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いろはな防災 ~イニシエ少女の災活~ シーズン2 第06話

第06話 ペット防災のイロハ その2

前回からの続きです。

「この5つが大きな問題点じゃないかな。

  1. 避難所の受け入れ体制

  2. 政府・自治体の対応不足

  3. 他の避難者との共存

  4. ペット備蓄の不足

  5. 捨てペット問題

私たちは政治家じゃないから、政府や自治体の対応をすぐに変えることはできないよね。

でも、私たちにできることって、もっと身近なところで行動することだと思うんだ。

例えば、町内会や自主防災組織での働きかけとか。

うちの場合、オカンが地域の自主防災組織のリーダーだから、話が進めやすいの。

だから、実現可能なアイデアに名前をつけてパッケージ化して提案すれば、みんなが真剣に聞いてくれて、検討してくれるんじゃないかな。」

「そうだね。日本人って、何かに名前がついてると受け入れやすいところがあるからね。」

桜の意見に、花ちゃんも大きくうなずく。

「今回このことを考え始めたきっかけは、ネットで見た事例なんだ。

災害発生時に飼い主が突然ペットを避難所に連れて行って、
避難させるかどうか』で揉めている場面がたくさんあってさ。

それを見て、もっと事前に対策が必要だと思ったの。」

「だから、ペットの自主防災団体を作りたいんだ。

ペットと一緒に避難する《随伴避難》を想定して、必要なものを備蓄したり、避難訓練をしたりするの。

人間の自主防災と同じ考え方だよね。ペットの飼い主さんは責任感が強い人が多いから、準備も進めやすいはず。

でも、一番の問題はペットが苦手な避難者との共存だよね。

ペットアレルギーや苦手な人たちと、どれだけうまく隔離して生活できるかがカギになる。

そのためのスペースが確保できなければ、この問題は解決できないから、事前にしっかり考えておかないと。」

「なるほど〜、よく考えてる!」

桜が大きく親指を立てると、花ちゃんも笑顔でダブルサムアップ。

二人とも楽しそうに、次の議題に進みます。

01【ペット防災会のルール作り】

「具体的にはどうするの?」

「まずはルール作りだよ。
防災会に入会、つまり《随伴避難》の条件を作ることからだね」

「つまり???」
不思議な顔した桜さん。

「アタシが今考えている条件は、
1.去勢の有無
2.ワクチン接種の有無
3.ケージ生活の有無
4.食料などの生活消耗品の補給ルートの確立の有無
5.医療提供の有無
6.実費の有無
7.マイクロチップの有無

かな?

1.「避難所生活で赤ちゃんが生まれると、お世話が大変になって、
 どうしても人手が必要になるよね。
 そうすると、避難所内でトラブルの原因になるんだ」

2.「それに、避難所でペットが病気になっても、すぐに獣医さんに
 診てもらえないから、最悪亡くなってしまうこともあるんだよ。
 だから、事前にワクチン接種で予防が大事」

3.「避難所ではペットを放し飼いにできないから、ケージの生活に
 慣れておくことも大切だよね」

4.「ペットのごはんや日用品は行政から支援されないから、事前に多めに
 備蓄しておくか、遠くの親戚や友達に補給を頼んでおく必要があるね。
 でも、被災直後は物流が止まることが多いから、それも考慮して多めの
 備蓄をね」

5.「獣医さんにすぐにかかれない場合に備えて、薬が必要なペットには、
 少なくとも月単位で薬をストックしておくと安心だね」

6.「ペットに対する補助金や国の支援がないから、基本的にはすべて
 実費となるんだ」

7.「災害時には、ペットがパニックになって逃げ出すこともあるし、
 首輪が外れることも多いみたい。
 だから、万が一迷子になっても帰ってこれるように、マイクロチップの
 装着が推奨されているよ」

