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小説『いいねの数だけ死体が増える』 クライマックス:いいねの数だけ死体が増える
タイトル回収ともなる真実の発覚
狂気的な歯車の軋み,夜空を貫く漆黒の翼,物理法則を嘲笑うサーカス――それらが一つの舞台に収束するなか,“いいねの数だけ死体が増える”という不穏な言葉が,ついに現実となって迫ってくる。これまで断片的だった噂や目撃情報が一本の線になり,SNSと異界の“接合部”で,ついに破滅的な真実が浮かび上がる瞬間が訪れようとしていた。
1. 世界を覆う“いいね”の歯車
SNS上で起きるバズやトレンドは,平和な日常には無害に思えるものだ。だが,歯車ゴーレムや影のフェニックスの現象,量子サーカスの超常演出が明らかになるにつれ,“いいね”の背後に潜む闇のメカニズムが露わになっていった。ほんの一瞬で何万,何十万と押される“いいね”の総量は,いつしかひとつの巨大な歯車装置へと成長し,ネットと現実を結ぶ見えざる扉をこじ開けているのだ。
この歯車装置は,まるでオルガンのパイプのように無数の“いいね”を配管として繋ぎ合わせ,そこに人間の欲望や恐怖,興味本位や虚栄心といった感情エネルギーを流し込んでいる。やがて装置が回りきったとき,世界のあちこちで新たな死が生まれても不思議ではないほどの“歪み”が増幅する。それこそが“いいねの数だけ死体が増える”という不気味なタイトルが,単なる戯言ではなく現実の呪文として機能している証拠なのだ。
2. 連鎖する死と“いいね”が呼び合う瞬間
歯車ゴーレムと影のフェニックスの出現がピークに達した夜,SNSには奇妙な投稿が溢れ始める。「この投稿が何いいねを超えたら,誰かが死ぬ」といった挑発めいた書き込みは,もはや散発的なジョークや炎上商法にとどまらず,現実の事件や事故と同期してしまうことが多発する。多くのユーザーは半信半疑のままボタンを押し,信じたくない予言じみた文章のとおりに周辺で死体が見つかった,という報告が相次ぐのだ。
そうして日ごとに増える死体の報道は,一旦SNSで拡散されると,またさらなる“いいね”を生み出す。興味本位やホラー好きを呼び寄せ,時に恐怖を感じつつも好奇心を捨てきれない人々が噂に飛びつく――結果として歯車はさらに回転し,死は加速度的に増えていく。この悪夢の連鎖が頂点に達する頃には,ごく一部の感受性の鋭い人間が感じ取るだろう。ああ,これはすでに“儀式”の終盤なのだと。
3. 仮面を外したサーカスと羽ばたく闇の鳥
一方で,量子サーカスの“最終公演”と噂されるショーがどこかの廃墟で行われるという情報が,ネットの奥底で囁かれる。廃工場の中央に突如として広がったサーカステントには,歯車をかたどった巨大な舞台装置と,暗黒の羽根を思わせるオブジェが飾られ,“いいね”の嵐によって歪みを増した空間がそこに固定されているという。そして真夜中,仮面を外した道化師たちが悲鳴にも似た合唱を始めた瞬間,闇の中からフェニックスの姿を宿す影が舞い降りる。
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