パスタへの道 第四話 うまけりゃいいってもんじゃない

合羽橋から浅草への道にはパラパラと、しかし結構な数のご飯屋さんがある。

あまりこの土地を知らない頃、どのお店でご飯をいただこうか迷っていた。どこに行ってもそうなのだが、どれだけ美味しそうな店があっても、昔ながら感を出してる喫茶店があれば、そこに入る。これが私の習慣だ。

ある日入った喫茶。中はレトロでジュークボックスやレコードがたくさん置いてある。流れている曲も70〜80年代の曲ばかりだ。曲の名前も分からないが、和む。

どんなメニューがあって、何を食べたか忘れたが、飲んだコーヒーがKEYコーヒーのブレンドで、一緒にいたバーバラはナポリタンを食べていたことだけは覚えている。別にうまくもまずくもなかったが、満足感はあった。

時折、食べはするのだが、個人的には喫茶店のナポリタンは許せない。何がというと、味が暴力的なのだ。おいしいと感じるように作られた糖質・脂質たっぷりのあの品のかけらもない人工的なソースが本当に許せない。しかし、ナポリタンの歴史は興味深い。長くなるのでこの話は避けるが、戦争と食文化の深さを感じさせられる。

そんなことよりも、もう一つの私の習慣を紹介しよう。意味の分からない店名の店に訪れた時は、店の名前を聞くようにしている。その時の反応で店に対する気持ちの強さが分かる。店員さんが店長をわざわざ呼びに行く様子も微笑ましい。

ある日、佐賀に旅行に行った時、床屋『バビロン』で散髪をした。なんの変哲もない昔ながらの床屋だったのだが、やはり店名の由来が気になる。店員さんに聞いたところ、亡くなった先代の店長がつけたから、もう分からないとのこと。命名の経緯の想像すらつかない。

ちなみに、さっきの喫茶店の店名は『C is Z』。何か分かりそうで分からない店名。さて、聞いてみたところ、店長曰く『CがChanceでZが最後って意味。最後のチャンス』説明を受けた時は納得したフリをした。しかし、何かおかしくないか!?

つづく


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