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いろはな防災 ~イニシエ少女の災活~ シーズン2 第05話
第05話 ペット防災のイロハ その1
きょうは《あそぼうさい》の会議です。
《ぼうさいこくたい2024in熊本》に向けての発表内容を打ち合わせ!。
《ペット防災》、つまりペット避難について話し合います。
「ねえねえ、花ちゃん、どんな発表の内容にする?」
疑問を受けて、花ちゃんタブレットをシュワン、シュワン。
「ネットでペット避難の問題点を調べて見たの。
そしたらイッパイ出てくる、出てくる!
それを洗い出して、箇条書きにするのが今日のお仕事」
「どんなコトかな♪~ どんなコトかな♪~」
書記の桜はいい調子。
「ところで、これは防災に詳しい人しか知らない言葉だと思うけど、
《同行避難》と《随伴避難》って知ってる?」
「え、初めて聞いた!」
「そうそう!まだ知られてないけど、《避難所》と《避難場所》の違いと同じだね」
「簡単に言うと、
同行避難は『ペットと一緒に避難場所まで逃げること』
随伴避難は『避難生活をペットと一緒に送ること』だよ。
でも、随伴避難は必ずしも同じ部屋で過ごせるわけじゃないの」
「なるほど〜。つまり、
同行避難は災害発生時に一緒に避難して、
随伴避難は家が壊れたりして生活できないときに、
その後も一緒に避難生活を送るって事でしょ!」
桜の理解は相変わらず早いです。
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次は問題点を指摘します。
1「うん、例えば、まずペット同行避難の問題。
災害時にペットを連れて避難することができる避難所が少ないっていう現実があるんだ。
避難所によってはペットを受け入れられないところもあって、飼い主が困っちゃうケースが多いみたい」
「確かに、災害のときって人間の避難が優先されるから、ペットのことは後回しになっちゃうよね。
でも飼い主にとってペットは家族だから、避難所で一緒にいられないのは大きなストレスになるよね」
2「そうだね。それに、ペットの健康管理も重要な問題。
災害時には動物病院が閉まっていたり、必要な食事や薬が手に入らなかったりして、ペットの健康が悪化することがあるんだ。
特に病気を持っているペットや高齢のペットは大きなリスクにさらされる」
「他にはどんな問題があるの?」
次々出てくる問題点に興味しんしんの桜ちゃん。
3「ペットと他の避難者とのトラブルも考えなきゃいけないんだ。
アレルギーのある人や、動物が苦手な人もいるし、衛生面や騒音などでトラブルが起きやすい。
それに、災害時の緊張状態で、ペットがいつもと違う行動を取ることもあるから、余計に難しい状況になっちゃう。」
「たしかに、そういう配慮も必要だよね。
でも、これらの問題を解決するためにはどうしたらイイかな?」
4「それについても調べてみたんだけど、やっぱり事前準備が大切みたい。
ペット用の避難グッズを揃えておくことや、ペットと一緒に避難するシミュレーションをしておくこと、そして
『自治体や地域と連携してペットを受け入れる避難所を増やす努力が必要』
っていう声が多かったよ」
「そうだよ、まずは自分たちで動いてみて、問題点を出してから行政にお願いするのが筋だと思う」
「なるほど、それなら発表の内容として、具体的な解決策を提案する感じにまとめるのもイイかもね」
「例えば、ペット用の避難バッグに何を入れるべきか、ペットと一緒に避難する場合の注意点とかを紹介するのイイんじゃない?」
「うん、それはいいアイデアだね!
それに、実際にペット避難を体験した人の話なんか紹介出来たら、より説得力が出ると思うな」
「よし、じゃあその方向で内容をまとめていこう!
