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シェアド・リーダーシップ開発の実際—  「顧客に聞く」(2)

インタビュー記事テキストの公開

『シェアド・リーダーシップ入門』の発行元である国際文献社より、発行記念のインタビューを行いました。以下で紹介する記事PDFは、国際文献社のWebサイトで全文公開されています。国際文献社の公開ページはこちら
国際文献社の許可を得て、記事テキストを紹介いたします。

 このインタビューは前半と後半に分かれています。前半(前回の記事)では長尾社長および塾生であり塾長を務める松井崇之常務取締役に、後半(今回の記事)では「経営塾」の立ち上げに携わり塾の世話役を務める秋山幹也氏に話をうかがいます。

秋山座長は、社長との対話を通じて「経営塾」の立ち上げに携わり、立ち上げ後は「経営塾」の運営全般に関わっています。「経営塾」の全体を詳しく知る秋山座長が、塾生の変化をどのように見ているかを聞いていきます。

教育の現実


CST社 人事課シニア/経営塾座長 秋山幹也氏

――「経営塾」立ち上げにはご苦労もあったのではないですか?

秋山氏 当社は本年、創業から満37年を超えましたけれど、ここ10年で組織構造や社内ルールがだいぶ整備され、「ふつうの会社」らしくなったなと思う一方で、なにか違和感を感じるようになっていたんです。

 当社はいったいどこに向かおうとしているのだろうな、と。売上も上がっている、社員数も増えている、社会的ポジションも向上しているはずなのに、です。ルール優先。合理性、効率性重視。上意下達。ハラスメントまがいの言動。事なかれ。会社としてはまったく成長していない、と思ったんですね。今こそ、新事業開発ができる人材を養成し、次世代にリーダーたり得る人材群を作る教育を施さなければ、そう遠くはない現社長退任後に、当社はあっという間に衰退するのではという危機感を覚えたんです。


――違和感とは危機感のことですね?

秋山氏 はい。若い人たちを育てなければならない。組織を本質から変えなければならないって。これらの教育企画を、今から3年ほど前に上席者に提案しましたが、その当時はまったくの門前払いで、議論の俎上にすら上がりませんでしたね。教育というものに否定的な反応すらありました。教育よりも売上が優先だ、とも。「普通の会社になる」ということは、こういうことでもあるのかと痛感したし、失望しましたね。

 企業に限らずでしょうけれど、魚は頭から腐る、組織は放っておけば濁り腐ると思います。自然に良く変わるなんていうことは絶対ないですね。今回、さまざまな偶然や、最上さんの博士号取得などもあり、さらに、長尾社長自身が現組織に満足できていないことを、危機意識とともに知らされるということがありました。


――危機感の重なり、偶然から、教育が検討されたということですね。

秋山氏 そうです。以前全否定された企画を最上さんと深い議論のうえ見直し、社長の後継者育成までを視野に入れ深掘りし、作り上げたのが今の私たちの「経営塾」なんです。社長に、自身の最終事業は、教育だ、人作りだと言わせたかったんです。なので、社長には現状をかなり辛辣に申し上げたし、暴言すら吐いたかもしれません(笑)。それを真っ正面から受け止める度量のある経営者で良かったと思います。


――秋山さんの情熱が「経営塾」を立ち上げる原動力となったことがよくわかります。では、その秋山さんの目から見て、塾生の皆さんに現在どんな変化が見られますか?

秋山氏 全塾生22人(取材当時)ですが、変化はそれぞれですね。塾を開始した当初は皆さん、「私は忙しい」オーラがあふれていました。「後継者育成って言われてもねぇ、まずは目先の現実でしょう」みたいな感じでした。ある意味で人は難しいな、と思いました。それはそうで、こっちの勝手な思いを理解しろって言っているわけで、見えているものが違うわけですから、そんな簡単にはいかない。

 大半の塾生は半信半疑で参加し始めたのではないでしょうか。でも、組織のリーダーというのは、言葉の使い方とか、スキルだとか、皮相的でテクニカルなものだけではすまないのだな、ということに気がつき始めている人もいるように思います。もちろん、そこまでの受け止めにいたっていないメンバーもいるかと思います。本当に人それぞれだと思います。自身や、配下メンバーとの関係性の振り返りがよくできているメンバーと、そうではないメンバーとでは、その後のリハモ(経営塾でのSNS日記の呼び名)に記述されていく内容にも違いが出たように思います。


――『入門』を使ったトレーニングも行われていると聞きました。

秋山氏 はい、最上さんの『入門』を使っての、モノローグ組織とは何か、ダイアローグとは何かについてのトレーニングは、塾の大きな転換点になったと思います。腹落ちしたというんでしょうかね。多くの塾生が、Z支社の変化について関心を示しています。

 Z支社で起きていることは、他人事とは思えないと多くの塾生が語ります。個人的には、第一部・第二部にこそこの書籍の真骨頂があると思っています。現象面だけを見ていても本質には迫れないと思うんですね。多くのリーダーシップ研究が種々の紆余曲折を経る中、新機軸となるリーダーシップ像に迫る内容は、非常に心が動かされましたね。


――『入門』が転換点になったということでしょうか?

秋山氏 それは間違いありませんね。身の回りのモノローグ現象について省みて語りあう機会は、一般の研修ではなかなか得られない経験ではないかと思います。また、すごくシンプルなワードですが、トレーニング内で講師から発せられた「やってみる」というワードのインパクトも大きかったのではないでしょうか。先入観、思い込みという泥縄にとらわれていた自身に気づく機会となったと思います。

 いずれにしろ、この塾メンバーの変化、成長無しに、当社の変化も成長も無いと思っています。その意味で、ダイナミックな変化を生み出せるメンバーを、そしてさらに現メンバーの枠を超えて拡大させていく必要があるだろうと考えています。


――最後に、秋山さんとして、今後、この塾はどうなっていってほしいですか?

秋山氏 教育研修という枠にこだわるつもりは最初からありませんでした。形態自体は研修そのものですけどね。それじゃ、何なんだと言われても、当初は曖昧なイメージしかありませんでしたが、塾の目的でもある後継者育成ということ自体、重要ではあるけれど実はとても小さいことだと思うようになりました。旧弊を廃して組織改革を遂行する闘士達、リーダーの集まりとなっていってほしいと、今は思っています。私も、私もと、多くの闘士が集まり、学び、それぞれの地へ散っていく。世界のどこにもない企業を創る人たちの集まる塾になっていけばと思います。大風呂敷ひろげちゃいましたね(笑)。


著者 最上雄太(左)、秋山氏(右)

――ありがとうございました。シェアド・リーダーシップ開発には、経営者の理解だけでなく、担当者の情熱(思い)が大切であることが良く理解できました。教育の過程では、『入門』が良い教科書になることもわかりました。この後も、『入門』に関わるインタビューを計画しています。どうぞお楽しみに。


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