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永遠に忘れることのない香り...

『透明な夜の香り』~千早茜~

香りは人の心を動かすことが出来る
人生を変えることだってできる
いつもそばにいてくれるんだ
私も見えないものをたくさん描ける人間になりたい
そんなことを思った、、、
この本の静かな世界に入り込みたいって思った1冊でした。

|言葉の抜粋|

*「成分がまったく違うんだ。スペアミントの芳香成分はカルボンと微量のリモネン。リモネンは柑橘類の皮に含まれる成分。対して、スペアミントは主成分がメントール。メントールは聞いたことがあるんじゃないかな」

*「香りは脳の海馬に直接届いて、永遠に記憶されるから」

*「パチュリの精油の匂いを嗅いで、小さい頃にカブトムシを採った記憶がよみがえった人がいたね。本人は自分を虫嫌いだと思っていたのに」
「パチュリですか」
「濡れた土や墨汁のような香りの植物だね。こんな雨の日に採れたものがいい」

*言われて、頭の中で想像できる匂いとできない匂いがあることを知る。

*「先生の言う永遠とは、命が続く限りと言う意味での永遠ですか?」
「そうだね、一香さんの認知している世界が終わるまで、だね。そういう意味では誰もが永遠を持っているんだけど、なかなか気がつかないんだ。そのひきだしとなる香りに再び出会うまでは」

*「天然香料は六百ほどしかない上に高価で、手に入りにくいものも多いんです。近年はアレルゲンの問題もあります。ただ、合成香料はいまや三千以上あり、最先端の分析機器を使えば、理論上はどんなにおいも再現可能と言われています」

*「本当に才能がある人は見えないものまで描けるんです。現実のものを描きながら、現実にはないものを見せることができる。それが人の心を動かす芸術だと思っています。先生のように」

*「それはない。慣れるということを知っている人間は慣れないんだ、嬢ちゃん」
源さんはきっぱりと言った。嗅覚には同じものを嗅ぎ続けていると感じなくなる嗅覚順応という特徴があるらしく、プロの調香師はそのことを熟知しているそうだ。

*「白檀は常緑の香木で、古来、宗教的儀式などに使われてきた。香りには癒す力があるとされていたんだ。実際、良い香りには精神をリラックスさせる作用はある」

*「いまが盛りのラベンダーの香りには中枢神経の鎮静作用があると言われていて、昔、イギリスでは女性の気つけ薬として使われていたらしい。だから、健康であることが美だとすれば、香りで心身を安定した状態に導くことで美に近づかせることはできるのかもしれない。ただ、香りは個人的なものでもあるから、記憶に由来した香りである場合、薬効とは違い、その効果は現れにくくなる。一香さんにとってラベンダーの香りは昔の思い出がよみがえるものだよね。落ち着く?」

*「体調によっても匂いの受け止め方は違うからね」

*香りは再起動のスイッチ
朔さんはそういっていたことがあった。人に果物や植物のフレッシュな香りを嗅がせると、不安感や疲労感の数値が軽減したという実験結果があったらしい。ショックやストレスを受けてフリーズ状態に陥った脳は、香りで目を覚ますことが出来るそうだ。

*「あなただって苦手ですよね。嗅覚というのは自己防衛機能のひとつです。健康な身体を持つ誰もが怪我や病気の匂いに抵抗があるはずなんです。自覚的か、無自覚かの違いはあれど。僕の鼻も例外なくそういった人が集まる場所の匂いに敏感になります。」

*まっすぐな言葉が胸を打つ。さつきちゃんは私が弱っているときも、逃げているときも、そして自分の知らないところで私が変わっていっても、ずっと笑って見守ってくれた。こういう寄り添い方があったのだと、苦しくなる。

*「執着と愛着の違い。あんた、わかった?俺さ、結局あいつにこう言ったの。相手が嫌がっても手離さないのが執着だって。愛着はちょっと穏やかすぎて俺にはうまく説明できねぇけど、執着はもう自分しか見えなくなっちまってる状態だって。お前の鼻なら相手が嫌がっているかどうかわかるだろって」

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