
漁港に響く
初めてキスしたのは
高校2年生のとき
男の子のおうちは漁師さんで
部屋の中には漁港の匂いがほんのりしてた
夕暮れの陽が斜めに差し込む
2階の小さな部屋
グレイの絨毯の上
向かい合ってキスをして
夢中になって
時間を忘れた
その子の熱いくちびると
くちびるの裏側が
ただ愛おしかった
溶けあって
ふたりの境がなくなるころ
トントントンと階段を登ってくる音
あ‥っと思ったときには
ふすまが開いて
びっくりするおかあさん
怒る男の子
戸惑う私
『勉強しよるから来んな、言うたろ!』
『あんたらの勉強はキスか!』
男の子とおかあさんの声が
夕暮れの漁港に響く
私はただ
赤くなってうつむいてた
それが
初めてのキス