2023年に読んだ本(1) 『劇光仮面(1)』

ストック、ストック…
と、いうわけで、2023年最初に読み終わった書籍はこちら。

シグルイ』の作者、山口貴由がビッグコミックスペリオールで連載中の『劇光仮面』の第一巻。さわやか氏が紹介されていたので読んでみました。僕は漫画も本と書くことがある。

特撮美術がテーマではあるが、それだけを聞いてこの物語を思いつくことはできないでしょう。特撮美術サークルでスーツを〈ガチ作成〉していた人たちのおはなし。ほとんどの登場人物が微小に(あるいは壮大に)狂っている。

明確に月光仮面だろうし、自称「月光仮面」でもある。そして激昂仮面であるだろうことも想像できる。それを実装するだ。設定を凝るという設定にこだわりを感じる。

現実と虚構を区別しない虚構を現実の作品で行うこと。この作品の扱う内容(そして織り込まれた文脈と構造)の少々の複雑さが面白い。

現実世界のヒーローはじぶんとはかけ離れた聖人のように思えるが、
仮面のヒーローは地続きの存在に感じられる。本物とつくりものの世界を混同する未熟な世界観を君は笑うだろう。(略)

仮面をつけた臆病者を卑怯者と呼ぶ。
しかし仮面のもたらすものは正体の隠蔽にとどまらない。
仮面には物語がある。託された行動様式がある。
仮面をつけた者が、それを憑依させた時、
臆病者は何事かを決意し、何者かに変身する。(略)

捨て去るに惜しい自己など持ち合わせていない者こそが
仮面を受容するための空洞を用意出来るのではないか。

僕は仮面に一縷の望みを持つ。
仮面を介して現実世界の一員となることを夢見る。
願わくば運命の仮面が、善なる性質で満たされていることを。

一縷『劇光仮面 (1)』より

コミックのラストにこんな文章が書いてあって、何も考えないわけにはいけない。例えば『リーダーの仮面』を思い出すかもしれない。どうだろうか。

仮面とそれを身に纏ういわゆる本体の空洞性。常日頃仮面を被る私たちにとって、非常に重要なテーマだろう。それを軸として、人間と創作物、中身と外見、自然物と人工物、現在と過去、虚構と現実。いろんな対比が含まれている。

すごい物語を作る人がいるんだなぁ。

(暗い部屋で書き始めたおかげで、キーボードのバックライドを点灯させる方法が知れました。よかったよかった。)

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