《ぼうさいこくたい2024 in 熊本》では、みんなにペット防災の大切さをしっかり伝えられるように頑張ろう!おー」
二人は声を合わせ叫びます。
「あと、気にかかるのは政府の対応だね」
「政府というと《幕府》のことですな」
ワンマン江戸時代の桜の小ボケが炸裂しますが、花ちゃんは付き合わずに進めます。
5「政府や自治体の対応不足」という点については、確かにまだまだ課題が多いんだよね。
一部の自治体では、ペット避難を前提とした対応策が進んでいるところもあるけれど、全体としてはまだ十分とは言えないんだ。
具体的には、次のような問題が指摘されているよ。
1.ペット避難用のスペースや設備が不足
災害時、避難所にペット用のスペースやケージを準備しておく
体制が整っていないことが多いんだ。
これにより、緊急時に現場で急遽対応が求められるケースが多く、
混乱が生じることがあるんだよね。
2.情報提供の不足
ペット避難に関する正確な情報が住民に十分に提供されていない
ことも問題だよね。
どの避難所がペットの受け入れができるのか、どのようにペットを
避難させるべきかといった情報が、ガイドラインとして明確に
なっていない場合が多いんだ。
3.ガイドラインの整備不足
ペットをどう避難させるべきか、ペット同行避難に関する
ガイドラインが不十分で、災害発生時に自治体や避難所が
どう対応するべきかが明確でない場合があるんだ。
そのため、現場の対応が遅れることが多いんだよね。
このような課題に対しては、事前の計画作りや、ペット避難に関するガイドラインの全国的な統一が重要だね。
自治体が主導して、ペットを受け入れるための設備や物資を準備すること、そして住民への情報発信を強化することが求められているんだ。
これらを改善するためには、政府と自治体の連携強化や、各地域でのペット避難に関する意識向上がカギになりそうだよね。
「やっぱり防災は『人間のモノ』って意識が強いし、行政なんかは法律の建付け無いと動けないもんね」
6そう、「法律や規制の不整備」という問題も、ペット避難において大きなネックになっている。
日本では、ペットの避難に関する明確な法律や規制がまだ整備されていないため、次のような問題が生じているんだ。
1.自治体や避難所の対応が統一されていない
法律や全国的な基準がないため、各自治体や避難所によって
ペット避難の対応が異なっているんだ。
例えば、ある避難所ではペットを受け入れているけど、別の避難所
では受け入れが難しい場合がある。
これにより、飼い主がどこに避難すればいいのか分からず、
混乱する原因となっているよ。
2.受け入れ基準が曖昧
ペットをどのような条件で受け入れるか、例えばケージや
ワクチン接種の有無、ペットの種類や大きさなど、受け入れ基準が
明確でないことが多いんだ。
こうした基準が整備されていないため、避難所や自治体がその場で対応を決めざるを得ないことがあり、統一感のない対応が問題を引き起こしている。
3.法律の整備不足による支援の不透明さ
ペット避難に関する支援や保障の範囲が曖昧なことも課題だよね。
法律で定められていないため、災害時にどの程度の支援が受けられる
のか、飼い主や避難所のスタッフが分からず、適切な準備や対応が
できない場合があるんだ。
こうした課題に対処するには、まずペット同行避難に関する法律や規制の整備が必要だね。
例えば、全国的な基準として、どのような条件でペットを避難所に受け入れるかを明確にすることや、ペットの避難に関するガイドラインを法的に定めることが重要だと思う。
また、法律が整備されれば、自治体や避難所が一貫した対応を取れるようになり、飼い主も事前に適切な準備をすることができるようになるよね。
こればっかりは一般人の私達には何とも出来ないから、政治家や官僚の皆さんに動いてもらうしか無いよね」
「でも、今回の発表やSNSでの意見交換が活発化すれば、政治家の先生にも届くんじゃない?」
「そう、『してほしい』って希望ばっかり言うんじゃなくて、国民が自分たちで独自に動いてから要望を出せば、動かせるんじゃないかと思ってる」
花ちゃん、野望は大きかった。
7「災害時におけるペットが捨てられるリスクも大きな問題だよね。
特に、次のような状況が原因で、ペットが行き場を失ってしまうことがあるんだ。
1.避難先でペットが受け入れられない
避難所によっては、衛生面や他の避難者への配慮からペットの受け入れ
が制限されていることが多いんだ。
