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【AISTS #30】 25週目 外出自粛4週目/アンチドーピングとチームプロジェクト進捗 (2020/4/6-12)

外出自粛となり4週間が経ちました。
月曜日は法律の試験、火曜日から木曜日はアンチドーピングについての講義、金曜日はスイスの祝日で、そのままイースター休暇に突入しました。
イースター休暇と言ってもどこに行けるわけでもないので、生活はあまり変わらなそうです。

スイスでの新型コロナウイルスの感染は、数字の上では拡大のペースは少し落ち着いてきましたが、4月12日午後の時点で感染者数は2.5万人、死亡者数は1千人を超えました。
外出自粛・休校などの現行措置は1週間延長で4月26日までとなりましたが、その後もまだしばらくは続きそうです。

法律の試験

他のモジュールはレポート、プレゼン、試験などで数十%ずつ評価されるのですが、法律は全10単位分が今回の試験一発勝負でした。
当初は持ち込みなし(closed book)の予定でしたが、オンラインに移行したため、自宅で資料閲覧や検索が可能な環境での試験となりました。これでだいぶ負担は減りました。

形式は、正誤/選択式問題が5問、記述式問題が6問の計11問、時間は90分間。
法律のモジュールは、① Legal Entities in Sport, ② Contracts in Sport, ③ Liabilities in Sports, ④ Settlement of Conflicts, ⑤ Others (Doping, Tax) の5つのサブモジュールに分かれていたのですが、①〜③を踏まえての④(紛争をどう解決するか)と⑤(ドーピング)についての問題が多く出題されました。

例えば、

バスケットボール選手が試合中に、判定を不服として審判に向けてボールを投げ、審判は転倒して骨折しました。
この選手はどのような処分を受ける可能性があるでしょうか。

といった問題です。
以下のような観点から、考えられる処分を説明します。

・どのルールが適用されるか:競技連盟規則、刑法、民法
・誰が訴えることができるか:審判、クラブ
・どの機関が決定するか:競技連盟、裁判所
・考慮される条件は何か:損失、故意、過失、因果関係
・どのような処分か:出場停止、罰金、懲役

昨季は何人かが赤点で追試を受けたような話も聞いていたのですが、オンラインになったことも幸いし、無難に回答できたかと思います。

アンチドーピングの講義

法律のモジュールでも相応の時間が割かれたアンチドーピングですが、今週の3日間は Transdisciplinary(分野横断的な)モジュールの一環でゲストスピーカーを招いての講義がありました。
AISTS(更にはIOC)として、アンチドーピングの取り組みを非常に重要視していることが窺われます。

スピーカーの所属は以下の通りです。

- WADA (World Anti-Doping Agency 世界ドーピング防止機構)
- ITA (International Testing Agency 国際検査機関)
- REDs (Research and Expertise in anti-Doping sciences)
- FIBA (International Basketball Federation 国際バスケットボール連盟)
- AIU (Athletics Integrity Unit)
- UEFA (Union of European Football Associations 欧州サッカー連盟)

WADAはIOCによって設立された機関で、ルール(World Anti-Doping Code)づくりと遵守状況のモニタリングが仕事です。
(ちなみに、東京2020の延期可能性が取り沙汰されていた時に何度か発言が取り上げられた Dick Pound 氏は、WADAの初代会長です。)

実際にルールを適用して検査をするのは、各競技連盟(IF/NFs)や大会主催者です。
ITAは、オリンピックにおける検査全体を監督するとともに、上記の競技連盟や主催者の独立性と透明性を確保する役割を持ちます。
ドーピングを取り締まる側の組織と、競技/選手側の組織の双方から話を聞くことができたのはよかったです。

AIの活用による検査の効率化なども進められていますが、検査手法と同時にドーピング手法が進化する中で、いたちごっこは避けられません
また、ドーピング検査と聞いてイメージされる競技会場での検査だけでなく、競技会外検査と呼ばれる抜き打ち検査もあり、オペレーションにも多大がコストがかかっています。

ドーピング防止の重要な目的の一つは「フェアな競技」を実現することですが、特にオリンピックは、各競技の世界一のアスリートを決めるという側面が非常に強くなり、そこに巨額のお金が絡み、ドーピングを誘発する構造になってしまっているとも言えます。
また、フェアな競技のためには、マラソンシューズや義足の問題や、性別の判定など、課題はドーピング対策以外にも山積しています。
このような観点からも、今後のオリンピックのあり方を考える必要がありますね。

チームプロジェクト

「新しい世界的なマルチスポーツイベントを立ち上げる」という野心的なクライアントと進めているチームプロジェクトですが、大会のフォーマットが概ね定まり、実際に参加してもらいたいスポーツの国際競技連盟(IF)へのコンタクトを始めました(守秘義務があるので詳細は書けませんが)。
最終プレゼンの6月末に向けて、いよいよ佳境に入ってきました。

競技運営の構造はオリンピックと同様で、こちらで大会を主催しますが、種目の選択、出場選手の選考、審判の手配といった、競技運営に関わる部分は各スポーツの国際競技連盟が担います
そのため、まずは国際競技連盟に興味を持ってもらって、大会に参加してもわなければ成立しません。

・そもそも、このようなフォーマットの大会に興味があるか
・大会に期待すること(露出、普及/教育活動、収益など)
・どのような種目を実施したいか
・そのための会場や日程の条件
・コスト分担の意向

このような内容を打診しながら、スポーツを絞って詳細を詰めていきます。

ここでAISTSの強みが発揮されるわけですが、やはり国際競技連盟とのネットワークが非常に強いです。
大抵の連盟には、スタッフや卒業生を辿るとすぐにつながり、関係性も良いので、メールへの反応は良好です。
新規に設立する大会なので露出効果なども全く読めず、無視されても致し方ないメールだと思いますが、人的ネットワークの効果ですね。
まだ初期的な打診なのでこれからどうなるかは分かりませんが、実際に連盟からの反応を受け、彼らの考え方や意向を直接知ることができるのは楽しみです。

クライアントは、多少のフィーは払っていますが、それを大きく上回る価値のネットワークにアクセスすることができており、このプロジェクトを非常にうまく活用してると思います。
このようにその効果を目の当たりにし、個人的にももっと貪欲に使っていかないといけないなと感じています。

来週の予定

もともとは兄のいるイスラエルに行く予定でしたが、この状況ではもちろん行けないので、ローザンヌの自宅でゆっくり過ごします。
チームプロジェクト、個人の卒業研究、就職に向けた準備、読書&勉強にじっくり時間を使います。

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