『オフィスのレイアウト変更でできること』
2019年2月22日、日本ファシリティマネジメント協会主催のファシリティマネジメントフォーラム 2019にてお伝えした内容を書き出してみたいと思います!
この1年は特に、空室率が減少するなかオフィス移転が難しくなっています。ザイマックス不動産総合研究所のレポートによれば、リーマンショック後の2012年Q2に9.27%を記録した空室率は、2018Q4時点で1.71%まで減少しており、希望の坪数と家賃のオフィスがなかなか見つからない状況となっている。働き方の見直しはオフィス移転と共に語られることが多いが、移転をしなくとも働く環境を見直すことは可能である。レイアウト変更工事の内容には『状況変化に合わせた空間の適応』から『組織のニーズに合わせた働きかけ』まで幅があり、働く環境見直しにおける選択の幅を広げていただくために、それぞれご紹介したいと思います。
基本編『状況変化に合わせた空間の適応』
一般的にレイアウト変更では①席を増やす、②床を減らす、③用途を変更することが、多くを占める。一つ目の増席対応では、あらかじめ最大席数まで配置を想定しておき、電源工事を済ませておくことで、必要なタイミングで家具を納品して増席を速やかに行う工夫がされている。次にオフィスの縮小。計画していた事業が上手く行かなかった場合には、事業立て直しのため予定していた採用計画を変更することがある。規模の大きいビルでは一つのフロアの区画単位で返却することが可能なため、執務エリアのレイアウトを見直して、席数を確保しながら、部分的に返却するためのレイアウト変更を行う。三つ目は用途変更。事業が拡大するのに伴ってメンバーが増えると、打合せの場所も不足する。その場合には、リフレッシュスペースや倉庫など活用度の低いスペース見出して、ニーズの高い用途に転換して状況を改善する。このように、オフィスは移転してから状況は刻々と変化していく。移転時以外のオフィス投資は控えることが多いが、事業計画の変更など当初の想定とギャップが大きくなってきた場合には、先を見越して対処していくことが求められます。
応用編『組織のニーズに合わせた働きかけ』
一方、目的や内容が不明確で具体的な空間適応に当てはまらないレイアウト変更も多い。この場合、検討が始る最初の投げかけは “業績回復を是非社員へ還元していきたい!”、”ESサーベイの結果を受けて、オフィス環境を見直していきたい”、“ミッション、ビジョン、コアバリューの再設定に伴い、社員を巻き込みたい”、“組織の強みを発揮できるよう人事評価制度を見直すが、オフィスの見直しは必要か?”、“策定した行動指針を、みなで共有したい!”といったものになる。どのようなレイアウト変更を行うか、具体的な変更点は依頼内容に含まれていない。目的や内容が不明確な状況からプロジェクトをスタートし、テーマ設定と予算化まですり合わせるプロセスを経て、全社員が集まれる広場スペースの確保、執務エリアのデスク配置見直し、情報共有スペースの確保など、オフィス環境の見直しが実現する。
オフィス移転とレイアウト変更の違い
レイアウト変更を活かすためには、オフィス移転と異なる点がいくつかある。オフィス移転をしなくてもできることも視野にいれながら、状況に合わせてオフィス環境の見直していただけると幸いである。
1)移転日という明確なタイミングがないなかでの意思決定が求められる。状況を読み、機会を察知することが欠かせない。
2)特に組織ニーズを起点とする場合には、検討のスタート時点では内容や予算を明確にしにくい。プロジェクトを具体化するプロセス自体が必要となる。
3)平日に執務エリアを稼働させることを念頭に工程を組むことは可能。ただし、フロア面積など変わらないため、メンバーにオフィス環境が良くなったと実感してもらうにも、丁寧なプランニングが必要になります。
参考文献
ファシリティマネジメントフォーラム 2019
ザイマックス不動産総合研究所「オフィスマーケットレポート 東京 2018Q4」