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たべたび。07:雪国で自家栽培した桜島大根を漬物にして食べるの巻
※そのうち動画版をyoutubeにあげる予定です。
私は鹿児島が好きだ。
暖かい、ご飯がおいしい、温泉がたくさんある、見所がいっぱいある、南の島もある……いろいろな楽しみ方ができる場所だ。
奄美地方があるのはかなり大きい。
あそこは素晴らしいところだ。私も大好きである。
個人的に、鹿児島って結構ズルい土地だと思う。
ともかく、鹿児島は何度でも行きたくなるし、実際何度も足を運んでいる。
うむ、また行きたくなっている。早いところ飛行機を予約せねば。
さて、鹿児島の特産品といえば何なのか?
桜島小みかん、枕崎の鰹節、かごしま黒豚などなど、
挙げてみればいくつもある。
だが、やはりとりわけ有名なのは『桜島大根』だろう。
カブのような見た目をした重さ世界一の大根は大きいもので30キロを超え、ギネス世界記録にも認定されている。
重そうに抱えられたその姿はまさしく化け物だ。
「うんとこどっこいしょ」の掛け声でかぶを引き抜こうとする
童話の『おおきなかぶ』に出てくるかぶが現実に現れたかのようである。
桜島大根そのものは一般のお店で見ることは少なく、観光客が目にするものは加工された漬物がほとんどだ。
私ももちろんそれを味わっている。大ぶりな漬物は
食べ応えも見ごたえもばっちりだ。
そうして桜島大根の良さを知ってから少し経ったn回目(?)の鹿児島訪問時のこと。
ふらりと船で渡った桜島。そこにある道の駅のお店の中で、私はふとそれを見つけた。
桜島大根の、種である。
「あ、育ててみよう」
そういうことになったのである。
雪国で桜島大根を育てられはする
私が住んでいる地域は雪国だ。
冬になれば気温は氷点下になることもあり、雪が多く降り積もる。
また土壌は火山灰によってできたものではない。鹿児島とは全く違う環境の土地である。
しかし、あまり難しく考える必要はない。桜島大根は確かに世界でも珍しい特徴を持つ大根だが、結局のところ大根なのだ。
品種は違えど、大根を育てられる地域なら桜島大根も育てられるはずなのだ。
事実、種のパックには北海道での栽培適期も記載されていた。
寒い北海道で栽培ができるなら日本でならどこでもOKだろう。
ただ、やはり大きく育てるには温暖さが大切なようで、寒いところで育てると鹿児島でほど大きくは育てにくいそうである。
ともかく、栽培ができると分かったので晩夏の9月上旬、私は
畑に桜島大根の種をまいた。
桜島大根は晩成品種。つまり収穫まで時間がかかる。
収穫はだいたい1月ごろになるとのことなので、暑さが日ごとに緩んでいくのを名残惜しく思いながら冬の到来を身構えることしばらく。
年が明け、1月。
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育ちました。
そして。
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収穫しました。
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でかい! 重い! 白くてつやつや!
重さは5.6キロでした。
やったぜ。
漬物にしよう、そうしよう
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見よ、このサイズ感。
これでも小さいくらいというから驚きだ。
鹿児島以外の地域で育てた人の中には、10キロ以上の大物を収穫できた
強者もいる。
私のはまだまだ小ぶりな方だ。
しかし、それでも初めて作った桜島大根で5キロ越えの一品に私も大満足である。
さて、収穫したからには食さねばなるまい。
温暖な気候と火山灰によって作られた柔らかく水はけのよい土で育った
桜島大根は、甘くしまりのある身をしているという。
桜島大根の食べ方として観光客的に知っているのは当然漬物だ。
ならやはり、最初は漬物で食してみたい。
というわけで、さっそく作成していくことにする。
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葉と根を落とす。
やはり桜島大根はこの大きさが魅力。
ならここは、この大きさを生かした漬物にしてみたい。
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スパンと輪切りに。
なるべく薄くなるように切り、かつら剥きの要領で皮を剥く。
イメージは京都の聖護院大根の千枚漬けだ。
塩を振り、何枚か切り身を重ねてその上に重しを乗せる。
1日置けば、水がたっぷりと抜けてくれる。
そこにさらに砂糖と刷り込み、切り身の間に昆布を挟み込んで酢を回しかけ、さらに1日。
これで完成だ。
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もう一品バリエーションで作ってみる。
サイコロ上に切って、先ほどと同じ要領で水を抜く。
今度は昆布の代わりにユズの皮を混ぜ込み、さっぱり風に仕上げてみる。
イメージは韓国のカクテキだ。
あ、後日本当にキムチの素を使って桜島大根のカクテキを作ってみました。
もう、最高に美味しかった。
心からおススメ。
完成、桜島大根定食!