これにより、飼い主がペットを避難所に連れて行けず、やむを得ず
ペットを外に置いておくか、最悪の場合はそのまま手放してしまう
ケースもある。
2.避難生活が長引くことによる負担
災害後の避難生活が長期化すると、ペットを飼い続けることが
飼い主にとって大きな負担になることがあるんだ。
餌や水の確保、ペットの健康管理、さらには避難所のルールや他の
避難者とのトラブルを考慮し、ペットを手放す決断をする飼い主も
出てきてしまう。
3.ペットが野良化したり、保護されるリスク
飼い主が避難中にペットを見捨てたり、飼育が困難になったことで
手放すと、そのペットは行き場を失い、野良化する可能性があるんだ。
災害地域では食料も不足し、ペットが飢えて過酷な環境で生き延びよう
とすることになる。
また、こうしたペットは保護されることもあるけど、保護施設が満杯に
なったり、適切なケアが受けられない場合もあるんだよね。
このリスクを減らすためには、事前にペット避難に関する計画を立てる
ことが重要だよ。
例えば、ペット同行避難ができる避難所のリストを確認しておくこと
や、親族や知人にペットの一時預かりをお願いすることも検討する
べきだね。
また、自治体や地域コミュニティがペット用の避難スペースを増やす
取り組みを進めることが、ペットを見捨てるリスクの軽減につながる
と思う。
最終的には、ペットと飼い主の両方が安心して避難できる環境づくりが
必要だね。
「ふーん、話を聞いてると、結局ペットは人間の準備不足や勝手な都合に振り回されてるってことだね」
「まあ、そうだよね。でも、今のところ人間自身の準備だって十分じゃないし、ペットのことまで手が回らないのが現実じゃない?」
「うちも、防災バッグがどこにあるかすら分かってないし、頼りっぱなしだよ~」
桜の家は、多くの家庭の現状を代弁してます。
「環境省がペットの災害対策ガイドラインを定めてくれてるんだよ。飼い主や自治体向けのパンフレットもあるから、ぜひ読んでおくべきだね。」
「人間の避難は自治体や地元の自主防災組織が考えてくれるけど、ペットについては一部の自治体が取り組んでいる程度で、ほとんど対策されて無いんだよ」
「だからこそ、ペット避難の仕組みをゼロから考えなきゃいけないんだよ。桜、私たちが考えたシステムが全国に広まったら素敵じゃない?」
「うんうん、めっちゃカッコいい!もしかして、私も偉くなっちゃう?」
桜の頭の中には、自分がヒゲをつけて偉そうにしている姿が浮かび、しばらく妄想の世界へ。
その後、現実に戻ってきた。
「ねえ、花ちゃん家の《よつば》はどうしてるの?」
「うちは外飼いだから、あんまり心配してないよ。
裏山には秘密の水飲み場があるみたいだし、よくモグラとか獲ってきて 『お姉ちゃん、あげる♡』って、獲物をくれるんだ。」
「……まさか、それってスプラッタ?」
「そう、スプスプラッタ、スプラッタだよ。
最初はびっくりしたけど、もう慣れたよ。
よつばの愛情だからね♡」
桜はその光景を想像して、ちょっと震えている。
「たぶん、よつばは私たちよりタフに生きるんじゃないかな。
人間って弱いからね〜」
「動物ってすごいな!」
桜が感嘆の声をあげます。
「人間の避難でさえ大変なのに、ペットの避難まで考える余裕はなかなか無いよね。
でも、ペットを飼っている人にとっては切実な問題だし、だからこそ
《ぼうさいこくたい2024 in 熊本》で、私たちのアイデアを発表しようよ!」
「本式採用されるくらいの案を出して、国連での正式採用を目指そうよ!」
桜がガッツポーズ。こういう時の桜は頼もしい。
「よつばも、きっと災害が起きたら不安で、私がいないと寂しくて夜も眠れないよ!」
「いやいや、桜!それ、うちのよつばの話じゃない?
一番そばにいて欲しいのは、私、《お花》に決まってるでしょ!」
桜と花ちゃん、口論勃発。
いよいよ開戦間近か!!」
「……ペットにとっては、どちらが上とかじゃなくて、一緒にいてくれる人が大好きなんだよ。」
突然、神の声が聞こえて振り向くと、そこには顧問の神の声に振り向くと、そこには顧問の《リサリサ先生》が立ってると思いきや、
クーラーがん効き教室で、お日さま当たって昼寝中。
それを見た二人はお昼の残りの味海苔を、鼻の下に貼り付けて、漆黒美女をオヤジに改造。
顔を見合わせ、クスクスします。
先生、ウヒャ、ウヒャ、夢心地。
お酒でも飲んでるのかな?実際、今夜もイッパイ飲むのでしょうね♡
仁淀川の感想です。
(つづく)