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論文のテーマを絞れない

論文のテーマを絞れない理由

前の記事で、論文が書けない理由のひとつとして「リサーチトピックの明確化」ができないと述べました。論文のテーマを絞れないのです。何をテーマとして調査するのかが明確になっていなければ、論文は書けません。学術論文の世界は「とりあえず書けばなんとかなる世界」でありません。「エイヤ」と決めればなんとかなるという簡単なものでもありません。多くの社会人大学院生の方が、論文のテーマ探しに時間をかけ、悩み、苦しみ、時間に追われながら、これでいいのかなと不安を感じつつ執筆を開始します。

なぜ論文のテーマが絞れないのでしょうか。何がそれを難しくさせているのでしょうか。今回のnoteでは、「論文テーマを絞ることの難しさ」について、長年にわたるこの悩ましい悩みの経験者であり、日々社会人大学院生の悩みを聞くことをライフワークとしている者の視点から語ってみたいと思います。

さて、今回もひとまずChat-GPTに尋ねてみることにしましょう。回答は少し長いですが、「なるほど」なことが書いてありましたので全文紹介します。

社会人大学院生が論文のテーマを絞ることが困難となる理由は、以下のようなものが考えられます。

1. 経験や知識の広さ: 社会人としての経験や知識が多岐にわたるため、どの分野やテーマに焦点を絞るか迷うことがあります。自身の専門分野や興味関心に基づいてテーマを選びたいと思う一方で、幅広い経験から多くのテーマが浮かび上がるため、絞り込みが難しくなることがあります。

2. 実践との関連性: 社会人として働いている場合、現場で直面する問題や課題に関連したテーマを選びたいと考えることがあります。しかし、実践との関連性を持った研究テーマを見つけることは容易ではなく、具体的な問題や課題を特定し、それに対する研究の焦点を定めることが困難となることがあります。

3. 研究の限定性: 大学院の研究は一般的に限られた時間やリソースの中で行われます。そのため、あまりに広範なテーマを選ぶと、研究の範囲を適切に絞ることが難しくなります。特に社会人としての責任や時間的制約がある場合、テーマを選ぶ際には研究のスコープを考慮しなければなりません。

4. 研究の新規性: 大学院の論文は新たな知見や洞察を提供することが期待されます。そのため、既存の研究と差別化するために、独自性や新規性のあるテーマを選びたいという要求があります。しかし、多くの分野では既に多くの研究が行われており、独自なテーマを見つけることは容易ではありません。そのため、テーマの絞り込みに困難を感じることがあります。

5. 目的やキャリアの変化: 社会人としての経験や学びを通じて、自身の目的やキャリアの方向性が変化することがあります。その結果、論文のテーマを再考する必要性が生じることがあります。新たな興味関心や目標に基づいてテーマを絞り直したり、自身のキャリアに有益なテーマを選び直したりする場合、初めに考えていたテーマが不適切になり、絞り込むことが困難となることがあります。

これらの理由により、社会人大学院生はテーマの絞り込みに困難を感じることがあります。ただし、適切な指導や自己分析を行うことで、自身の経験や興味関心、将来の目標に基づいて適切なテーマを見つけることができるでしょう。

Chat-GPT3.5

いかがでしょう。今回も、いかにもChat-GPTらしい、「なるほど」な回答を得ることができました。しかし、「なるほど」と関心して終わってはいけません。社会人大学院生が論文を書けない、書くことが難しい「説得的なリスト」を手にしても、何の解決にもならないからです。

社会人大学院生が、社会人大学院生として論文を書くわけですから、1や2(経験や知識の広さ/実践との関連性)は大切にしたいところです。しかし、これだけだと研究ではなく実践レポートになってしまいます。それをわざわざ社会人大学院で書く必要はありません。職場で展開した方が早いですし、会社にも喜ばれます。

  • 3や4(研究の限定性/研究の新規性)は、実践レポートから離れて、学術論文に仕立てていくための重要な視点となります。しかし、実務しかしらない=論文の世界の新人である社会人大学院生にとっては、この視点を持つことそのものが最大の壁となります。論文の世界は、実務しかしらないほとんどの人たちにとって、得体の知れない、わけのわからない世界です。程度の差はあるとは思いますが、おそらく誰しもが軽くパニックに陥ります。

  • 学術論文って何だ。

  • アカデミアって何だ。

  • 研究って何だ。

かつての私もそうだったなぁと思い返しながらこの記事を書いています。

社会人大学院に行く位の皆さんは、人の言うことをよく聞く人たちですから、教授の話を素直に聞き3や4にきちんと寄せていこうと考えます。それそのものがとても難しいのですが、寄せすぎると、今度は「実務者の自分にとって少しも面白くない研究」になっていきます。え?そんなこと自分はやりたいんだっけ?という状態になることもしばしばです。その結果、研究を続けていくモチベーションが薄れていき、気がつけばフェードアウトという人も実は珍しくありません。


実務と学術のバランス


ここまでお話しするとおわかりいただけると思いますが、1と2、3と4は、トレードオフの関係にあります。社会人大学院として、前者を大事にしますが、後者に適切に寄せていく必要があります。しかし寄せすぎず、前者の立場をキープしながら、研究を進めていく必要がある。つまり、そういうテーマを見つけないと、社会人大学院生らしい、実践的な学術論文を書くことができない。ということになるわけです。

ちなみに、博士課程後期(ドクター課程)の方は、完全に完璧に後者寄せになります。しかし、前者を無視せず前者を大事にしながら(胸に秘めて、情熱は絶やさないようにしながらも限りなく抑制して)、完全に3や4で論文を書くという形になります。

実務と学術はトレードオフの関係にあり、両者のバランスをとることの難しさこそが論文テーマを絞ることの難しさを意味します。

  • そんなことはわかっている

  • 自分はうまくバランスが取れる(はずだ)

  • 論文の書き方は一通り読んだ(からできるはずだ)

だれしもがそう思うはずです。Chat-GPTが言うようにこの問題は、「適切な指導や自己分析を行うことで、自身の経験や興味関心、将来の目標に基づいて適切なテーマを見つけることができます」。しかし、「適切な指導や自己分析」こそが実は難しいのです。

教授は、たくさんの学生を受け持っていますから、テーマの絞りこみについて、完全に責任を負うことができません。もちろん、一人一人丁寧に話を聞いてアドバイスをしてくれる「神」のような教授もいるでしょう。しかし、そんな教授と出会えることは稀で、「自分の研究なんだから、自分で考えましょう」と言われるのがオチです。でもそれもある意味真実で、結局のところ自分の研究は自分で見つけるしか解決策はありません。

今回のnoteでは、なぜ論文のテーマが絞れないのかについて書きました。実務と学術のバランスをとりつつ、ど¥自分の研究テーマを発見するためにはいくつかコツがあります。それらは、次のnoteで紹介していきたいと思います。お楽しみに。

クラウドファンディング挑戦中

このnoteの著者である最上 雄太は、書籍『シェアド・リーダーシップ入門』を国際文献社より出版します。この本を広く知っていただきたく、2023年6月1日(木)より クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で支援者の募集を開始しました。このnote投稿時点で目標金額の116%に到達しました。
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