「そして、考えたくはないけど、さっき話していた『ペットを捨てる』問題だよね。

これは絶対に避けるべきだから、飼い主にはその点について確約を取る必要があると思う。

だから、ペットを手放さないための仕組みをしっかり作ることが大事なんだ」

「うーん、多分ずっと先になるんだろうけど、被災ペットの保護組織が作れたらイイんじゃない。
飼えなくなったペットや飼い主が死んでしまったペットを保護して、新しい飼い主さんとマッチングさせるの。
素敵じゃない!!」

「すごく良いアイディアじゃない!!
でも、そうなると被災地域では会の活動が出来ないから、他所の地域での活動になるから、全国規模でネットワークを作らなきゃいけないね」

「そうか、だめか、ショボーン(T_T)」

「そんな事無い無い!いいアイディアだよ!!
全国規模のネットワークなんて、直ぐには出来ないから、これからそれに向かって活動しようよ」
花ちゃんフォローで顔が一気に明るくなった桜ちゃん。

「あと活動方法について疑問があるんだ。
きっと、会員の活動はみんな一緒に仕事をする前提だと思うんだけど、
独居のお年寄りで足腰弱い人なんかはどうするの?

ペットに対する愛情があっても、体調が悪くてルールを守れない人もいるよね?」

「それは非常に考えなければならない問題だね。
解決策になるかどうかは分からないけれど、会費の増額くらいしか手段がないんじゃないかな。

この防災会では公平さや平等が大切なんだ。
会には入りたいけれど、《活動を他人に任せる》だけでは破綻してしまう。

人間の町内会でも似たようなことがある。
忙しいと言って、活動に全く参加しない人がいるからね。

ペットは大好きな飼い主さんと一緒に避難生活を頑張りたいと思っているのに、面倒だから活動をしたくない人もいるんだ」

「そんな人に飼われたペット可哀想(T_T)」
ウルウル目の桜ちゃん、涙がこぼれる寸前です。

「だから、そんな事が無い世界を作るのが、アタシの理想、エルドラドなの」

「そんな飼い主にはチョップ!チョップ!」
桜のマシンガンチョップが火を吹きます。

「あと、めんどくさいからお金払って、他人にお任せもダメ。
お金払ってるからって、活動を他人に任せるのもダメ。

お金で解決するのは、体が悪いお年寄りとか、特別な人だけね。

公平、公平、助け合い。
この精神をみんなが持ってないとね。

ペットと人間も公平なら、他の人とも公平に。
人間もペットも生きているんだから一緒だよ。

だから、最初にルールを作って、賛同する人で集まって活動する事が大前提だと考えるの。

「すごーい、花ちゃんよく考えたね♡」
桜は花ちゃん、いい子、いい子で頭ナデナデ。

撫でられて、嬉しい顔の花ちゃんは、
「ネットで調べたり、父や母の助言があったからこそだよ~。これからも、他に良い活動をしている人の話を聞いたら、随時情報を更新していくね。」

そして、花ちゃんタブレットをシュワン、シュワン。
いま話し合った事を書き込みます。
まあ、録音もしてるけどね。
令和のJKは上手にガジェット使いこなしてる。

「でも、ペットにはいろんな種類がいるから、私たちが経験したことのない種族については分からないよね。
だから、そういった子がいる場合は、話し合って条件を適宜追加する必要があると思うんだ。」

「猛獣いたら、でっかい檻が必要だもんね!」

「それは随伴避難難しいな〜」
桜の頭の中の猛獣はクマやライオン、きっとそう(汗)。

「で、思うんだけど、会費って何に使うの?」

「これは、避難所の作りや地域によって違うと思うんだけど……

うちの地区では、避難所はそれほど大きくないけれど、空き地が多いから、外にケージで避難してもらうことも考えられるね。
雨や寒さをしのげるように、テントやストーブを用意したいよね。

