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【ゆのたび。】28: 北のたまゆら 桑園 北海道 札幌市 ~1駅先の、お手軽入浴~


北海道に来た。夏の北の大地である。

最果ての島、利尻島と礼文島に行くためだった。そのために私はまず、北海道のターミナルの都市である札幌にやって来ていた。

さて、夏の北海道は涼しいのか。そうともいえるし、違うともいえる。

本州より涼しくはあっても、夏は夏である。北海道といえど、夏は暑い。

旅の荷物を背負い、日中を歩きっぱなしだった私は体が汗で湿っていた。

時は夕方に差し掛かっていた。この頃になると大抵の施設は閉店し始める。加えて広い北海道は移動に時間を要することもしばしばである。

これ以上の移動は諦めようと決めた私は、体にまとわりつく汗を洗い流したくなった。

ならば、湯だ。湯に入らなければならぬ。

そういうわけで調べた私だが、札幌駅から近いスーパー銭湯は料金が驚くくらい高かった。すすきののやつは2500円!

とてもじゃないが入れない。もっと安いところはないかと探すと、札幌駅の両隣の駅ーー桑園駅と苗穂駅のそれぞれ近くに入浴施設があるのを見つけた。

しかも料金が共に490円! 前述のボッタ……高級な施設と比べてとても良心的だ。

なら、どっちに入ろうか。どっちにも入りたいが体は一つ。時間も限られている。

迷った末、次の電車が近い方に決めた。あとはそれにフィーリング。

というわけで、小樽方面の電車に乗る。そして一駅で下車。

私は『北のたまゆら 桑園』に向かった。


北のたまゆら 桑園

北のたまゆら 桑園

1駅でこれほど値段に差が出るとは驚きだ。さすが、すすきのは国内屈指の繁華街にして道内における1等地だ。

このどちらかだな。私は決めた。ならば、どちらにしようか。

どちらも甲乙つけがたい。ならば電車の時間が都合の良い方にしよう。

苗穂方面はたった今出発したばかりだったので、私は『北のたまゆら』に決めた。

札幌駅から一駅の桑園駅、そこから徒歩で5分ほどに『北のたまゆら 桑園』はある。

旅の荷物がすべて入ったデカいザックを背負って入店はちょっと奇妙に見えるかもしれないが、何食わぬ顔をして入店した。

中には食事どころが併設され、休憩スペースも隣に置かれている。このくらいの施設なら、場所が場所なら800円くらいいきそうなものだ。

さっきも書いた通り、料金は大人490円。この類の施設にしてはお手軽な料金だ。

泉質はナトリウム・塩化物泉

浴場にはかなり多くの客がいた。普段混んだ場所に行くことが少ない(街中の湯に行かないから?)。

私としては、温泉施設ではあまり見ないくらいの盛況ぶりである。

温泉側にとっては賑わっているのは良いことだが、利用側としてはイモ洗いで湯に入るのはしんどいが、まあ激混みではないので良しとしよう。

広い洗い場のそばにはいくつかの異なる湯が楽しめる浴槽が並び、サウナも完備。露天風呂もある。

ちょっと熱めな湯に入り、のぼせないうちに上がって外気で体を冷ます。

体に入り込んだ熱を外気の冷たさが引き抜いていけば、それにつられて疲労を抜けていってくれる。

湯から上がった私はとてもスッキリであった。

これから旅が始まるのに、すでに疲労抜きの入浴をしていては先が思いやられてしまうな、と苦笑してしまうが、湯には何度入っても良いのだから無問題である。

こじんまりとした休憩スペースで火照った体を冷まし、飲料水を口にする。

……しばらくは都市生活ともお別れだな。

人に囲まれることともしばしの別れ。それが良いのか悪いのか。

ただ、旅の直前特有の期待感と倦怠感は、良き湯に浸かっても流れ出ていくことは無く。

独特の落ち着かない心境が、私は湯上りで弛緩する体に重なる。

ああ、明日から晴れると良いな。

少し天気が良くない予報だ。叶うなら、その予報が外れてほしい。

湯に浸かって晴れやかになった気分のように、天気も晴れ渡ってほしいと願い私はもう一口水を飲んだのだった。

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