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被害者意識と正当な被害感情の違い


以下では、「被害者意識」と「正当な被害感情」について、できるだけ包括的かつステップバイステップで解説を試みます。本文中で適宜文献を引用し、最後に参考文献リストを提示します。


ステップ1:緒言と問題設定

(1) なぜ被害者意識と正当な被害感情を区別する必要があるのか

被害者意識(Victim Mentality)は、実際の被害の有無や程度を超えて、「自分は常に不当に扱われている」「環境や他人のせいでうまくいかない」といった主観的な思い込みに囚われる状態を指すとされます (Oggi, 2022 [4])。一方で、正当な被害感情(Legitimate Victim’s Emotion)は、客観的に重大あるいは不当に与えられた被害に対する自然かつ妥当な心理的反応として位置づけられます (Ministry of Justice, 2020 [13])。

両概念を混同すると、以下のような問題が生じるおそれがあります。

  • 二次被害の拡大:正当な被害感情を「ただの被害者意識」と誤解し、周囲が適切に支援を行わない場合、被害者本人がさらに傷つくことになる (NPA, 2023 [1])。

  • 自己成長の阻害:本来であれば正当な怒りや悲しみを表現すべき場面で、「自分はわがままなのでは」と感情を押し殺してしまい、トラウマを深める恐れがある (Victims-Mental, 2021 [10])。

このように、両者を区別し論じることは、被害者支援や心理的ケア、そして社会的な制度設計においても重要な意義を持ちます。


ステップ2:概念整理

(2) 被害者意識とは何か

  • 主観的・持続的な「被害感」
    被害者意識が強い人は、周囲の出来事や他人の言動を自分への攻撃や不当な扱いと捉えやすいという特徴があります (Mainichi, 2019 [5])。

  • 自己責任の回避
    失敗やトラブルが起きたとき、「自分は悪くない」と外的要因に責任を転嫁しがちです (Oggi, 2022 [4])。

  • コミュニケーション上の摩擦
    周囲と頻繁に衝突が起こりやすく、結果として人間関係が希薄化したり孤立化したりする場合がある (Toyokeizai, 2018 [7])。

(3) 正当な被害感情とは何か

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桑机友翔録

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