フロムを読んでも「愛」はわからない

Good Will Huntingという映画の中でロビン・ウィリアムスが演じるカウンセラーが主人公のウィルに「愛」を語るシーンがある。
「君は愛について聞かれたら、有名な本を引用をして、愛について語るだろう。しかし君は長年連れ添った病院の癌に侵される妻の手を握り一緒にいたことはない」
異常なIQを持つ天才としての頭脳を持ち、生き方に対してどんな選択をも取れる一方で、周囲に対して傲慢に振る舞うウィルに対し、カウンセラーが諭すように投げかけた言葉である。しばらく前に見た映画なので、細かいところは違うけど、だいたいそんな言葉だったと記憶している。

ぼく自身、将来に悩むタイミングで見た映画で、多くの印象的な言葉があったが、中でも印象的で、今でもたまに思い出すのが上記の言葉だ。人生にはたくさんの選択肢があり自分も悩むし、よく人からキャリアや結婚について相談されることがあるが、事前にわからないことのほうが多い。長い時間を共有した大切な人が死の淵にいて、手を握っているときに湧き上がっている感情や思考、それはその時にならないと体験できない。その瞬間に立ち会わずして、「言葉が持つ本当の意味」や「自分の選択がどうだったか」なんてわからないことが人生ほとんどなんじゃないかと思う。フロムを読んでも愛はわからない。愛を知ろうと思ったら、友人、パートナー、家族など、誰かと時間をかけて愛を育むしかない。

それはそうとこのアカデミー脚本賞を取った映画は、主人公を務めるマット・デイモンが親友のベン・アフレックとハーバード大学在籍中に脚本を書き、自分たちを出演者として据えることを条件にいろんな配給会社やプロデューサーに交渉に行ったことで実現した映画らしい。この映画がきっかけで彼らはスターダムへと駆け上がることになるが、その乗り物を自分たちで作ったことは本当にすごい。マット・デイモンが大学のスピーチでキャリアについて語っていたが、それまで月並み以下のキャリアだったそうだ。自分を別の場所に連れていきたいなら、乗り物が必要で、それは脚本の場合もあればビジネスのアイデアかもしれないし、ひとつのデザインかもしれないし、記事かもしれない。いずれにせよ創ってそれに自信を持ち、人に見せるということはまた別の場所に連れて行ってくれる可能性がある。

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