夏の時期には、スポットクーラーがあるといいかもしれないね。
今は夏が暑いから」

「結局、人間と一緒だね」
桜の顔は納得です。

02【名前が決定!!】

「次は防災会の名前だね。
日本人は名前がついていると受け入れやすいから、キャッチーな名称を考えたいな」

二人は腕組み、うーんのお顔。

「防災って、《自助、共助、公助》って言うじゃない。

ペットを助けるのが基本だけど、避難所にペットがいると気持ちが和んで、被災者の助けになるんじゃない?
だから、《ワン助とニャン助の防災会》ってのはどう?」

ピコーン💡ひらめき桜は100ワット。

「いいね♡♡♡
良く思いついた!
ういやつじゃ♡♡♡」

花ちゃん、桜に抱きついて、モンぎゅ、モンぎゅ、します。

「あーれー、御殿さま、ご無体な〜」
二人で時代劇ごっこ、帯があったら引き抜く勢い、
皆んな知ってるクルクルです。

寸劇が終わって一段落。

「犬と猫にしたのは、飼われている数が飛び抜けて多いから。
ライオン飼ってりゃ《ガオ助》だね」

「鳴き声だとカタカナになって可愛いし、何の団体か分かりやすい。
桜ちゃん、コレ採用!!」

「やったー」

喜び二人は、お手々つないで、クルクル回る。

そして、桜の妄想タイム。

「ウチはペット飼えないから、コレ出来たら避難所でモフり放題、極楽浄土だね〜」
ホわわーん、ヨダレ垂らして、行ったきり。

「桜、桜、帰って来て!!!!」

「ふわ!ごめんなさい、また行っちゃった(T_T)」

「まあ、モフり放題になるってコトはおウチが潰れて住めなって事なんだけどね(T_T)」

仕切り直して、会議を再開。

「次の議題は《会員カード》。
ペットの情報が無いと不安だからね。
いくら家族がお世話すると言っても、飼い主さんが体調不良だになったりして、いない場合も考えられるから、会員カードに必要な情報入れといて貰わないと不安!」

「でも、被災した時にそれを持って逃げれるのかな〜」

「当然それも考えてるよ。
数が少なければ、避難所に紙のコピーを置いとく。
さらに避難所も被災する場合を考えて、ネット上にも置いとくんだよ。

スキャンして、クラウドに上げとけばどこからでも参照出来る。

なんなら、防災会のアカウント作っとけば、引き継ぎなんかもカンタン。

数が多ければエクセルのフォームとアクセスを使って簡単なシステムを組めば大丈夫。

出来が良かったら公開してもイイかもね」

ITオタク教師の生徒もITオタクでした。

「ふえー、未来いってる!
アタシはそっち、全然だからよく分かんないよー」

「いいの、いいの、こんなのは出来る人がやったらイイから。
桜は見てると元気になるから、そっちの魅力の方が100倍スゴイよ」
フォローのコトバが嬉しすぎ。

「ありがとう、花ちゃん、決めた!!
いつか出馬して政治家なって、ペット防災法案を国会に通すよ!!」

ぶっ飛び具合も戻ってます。

「が、頑張ってね…… その時は投票するよ……」

町議とかじゃ無くて、いきなり国会議員……

まあ、おいとこ坊やを出現させて、元の話題に戻します。

「じゃあ、決まった名前を追加して、情報カードを作ってみるよ。

なにやら、タブレットに書き込んで、満足そうな顔をします。

「見てみて桜、実はもう作ってあるんだ」
そう言って、タブレットを渡します。

「もう出来てるんだ〜仕事が早いねー花ちゃんは」

「やりだしたら早くしないと気持ち悪いからね。
まあ、叩き台だから。
桜が考えてくれた名前も入れなきゃね。
うふふ」

二人で見つめ合って微笑みます。

今日の会議はイイ会議でした。

ヨダレと鼻提灯のリサリサさん、夢でお酒を飲んでるみたい。

三人三様、幸せでです。

(終わり)


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