Analogfish - 抱きしめて
危険があるから引っ越そう。
と、誰かは言う。安全な場所に逃げよう、と言う。危険がある。差し迫っている。遠くへ離れなくてはいけない。
それを遮って、もう一人はこう言う。
ねぇ どこにあるの そんな場所が この世界に
安全な場所なんてどこにもないかもしれない。
その可能性を受け入れることは、一義的には絶望であり、しかし一方で新しい未来を拓くことでもある。この現実を生きるのだ、と諦めることでしか見えない現実がある。
Analogfishが歌うのはいつも具体的なのに普遍的で、景色のような、しかし景色というほど生易しいものではなく、安全な場所から鑑賞することを許さない鋭い刃物でもある。この曲はもう擦り切れるくらいに聴いたはずなのに、久しぶりに聴くとやっぱり訳もわからず泣けてしまう。それはたぶん、今もまた何かを受け入れようとして、受け入れきれないでいて、宙ぶらりんに生きてるんだろうな。今度は何を諦めれば地に足がつくんだろう。