興が乗ってきたので今日のご飯は桜島大根一色で染め上げてみよう。
漬物ができたので、あとは何かおかずがほしい。
ということで、冷蔵庫にあった鶏肉を使って醤油煮を作ることに。
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さらに、剥いた皮を捨てるのはもったいないのでこれを使って
皮のきんぴらを作ることにした。
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彩りでニラを入れ、香りと触感にゴマを投入。
できた料理をお皿に盛っていくわけなのだが。
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桜島大根を盛ってくれと言わんばかりのおあつらえ向きなお皿を私は持っている!
当然この皿は鹿児島産。鹿児島の薩摩焼の窯元で購入させていただいたものだ。
1枚丸ごとはさすがに大きすぎて皿からはみ出てしまったので、
4等分にして盛り付け。これでも十分に大きい。
あとは各々良さげな皿に盛りつけて……
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完成! 桜島大根定食!
うむ、感無量。
食べる前にもう満足している自分がいる。
何か作品を完成させたときのような満足感だ。
では、おなかが空いたことだしいただきます!
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なんといっても真ん中に陣取る漬物!
せんべいみたいな大きさは一口で食べきることを許さず、白い切り身に歯形を付けざるを得なくさせている。
だがそれがいい。かじり付けるのがいい!!
密に詰まった身は噛むとみっちりとした歯ごたえで気持ちがいい。
漬かり具合もちょうどよい。昆布を挟み込んだのは正解だ。
ユズ風味の漬物もパクリ。うん、こちらは爽やかでいい。
サイコロ状に切ったのでとても食べやすい。
コリコリとする触感はその触感を楽しみたくて次々に口へ運んでしまえる。
皮のきんぴら。これが結構美味しい。
ごぼうと違って熱が通りやすいからか身は柔らかくなり、それでいて皮の硬さが歯ごたえとなってくれている。
鶏と桜島大根の醤油煮。これは安定。
桜島大根は大型になりながら決して味が大味になることなく、むしろより濃厚で甘い味わいに思う。
身もしまりがありながら熱を加えると柔らかくなり味も沁みやすい。
普通の大根よりもみっしりとしてジューシーな舌触りが美味しい。
これだけいっぱしの食事にすることができたわけだが、
全くと言っていいほど桜島大根を食べきることはできていない。
さすが世界一の大根。運ぶのも食べるのも一苦労である。
そういうわけで、桜島大根のポテンシャルを実感した私だが。
鹿児島では桜島大根を栽培する農家さんが年々減少していると耳にする。
大きすぎて一般家庭では使いづらいからなのかは分からないが、多くは加工用に回されているようだ。
贈答用ともなれば1本で数千円にもなる桜島大根は、結局は大根でしかなく、一般家庭のイメージとしては大根1本にそんな大金を支払いたくないという意識があるのかもしれないと私は思う。
完全に無くなりはしないだろうが、だんだんと桜島大根が作られなくなっていくのはもったいないと思う。
個人的には、桜島大根は数ある品種の中でもトップクラスに美味しいと思っている。
味もいいし見た目もインパクト大だから、もっと広く作られるようになったらいいなと思うのだ。