をボーズ・アインシュタイン凝縮と言います。これは、エネルギーが凝縮をしているという意味であり、空間のある場所に液体が集まったという意味ではありません。また、液体ヘリウム4の超流動や超伝導中の電子のクーパー対は、この現象と関連があります。(液体ヘリウムが粘性を失い、抵抗なしに流れる現象のことを超流動といいます)。

5 自然界にはたらく4つの力について

力とは、物体の運動状態や形状を変える原因となるものと言われます。素粒子物理学では、その原因が粒子同士がゲージ粒子と言われる粒子を交換することにあると言われています。また現在、自然界には4つの力があると言われます。それが以下の4つです。

電磁気力
強い相互作用
弱い相互作用
万有引力(重力)

それぞれについて説明していきます。

電磁気力
電荷を帯びている粒子(荷電粒子)の間にはたらく力を電磁気力といい、ゲージ粒子は光子です。正の電荷を持つ粒子と負の電荷を持つ粒子が近ずくと、光子を交換しあう事でお互いに運動状態を変えます。ここで光子は実際に存在する光子ではなく、仮想粒子として現れるものです。仮想粒子とは、生成と消滅を短時間で繰り返す粒子のことです。この力に関する理論は量子電磁力学です。またこの力を生じさせている物理量は電荷になります。

強い相互作用
原子核内にある粒子にはたらく力を強い相互作用といい、電磁力より力が大きいので、強いと名付けられています。ゲージ粒子はグルオンです。この力に関する理論は量子色力学(QCD)です。またこの力を生じさせている物理量は色荷(カラー電荷)になります。カラー電荷を持つことで、強い相互作用を引き起こしています。

弱い相互作用
粒子を別の粒子に変える力を弱い相互作用といい、ゲージ粒子はウィークボソンです。弱い相互作用が引き起こす代表的な現象が中性子のベータ崩壊です。この力に関する理論はフェルミ理論です。またこの力を生じさせている物理量は弱荷(弱アイソスピン)になります。弱アイソスピンを持つ粒子が弱い相互作用を引き起こしています。

万有引力(重力)
質量を持つ粒子にはたらく力を万有引力(引力)といい、ゲージ粒子は重力子(グラビトン)というまだ未発見の粒子です。この力に関する理論は一般相対性理論になります。また、この力を生じさせている物理量は重力質量です。

統一理論について
現在、この4つの力の全てを包括しようという理論が研究中です。まず、電磁力と弱い相互作用は、ワインバーグとサラムによって電弱統一理論としてまとめられました。現在、電弱統一理論に強い相互作用を取り入れようとする研究がなされています。その理論を大統一理論といい、まだ未完成です。大統一理論に重力と取り入れようとする研究もなされていて、いくつかの理論として候補があります。超ひも理論もその候補の一つです。

引用 http://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201310082013-9.html

(参考資料)素粒子の種類について

引用 http://photonterrace.net/ja/photonlab/ohsuka/02/

参考文献

原 康夫「量子力学 (岩波基礎物理シリーズ (5))」岩波書店 (1994/6/6)

長岡 洋介「統計力学 (岩波基礎物理シリーズ 7) 」岩波書店 (1994/7/6)

桜井 純「現代の量子力学〈上〉 (物理学叢書) 吉岡書店 (1989/02)

砂川 重信「エネルギーの物理学 ---力学、熱力学から統計力学まで (KAWADEルネサンス) 」河出書房新社; 復刻新版 (2012/10/17)

ファインマン「ファインマン物理学〈5〉量子力学」岩波書店 (1986/4/7)

杉山 忠男「理論物理への道標〈下〉」河合出版; 三訂版 (2014/8/1)


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