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【小説】愛着障害児日記 1.なんでもノート

 道徳の授業で、
 「心のノート」という副教材を書いた。
 今日書いたのは、最初のページ。
 いわば、プロフィール帳のようなものだ。

 好きな食べ物 ジャンボぎょうざ
 好きな遊び だがしやめぐり
 好きな歌 輝きデイズ(hey!say!7)

 これをさ、定期的に書いていって、

 どんなふうに変わっていくのかを見届けられたら、
 面白いよね

 と思ったんだけど、

 「心のノート」って基本教室保管だから、
 なかなか簡単には見返せない。

 そこで、
 今日からこの「なんでもノート」
 っていうのを始めたってわけだ。

 友達には知られたくないけど、
 誰かに見てもらいたいようなことを書いて、
 自分を客観視していきたい。

 そういえば、学校の先生に、
 自分のプライバシーを
 インターネットに公開してはいけないと
 注意されたばかりだ。

 だけど、
 ここではできるだけ本心に近いことを書きたい。
 ここの世界だけのキャラ設定をしておこう。

 まず……、名前だよね。

 名前は……、推しのアイドルが「ゆうと」だから、
 私の名前と推しを合わせて、「ゆうみ」にしよう。
 我ながら、素敵な名前!

 今は、小学校6年生。もうすぐ12歳になるんだ。
 好きな人の名前はどうしよう、NOW A FI ELD
(あってるかな、英語自信ない……。)
 だと、ばれちゃうかな? 
 というか、めちゃくちゃ入力しにくいな。

 そしたら──、わたしの好きな人の名前はFOXね! 

 今日も、FOXと3回くらいけんかしちゃった。
 まあ、けんかと言っても
 お互いうわばきをふみあう
 「遊び」のようなものなのだけど。

 その時間が私はだいすき! 
 そして、今日も担任の先生に怒られちゃった。

 今日は3回。昨日は4回。

 私、おかしいのかもしれないけれど、
 担任の先生に怒られるのがすごく嬉しいんだ。  
 怒ってもらえると、見てくれてるんだとおもって、
 どんどん悪いことしたくなっちゃう。

 成績は下の下。
 テストには名前だけ書いて、
 提出しちゃうこともある。

 だけど、それで気にかけてもらえることが嬉しい。

 だけど、本当は、
 自分は頭がいいことをなんとなくわかってはいる。

 算数の少人数も上のクラスだし。
(なんなら、一番早く解き終わっちゃうこともある。)

 でもねー、頭が良くても、
 何も自分に還元されないんだよね。
 うちの親は私の成績にあまり興味ないし、
 別に誰からもほめられないし、
 なんなら、クラスの子から
 嫉妬みたいな感情を向けられて嫌な気持ちになる。

 だったら、勉強できないように
 振る舞っている方が、
 怒ってもらえるし、
 友達も自分より下の私見つけて楽しそうだし、
 ご褒美たくさんなんだよね。
 はー、小6って神経すり減るわ。

 だけど、
 たまにそんな自分が悲しくなることがある。

 本当は、チャレンジやってたり、
 塾行ってたりしている子が羨ましい。

 そろばんとかピアノとか、
 なんでもいいのだけれど、
 なんか「自分にはこれ」
 って誇れるようなものが欲しかった。

 友達の家にある賞状とか、努力している姿とか、
 本当に格好いいと思ってるし、羨ましい。

 こんな悪いことしなくても、
 ありのままで愛される自分になりたかった。

 寂しい。ずっと、寂しい。

 ナーバスな気分になってきちゃったね。
 そんな時は、バンプオブチキンの歌詞をきいて、
 自分を鼓舞するんだ。

その場しのぎで笑って
鏡の前で泣いて
当たり前だろう 隠してるから 気づかれないんだよ

ギルド/BUMP OF CHICKEN

 みんなも、きいてみてね。
 では今日は、この辺で。



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