映画「八犬伝」を見てきました。滝沢馬琴の物語。
映画「八犬伝」を見てきました。面白かった。
山田風太郎さんの原作は読んでいて、すごく面白かった記憶があります。もう二十年くらい前に読んだので記憶はほぼないですが、わりと原作に忠実ではないでしょうか。山田風太郎さんの小説のでは「同じ時代に生きていた人たちがあっていたかもしれない」というifの物語がよくあります。有名な「魔界転生」なんかもそうですね。この映画でもどこまで史実かわかりませんが、主人公である滝沢馬琴は葛飾北斎、鶴屋南北、渡辺崋山などに会います。そのような描写があったので「原作に忠実ではないかな」と思いました。作中作である八犬伝の物語は原作の方がしっかり書かれていて面白いと思います。この映画の八犬伝の物語は、面白いところをかいつまんで描写しているかたちです。原作は冗長らしいですが、読んだことはないです。
「南総里見八犬伝」の映画化というより、その作者「滝沢馬琴」の物語ですね。物語という「虚」、現実世界の「実」。「虚構と現実」について劇作者の馬琴の生涯と、北斎、南北、華山などとの会話から語っていく物語です。
私は原作を知っていたので面白く見られましたが、日本を舞台にしたファンタジー作品を期待していくと「思っていのと違う」となってしまうかもしれないですね。
八犬伝パートは現代の物語を読んでいる人にとっては、よくある話ですし(現代の物語の原型のひとつではあるわけですしね。それこそ原作者の山田風太郎さんにも影響を与えるているはずで、そうなると少年漫画誌にも通じるわけです)。上述しましたが、盛り上がっているところをかいつまんでいるだけです。八犬伝パートだけでは、それほど面白くはないと思います。それでも、八人揃うところは胸躍りますね。もう少し玉梓との最後の戦いは派手でも良かったかな、とは思いました。滝沢馬琴の現実パートは重い話となっていくので、間あいだに挟まれる八犬伝パートは心を安れられる感じで良かったです。安心して見られるというのは、勧善懲悪物語のいいところですね。こういう作品を見ている時の心の動きも、作中のテーマにリンクしているので、技巧的な物語ですね。
八房(犬)CGを凝っても良かったかなと思いました。凝ると制作費がとんでもなくなってしまうのだろうか。超現実的なアクションは見どころでもありましたが、もっと鬼気迫るような熱いものが見たかったなとも思いました。
八犬伝の物語に比して、現実パートはそれぞれの人間の考え方を見せるかたちで物語が進んでいきます。特に大きな事件など起こるわけでもないのですが、真面目な馬琴と飄々としてる北斎の会話が面白い。
馬琴と南北の物語における「虚」と「実」の談義も面白い。馬琴は「辻褄が合わない現実世界。物語の中では辻褄があってほしい。正義が勝ち、悪が滅びる世界であってほしい」と願い、南北は「つじつまが合わない世界こそ面白い。それを物語にも反映させる」という考え方です。
華山との会話もあまり印象に残ってないですが、考え方を聞くのは面白い。
馬琴と妻とのやりとり、息子とのやりとり、息子より長く生きることへの絶望。そして、目が見えなくなった馬琴が、息子の嫁(漢字があまり読めない)へ口述して八犬伝を書き上げる姿は感動を覚えます(子供たちの世話はどうしているの? とは思いましたが)。
人は人の「考え方」に興味を持つ、と思えた作品です。
あと良かったのはこの物語、物語ちょっとした彩りを与える「恋愛」要素(主題と関係なく入ってくる恋愛要素)ないです。それがいい。
馬琴の息子は病を患い亡くなりますが、それに対して馬琴は淡々と受け入れます。華山に描いてもらった掛け軸をかけているところを見せて、そを見て時々息子を思い出しているだろう馬琴を考えさせて、直接的な描写なく悲しみを表現しています。そも良いですね。
物語の前半は説明的な台詞がないわけではないですが、現実パートでは大袈裟な表見などもなく、静かな感じで良かったです。
馬琴という一人の作家が何を考え生きていたのか、その部分を中心に見ると楽しく見られます。八犬伝のパートも物語に期待しないで見れば、アクションや魅力的なキャラクター(江戸時代に魅力的なキャラクターを作っているってすごいですね。物語には古さも感じますが、キャラクター造形に関しては現代にも通ずると思います)を中心に楽しめます。
面白かったです!
映画を楽しめたら、ぜひ原作も!
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