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【AISTS #32】 27週目 外出自粛7週目/イノベーションの講義と卒業研究 (2020/4/27-5/3)

スイスでは、4月27日からロックダウンの段階的な緩和が始まりました。
第1段階は、美容院やマッサージ屋などの個人向けサービスの店舗が営業再開です。
第2段階の5月11日から義務教育の休校が解除、第3段階の6月8日には大学のキャンパスでの講義が再開となっていますが、AISTSが入っているローザンヌ大学は引き続き閉鎖の方針です。
このあたりの判断は、州や個別の学校によって異なるようです。

今週は、Transdisciplinary(分野横断的な)モジュールで Innovation & Business Design の講義があり、木曜日にグループプレゼンでした。
金曜日にチームプロジェクト、日曜日に卒業研究のレポートのドラフト提出だったので、執筆に追われる日々でした。

また、ヨーロッパのスポーツ大学で学ぶ日本人の紹介記事を、リバプールのFIMBAに通うMikiさんがまとめてくれました。同年代の方も多く、刺激を受けています。
後編も既に投稿されているので、ご興味のある方はご覧ください。

ビジネスモデル/イノベーションの講義

Strategic Innovation & Business Design と題して、フレームワークの使い方とケーススタディが中心の講義でした。

説明は割愛しますが、紹介されたフレームワークはこのあたりです。

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新しい発見だったのは Platform Business Model Canvas でした。
各ステークホルダーにどのような価値を提供していて(Value Proposition)、それぞれがプラットフォームが何を受け取って何を与えているか(Value Transaction)を整理します。
非営利の事業を整理することにも適していて、例えば国際競技連盟の分析に使えそうです。


ケーススタディで面白かったのは Quirky です。
2009年にニューヨークで設立されたスタートアップ企業で、一般消費者のアイディアを製品化するプラットフォームを提供しています。

提出されたアイディアは、アイディア提供者のコミュニティで評価され、選別されたアイディアをQuirkyが製品化します。
デザインやテストマーケティングなど、製品化の一部のプロセスにはコミュニティも関与します。
実際に製品が売れると、製品化までの貢献度に応じてコミッションを受け取ります。

2012年の数字では、1年間で470のアイディアが採用され、うち約6割の276が製品化プロセスに乗り、実際に出荷されたのは74製品でした。
ボツになったのは20個だけで、残りはプロセス進行中ということで、結構な数ですね。

例えば、ブームのきっかけとなった Pivot Power など、複雑な技術を必要としない一般消費者向けのアイディア商品が多いです。

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コミュニティとしては活発で、話題の製品も生み出していたものの、2015年には破産申請を余儀なくされます。
多品種少量生産、大手小売チェーンでの販売、低価格帯商品中心、という事業のため粗利率が非常に低く、管理コストを賄うことができなくなっていたようです。

スポンサーからの資金注入により、新生Quirkyとして今も続いています。
製品開発までやってライセンス提供することで、製造と流通のリスクを回避するモデルに変わっています。

グループプレゼンは、ドローン開発のスタートアップの立場で、スポーツでの活用を提案する、というものでした。
上記のフレームワークを使って主要な論点を抑えられているかがポイントです。

うちのグループは以下のような内容でプレゼンしました(一部抜粋)。

【Service】スポーツ会場での飲食物の配送サービス
【Value Proposition】観客の飲食物購入待ちによる時間消費を軽減する
【Revenue】飲食物販売店からのコミッション
【Potential Market】音楽フェス、日本フェスのような各種イベント

オンラインで10分のプレゼンでしたが、準備期間が短く、それぞれ個人の卒業研究の優先度が高く、成績評価に直結しないこともあり、それなりの内容をこなして終わってしまった感触です。
アイディアの目新しさはありませんが、フレームワークを実際に使ってみることが目的の一つだったので、その点では評価されました。

卒業研究

講義は6月末で終わりますが、卒業研究は8月下旬が締め切りで、そろそろギアを上げていくタイミングです。
学校側としても、直前になって全然進んでいない状況を回避するため、中間でのドラフト提出の期限が日曜日でした。

・ヨーロッパのフットサル事情を整理したい
・FIFA/UEFAとの接点をつくりたい
・フットサルはサッカー協会傘下であるべきか、より深く考えてみたい
・統計を実務で使えるようになりたい

といった点を踏まえて、UEFAに所属する55カ国地域のフットサル環境を統計的に分析してみようと思っています。

例えば、下の散布図は、フットサルの世界ランク(横軸)とサッカーのUEFAランク(縦軸)をプロットしただけですが、面白いですよね。
フットサルとサッカーの成績には正の相関があり(あるように見え)、イングランドとドイツはフットサル後進国で、カザフスタンやフィンランドはサッカーでの成績に比べてフットサルで結果を残しています。
フットサルを知っている人にはイメージ通りかと思います。

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どこまでデータを集められるか未知数の部分もありますが、統計的に意味のある結果を出せるよう、しばらく奮闘してみます。

組織構造という点では、スペインフットサルの今後が気になりますね。
サッカー協会(RFEF)から独立して運営している数少ないフットサルリーグ(LNFS)ですが、サッカー協会がその主導権を取り戻そうという動きが報じられています。

多くの国では、サッカー協会の中でフットサルリーグが運営されています。
日本のように、フットサル連盟という組織があるところも珍しいです。
サッカー協会の事業計画を見ても、"Futsal" という言葉はほとんど出てこず、あったとしても育成年代向けの活用という文脈が中心です。

こういった構造の中で、成人の競技フットサルリーグはどのような意義があり、どのような組織で運営されるのがよいか、前からつらつらと考えています。
バスケットボールの3x3、バレーボールのビーチバレー、ラグビーのセブンズ、野球のBaseball5など、他競技にもヒントはありそうです。
サッカーは世界にあまねく広がっていることが、フットサルにとってのメリットにもデメリットにもなります。

このあたりの内容は、区切りのいいところで、また改めて書いてみようと思います。

来週の予定

Business of Footballの講義が始まります。
合間に、国際スキー連盟(FIS)から一人と、世界陸連やIOCの要職を歴任した講師からのプレゼンがあります。

金曜日には、iWorkinSportという、スポーツ界の合同説明会のようなイベントがオンラインで開催されます。
当初はローザンヌで開催される予定でしたが、新型コロナの影響でバーチャルでの開催です。



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