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よのなかよもやま寄稿 01:ゼンマイの色の多様さと似た種との見分けづらさ

春は、花の季節だ。

たくさんの植物が冬の寒さを乗り越え、暖かさに喜ぶかのように可憐な花々を咲かせる。

色とりどりの花は、まだ冬の名残で葉の緑色が少ない野外にあってとても華やかだ。
枯葉の茶色の中にポツンと有彩色があると、思わず目が吸い寄せられてしまうものである。

そういうわけで、春は花見がやはり風情があってよいと私は思うわけである。街中に桜の花が咲き乱れるように、山野にも花々が咲き誇るのだ。

一方でこうも言う。花より団子だと。

私は大抵のときには腹を空かせている食いしん坊で、花見で花を愛でるのもよいが、やはり屋台の匂いに吸い寄せられてしまうことが多々ある。

同じように、山野を歩いていれば花を眺めていた目は、だんだんと別のものへと移り始めていってしまう。

春は、山菜の季節である。



山菜の代表格『ゼンマイ』

『ゼンマイ』は昔から利用されてきた代表的な山菜だ。

炊き込みご飯に入れたり、お正月とかに煮物などで食べたりと食べられるシーンは多く、とてもなじみ深い山菜である。

その味から、山菜の王様と呼ばれることもある。ちなみに女王はコシアブラらしい。
山菜の王様としてはタラの芽や東北で食べられる『しどけ』も同様にそう呼ばれることもある。共通なのは、どれも美味しいということだ。

春の山菜として、ゼンマイはその新芽を採る。
綿毛に包まれたクルリと丸まった姿はなんとも愛嬌があり、人の気配のない山中で斜面などにニョキニョキと生えているのを見つけると、私は少しホッとしたりするのだ。

思えば、春の山菜はシダ植物を多く利用する。

ゼンマイの仲間を始め、ワラビやこごみ(クサソテツ)もシダ植物。奄美大や沖縄に自生するヒカゲヘゴも春頃に新芽を利用できるが、これもシダ植物。

どれも新芽を食べるので、必然その収穫時期も新芽の出る春頃になるのは当然ではある。

ジメジメしたところに生えているイメージのある、どちらかといったら気味の悪い印象の強い気がするシダ植物だが、春は多少であっても彼らに脚光が当たる貴重な時期なのかもしれない。


話がそれてしまった。


ともかく、ゼンマイはみんながよく知る山菜だ。

私も春になると山菜を採りに行くことがある。

シダ類の山菜は採れるようになる時期の順番として、
こごみ → ゼンマイ → ワラビ
という風になっている。

もちろん天候や場所によっても違うだろうが、
だいたい毎年こんな順番で収穫の順番が回ってくる。

こごみの葉が開き、背丈を伸ばして食べごろが過ぎた頃、
ゼンマイが採りごろを迎えるのだ。

ゼンマイは子孫である胞子を飛ばすための葉『胞子葉』と、
自らの養分生産のための葉『栄養葉』の2つを生やす。

胞子葉のことを『男ゼンマイ』、栄養葉を『女ゼンマイ』と一般的に呼び、
食用には栄養葉を採り、胞子葉は採らない。

胞子葉は次世代を残してもらう役目があるので、山野の自然を守りながら永く利用していくために大切なことである。

また、胞子葉は栄養葉に比べて身が固い傾向があり、味も劣ることが多い。
それならば採らないほうがいろいろな意味でも無難である。

私も『男ゼンマイは採るな』とは分かっているが、そうは言ってもうっかり採ってしまうことはある。

なので、いっそ前述したような巷で言われている味や触感の違いがいかほどなものか試してみたことがあるのだ。

男ゼンマイを集めて女ゼンマイと同じように処理をして食べてみる。
味や触感の違いは……

正直分かりませんでした! 

