パスタへの道 第五話 錯覚を生む理容室
旅行をしたら、その土地で散髪をするのが自分の習慣だ。散髪は経験であり、少しの間、程よく自分の見た目として残るので、この習慣は気に入っている。
インドでもオーストラリアでもポーランドでもアルゼンチンでもフィリピンでもイタリアでも散髪は行った。得体の知れない店で散髪してもらう時の、ある程度は自分から要望を出すが、最終どうなるか分からない感じが陶芸のようでいい。感覚としては、茹でたことのないパスタをはじめて茹でた時のワクワク感に近い。パッケリをはじめて茹でた時は正解がわからなかったが。散髪にも正解はないと思ってる。
日本だと決まって行くのが理容室である。間違った考えなのかもしれないが、美容室より理容室の方が洗練されていると思っている。理容師をするには免許が必要で、何よりも顔剃りができる。仕上げに関しては集中してる度合いが段違いに見える。もはや、見た目がどうとかじゃなくて、基準は切っている人が美しいと思えるかなのだ。
ある日行ったのが合羽橋と上野の間にあるホープ理容店。店のおもてには『オリジナルヘアーを創る店』とかかれている。加えて、何がおもしろいかというと、どう見ても建物が歪んでるのである。しかし、実際入ってみると歪んでいない。
気になるので、ことの次第を店主に聞いてみた。
つづく
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