NEO BANDIT BASE
2023.02.25-26
ななみが熱で記念日が延期になり、前日に近場の足柄のキャンプ場を予約した。10時ごろに実家に戻り、久々のキャンプの荷造り。記念日がなくなってもくよくよせずにポジティブな選択をとったのは我ながらナイス。
足柄のキャンプ場。名前を入れて調べても出てこずに、よくよくホームページを見てみると「近くのバス停に着いたら連絡してください」の一言。
なんじゃそりゃ。
とりあえずバス停に着き、電話してみると俳優の柳楽くん似のダンディーな「清水さん」が登場。軽トラに言われるがままについていくと激細の山道を通され、抜けた先には神奈川県を一望できる山頂の最高のキャンプ地『NEO BANDIT BASE』があった。着くなり「じゃあ、キャンプ場案内します。後ろに乗ってください。」と軽トラの荷台部分に乗せられた。まるで映画トトロの冒頭シーンのようだった。
自分のキャンプサイトに案内される。近くにちょうど最近咲き始めた満開の梅林、小さく見える街の向こうに雨上がりの水たまりのように輝く海が悠然と広がっていた。
え、最高じゃん。
僕のポジティブな選択はやっぱり間違っていなかった。1人で6人用テントを立ち上げるのに苦戦していると、清水さんが「お金いただいてもいいですか?」と僕に呼びかける。お財布を覗くと、野口英世が1匹。自信あり気な表情の英世と目が合うが、あとお前が6枚足りないのだ。
急いで先程の激細の山道を下ると、そこでズボンの左ポケットが妙に寂しい感覚に気づく。僕のたった1匹の野口英世と、お金を下ろすのに必要な銀行のカードはまだテントの中だ。その不安は瞬時に確信へと変わる。
またもう一度激細道をあがる。息を切らしながらやっとの思いでテントに着くと、なぜか財布が見当たらない。すると今度は上着の胸ポケットが妙に膨らんでいる。英世は僕のそばにいたのだ。今下りたばかりなのに、もう一度山を下るところを見られ清水さんに笑われた。
「財布忘れたなんて、最高じゃないですか」
そう言われて驚いた。普通なら「最悪ですね」と言うところだろう。それでも、笑いながら「最高」だと言えてしまう清水さんの感性とお人柄を僕はすぐに好きになった。マイナスをポジティブに変えることの大切さを改めて感じる。
お隣のサイトのお母さんとも仲良くなった。冬場には月4の休みを「キャンプ3の登山1」で使ってしまう松本若菜似のおちゃめなお母さん。アクティブに自分の人生を楽しむライフスタイルが尊敬できる。
もう一つお隣のグループキャンパーさんと話すとなんと僕と同じ小学校教員。その流れでさっきのお母さんの職業を聞くと、お母さんも保育園の先生だった。
なんじゃそりゃ。
すごい偶然もあったもんだ。夜ご飯の買い出し車で15分のスーパーに行く。豚カツを買ったつもりがメンチカツだった。卵とじカツ煮を作ろうとしていたがメンチカツ煮も悪くないだろう。
辺りが暗くなると遠くの街が光りだす。梅の木がライトアップされて不思議な存在感を放つ。気づくと雪も降り出し、とても幻想的な光景が辺りを包む。でも寒すぎて3分で部屋に入り、20時過ぎに寝た。
23時に一度目が覚める。眼鏡をかけると何故か視界がグレー色だ。寝ぼけた目をこすってもう一度見ると、それはテントの天井だった。
なんじゃこりゃ。
テントが倒れた。外に出ようにも出口が見つからない。もがいて何とかテントから這いつくばりながら出て、明かりをつけると辺り一面雪景色だった。テントの裏側に周ると謎が解けた。雪が積もり、その重みでテントと地面をつなぎ止めていたペグが3本も抜けてしまっていた。事件発生、しかも体感気温はマイナス2度。必死で出てきたから、ダウンの上着は潰れたテントの中だ。
手の感覚がないし、靴の中は雪まみれ。それでも何とか抜けてしまったペグを探し出し30分ぐらいかけて復旧できた。
寝る前に明かりをもう一度つけ、こんな出来事なかなか無いから残しておこうとすると右手に何か違和感を感じる。見ると小さなヒルがくっついていた。
こんにちは、いやこんばんは。
じゃねえわ。急いで払うとヒルが取れた代わりに皮膚も剥がれて大量出血。なんでこんなに色々起こるかと、逆におもろくなってくる。テキトーに処置をして眠る。疲れがどっと出た。
気が付くと朝6時。
吐く息が白い。梅の花に少しずつ光が当たりはじめ、その向こうの水平線が見たこともない色に染まっている。この朝焼けは忘れられないだろうな。
最高な二日間はすぐに終わってしまった。なんだか時間が一瞬で過ぎてしまって勿体無いようにも感じてしまう。いや、でもこれでいいはずだ。
素敵な思い出はきっと自分の背中を押してくれるから、未来の自分の背中を押すように、この今を素敵にするといい。