たべたび。07 マンジェリコン(ポルトジンユ)~良薬は口に苦しは何かに似ている~
最近はハーブに興味がそそられているこの頃。
ハーブとは面白い。その香りもさることながら、経験則からか、はたまた科学的に確かなのか、真偽不明なたくさんの効能をハーブは持っている。
だがとにかく、体には良さそうだ。でなければ火の無いところに煙は立たない。
いや、この場合は煙ではなく香りだろうか。
効き目の無いハーブに香りは立たない、とでもいえるだろうか。
……とにかく。
アロマテラピーとしても、アーユルヴェーダにしても、ハーブとはとかく面白いものである。
そしてそんなものがあるのなら、しかも口にしても良いというのなら。
ぜひとも口にして、香りや味がどのようなものかわが身で確かめてみたい。
そんな風に考えていた矢先。
ずいぶんと薬効のあるハーブがあるというのを耳にした。
というか、目にした。植物ショップで。
マンジェリコンなるハーブに、私は出会ったのだ。
薬効高きマンジェリコン
まずくて有名?
マンジェリコン、不思議な名前だ。
なんだか伝説の本や鉱物なんかにありそうな響きである(オリハルコンみたいな)。
葉を触ってみるとワックスでもついているかのような、滑りの悪い触り心地だ。
沖縄などで伝統的に薬草として用いられ、薬草茶にして飲んだりもしているらしい。
沖縄にはこれまで何度か訪れているが、マンジェリコンには一度もであったことが無かった。
かくも奥深き琉球の国。まだまだ知らないことが多そうだ。
ボルトとポルトジンユ ――同じ名で呼ばれる別の植物――
調べてみると、マンジェリコンという名で呼ばれる植物は、特に日本では2種類あるらしい。
それがボルト、そしてポルトジンユである。
どちらもシソ科の植物で、見比べてみると葉の大きさや花の形などが違うので区別はしやすい。
が、どうしてマンジェリコンという同じ名前で呼ばれているのか。それには複雑な事情があるらしい。
下記のページが詳しく書かれているので見てほしいのだが、
かいつまんでいうと、もともと原産といわれるブラジルではバジルをManjericãoと呼んでいた。それがブラジルへ移民としてわたっていた日本人がおそらく間違ってボルトジンユもしくはボルトをManjericãoと認識、国内に広がった。
したがって国内ではバジルではない植物をManjericão、つまりマンジェリコンとして知られるようになった、というわけらしい。
なんともややこしいことだ。だがこのようなことは多少なりとも昔からよくある。
少し違うかもしれないが、イチョウは学名が本来とは違った表記で認められてしまった経緯がある。
本来は属名をGingyoとするところ、ドイツ人学者の聞き間違いでGinkgoとして登録されてしまったのだ。
間違いは誰にでもあるが、なるべくなくすようにしていきたい。特に後世に残るような仕事の場合は。
ともかく。
いろいろと複雑な事情を抱えているマンジェリコンである。
自分で摘み、淹れ、飲んでみる
マンジェリコンの事情についてここまでにして、さあその味を実際に確かめてみよう。
オーソドックスにハーブティーにしてみるか。これが一番手軽で良い。
マンジェリコンの株から枝を五センチくらい摘み取る。
これをお湯に入れ、1分くらい煮立たせる。
淹れ方がこれで良いかは分からないけれど、緑茶のような色が湯に付いたのでオッケーとしよう。
後はコップに入れて、完成だ。
見た目は緑茶。特徴は無い。
が、香りはやはり独特だ。緑茶とは全く違う、癖のある匂いだ。
だが、まったく嗅いだことのない香りではない。初めて嗅いだマンジェリコンのハーブティーの香りなのに、私はこの匂いを知っている気がするのだ。
過去に嗅いだことのある匂い。それもこれまでに何度か、さらに割と最近にも嗅いだ気がする。
何だ、何の匂いだ……記憶をグルグルめぐらして、はたと私は気づく。
そうか、これは。
ゼンマイをあく抜きのために煮たときの匂いだ。
ゼンマイは干しゼンマイにするときに、一度煮る作業がある。
山菜採りもする私は、春先にその匂いを何度も嗅いできた。
しかし、それはゼンマイ特有の匂いとして頭でリンクされていたので、まさか全く別の植物で似たような匂いを嗅ぐとは思ってもみなかった。
嫌な匂いではない。だが別に良い香りでもない。
春を告げる、田舎の香りといったら語弊があるだろうか。
こういう香りが、もしかしたら好みの分かれる要素なのかもと思いながら、私はついにコップに口を付けた。
そして、嚥下。
……そこまで苦くない気がする。
使った葉の量が少なかったのか、いや、これだけ色が湯に付いているのだからそんな気はしない。
確かに口には独特の苦みが残る。美味いかどうかといわれたら、そりゃあ緑茶とかと比べたら否だろう。
だが、めちゃくちゃまずいかと問われるとそこまでではない気がする。
「おえっ」とは私はならなかった。
正直、かなり警戒をしていたので拍子抜けだった。
なんだ、普通に飲めるじゃないか。
この味で薬草茶なら、そこまで身構えずに飲んでいられる気がする。
まあ、私の舌が壊れている可能性もあるのであくまでも個人的な意見だが。
でも言われているような凄まじいまずさではないとは思った。
やはり、実際に確かめてみないと物事は分からないものだ。
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