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被害者意識ナショナリズム
以下では、「被害者意識ナショナリズム」全般について、ステップバイステップで整理しながら質の高いアウトプットを示します。大枠の構成は、前回お示しした目次案を踏まえていますが、今回はQ&A形式を取り入れ、本文中で逐次引用を行い、最後に参考文献一覧をまとめました。長文ではありますが、学術的かつ体系的に整理することを目的としています。
第I部 概念と理論的背景
Q1. なぜ「被害者意識ナショナリズム」を考察するのか?
A1.
まず、世界各地の歴史認識問題や国際関係において、「被害者」としての立場を強調する動きが顕著に見られます。これは、戦争やジェノサイド、植民地支配などの「歴史的トラウマ」が現在の政治・社会・文化の文脈で再利用・再解釈されているためです(Lim, 2019)。たとえば日本と韓国の間での歴史教科書問題や慰安婦問題、ドイツとポーランドのホロコースト関連の対立、またポーランドやハンガリーなど中央ヨーロッパ諸国が示す「被害者」言説の政治利用など、多種多様な事例があります(Lim, 2021)。こうした事例を総合的に理解するうえで、「被害者意識ナショナリズム」という分析視点が非常に有効です。
Q2. 「被害者意識ナショナリズム」とは何か?
A2.
韓国の歴史家・林志弦(イム・ジヒョン)教授の研究(Lim, 2014; 2019)によれば、「被害者意識ナショナリズム(Victimhood Nationalism)」とは、
自民族が歴史的に受けた被害(戦争、植民地支配など)を過度に強調し、
その「被害者性」をもって国家・民族の正当性や道徳的優位を主張する
ナショナリズムの一形態です。多くの場合、他民族や他国の「加害」に対してのみ注目し、自らの加害責任や複雑な歴史的過程を相対化もしくは軽視する傾向が見られます(Lim, 2019)。
Q3. 被害者意識ナショナリズムと一般的な民族主義の違いは?
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