カレー屋、やる?
当時、アルバイトしていたビストロのオーナーの一言。
それも、ほんとに何気ない会話の中で、突然。
「カレー屋、やる?」
「やる!」
このあまりにも軽すぎる会話によって、まさか私のこれからの人生がスパイスまみれになるなんて。
その時、私、24歳。
当時、オーナーは下北沢に2店舗ビストロを出店してた。
ひとつは、オーナーがいて私がいて、2人で回してる1号店。
もうひとつは、シェフを雇って営業していて、駅から歩いて10分以上かかる、決して立地が良いとは言えない2号店。
そのシェフが、退職したいという旨を話してきたそうで。
まだ数年しかやっておらず、たくさんの費用をかけてリノベーションした店舗はまだ売り上げが回収できてない。
悩んだ結果、オーナーは私にさらりと持ちかけてみたようだった。
「よし、そうと決まれば、カレーの修行だ!」
「え?、、、ガッテン承知!(展開早いな...苦笑)」
私はオーナーの知り合いの、下北沢のカレー屋さんとタイ料理屋さんに修行のために派遣された。
毎週日曜日、ランチタイムの数時間。
報酬は、賄い。
しかし、これが中々の誤算で、、、
ランチタイムの営業中に修行に行くもんだから、営業するのに忙しくて、なにも技術が習得できない。
修行先の店主たちも、こんなんでほんとに大丈夫...?汗
と、心配していた。
だって賄いさえ食べさせていれば、皿洗いも接客も後片付けもやるから。ありがたいことこの上なし。
しかしまぁ、こんな風に言っておきながら、
毎週の修行はとても楽しかった。
店主はどちらも優しくて、賄いはとっても美味しかった。
あまり技術は身に付かなかったけど、味は食べて盗んだ。
1番の収穫である。
それと同時進行で、私もカレーを試行錯誤しながら練習した。
中々おかしな話で、美味しいカレーが出来たからカレー屋を出す。のではなく、カレー屋を出すから美味しいカレーを作る。
しかもスパイス知識ゼロの私が。
こんなんでいいのかなぁと思いながらも、色々試行錯誤していたのを思い出す。
さぁ、オープン日まであと2ヶ月。
やっぱり辞める、はもう言えない。
とりあえずやろう。