バカ舌ですみません。


ゼンマイは綿も茎も色がいろいろ

さて、ゼンマイを収穫して家に戻ってきた。

採ってきたゼンマイを眺めてみると、やはり綿や茎に色の違いが様々あることに気が付く。


綿の色もバリエーション豊か
茎や葉には緑や赤紫のものも


昔から不思議に思っていたのだ。


同じ種なのに、こんな風に色が違うのはいったいどうしてなのだろう?


茎の色が違う理由としては、生えている場所の栄養状態が関係しているというのを年配の方から聞いたことがある。
栄養が豊富なところのゼンマイは緑色になり、そうでない場所のゼンマイは赤紫っぽい色になるというのだ。

なるほど、そうともいえるかもしれない。

私も体感的に、太くて立派なものーーつまり栄養が豊富な場所に生えていると思われるーーは、その色が緑色のものが多いような気はするし、細くてヒョロヒョロしたものは赤紫っぽい色をしている印象がある。

だが、同じ場所でも色が緑と赤紫の株が両方あったこともあるし、細くて頼りなさそうでも緑色のものもあった。
でも一方で、太くて立派なもので赤紫色のゼンマイを見たことがないような気もする。私の気のせいだろうか?

ワラビでも似たように色の違いが生まれる。ゼンマイと同じように、緑と赤紫がかったのものがある。

しかしワラビについては日当たりが関係しているという話があり、初めは緑色だが、日に当たることで(日焼け?)色が濃くなっていくらしい。

同じシダ植物だ、ゼンマイにも同じことが言えるのかもしれない。


茎や葉についてはこの辺にしておくことにして、
では綿の色の違いはいったいどうしてなのだろう?

白っぽい色から黄金色、黒がかった色までバリエーション豊か。
これはいったいなんのためなのだろうか?

茎の色と連動はしていないようには見える。

単に生存するうえで、綿の色の違いは有利にも不利にもならないから、
自然淘汰をされずになんとなく残り続けているだけなのだろうか?

また、種の違いも可能性としては考えられる。
ゼンマイと間違えて、別の種類を採っている可能性だ。

ゼンマイの仲間は日本にいくつかあり、例を挙げると

  • ゼンマイ

  • ヤマドリゼンマイ

  • ヤシャゼンマイ

  • オニゼンマイ

などがある。

しかし食用とされるのがゼンマイとヤマドリゼンマイの2つだ。

オニゼンマイは獣の毛のようなものが茎からびっしりと生えていて見た目が全然違うからゼンマイと間違えることはない。

ヤシャゼンマイはゼンマイと似ているけれど、ヤシャゼンマイは水気を好むために渓流沿いで見られる植物だ。
私が採集した場所はそのような場所ではないので、ヤシャゼンマイの可能性は低い。

ゼンマイとヤマドリゼンマイは非常に似ていて新芽状態での見分けはとても難しいと言われる。
私は見分けられたことがない。というよりこの記事を書くまでその存在を知らなかった。

生える場所に違いがあり、ゼンマイは急こう配の危険な斜面に生えることが多いが、ヤマドリゼンマイは比較的緩い斜面の日当たりのよい場所に生えることが多い。

そのため真偽のほどは定かではないが、売られているゼンマイの多くは実はヤマドリゼンマイである、という話もある。
それだけ見分けがつきづらく、そして味的にも大きな違いがないということなのだろう。

私が採る場所はかなりの急斜面だ。滑落しないように注意しながら慎重に採る。

つまりは場所的にゼンマイである可能性は高い。

となるとやはり、種の違いで綿の色に違いが生まれている可能性は低いような気がする。


というように、私は春の旬を眺め、ちょっとした疑問に頭を悩ませてみたわけである。

もしかして、研究者のどなたかがこのことについて研究をされているかもしれない。

もしあるなら確かめてみたい。本当の理由は何なのだろうか?

色の違いは何なのかでお腹は満たせないけれど、好奇心は満たせる。

誰か知っている人がいたら教えてほしいです。



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