ULTRA-TRAIL Mt. FUJI 2023 挑戦記🗻

2023年5月4日 14:43

ULTRA-TRAIL Mt. FUJIに出てみたい!

動機

日本屈指、アジアでもトップクラスの規模と言われるこのトレイルラン大会。ラン友さん達が走っている姿を見て、「自分も！」と思い立ったのが一年前の2022年4月末。そこから出走資格のITRA 10ポイントを最短で獲得するために、エントリー可能なトレランの大会を調べ、出走・完走し、その機会を手繰り寄せた。ポイント対象となった大会はこちら↓

'22/06 みなかみトレイル 40k　　　　(3point)
'22/10 UTMF Virtual 165k　　　　　 (3point)
'22/10 ジャングルぐるぐるMax 80k　(4point)

特にジャングルぐるぐるMaxは、FUJI申し込み期限直前にポイント付与が確定したので、FUJI 2023エントリーにぎりぎり間に合った。'22/12にITJ 70kも出走•完走して3pointを獲得したが、FUJIのエントリー時期に間に合わなかった。100マイルのトレランに挑戦するには1年くらいの練習ではとても走力が足りないので、「当選したらラッキー、落選でもトレイル練習とポイント加算の期間が伸びるので良し」の心持ちでエントリーしたら、なんと当選してしまった。こんなに早く夢の舞台へ挑戦できるとは予想していなかったが、当選したからには頑張らないと、と気持ちを一新。

コース概要

2023年のFUJIコースはこちら↓

公式HPより引用。富士山こどもの国をスタートし、富士山の周囲を時計回りにグルリ。

公式HPより引用。大小の数限りない山を登っては降りて、また登って、をひたすら繰り返す。

開催日時 '23/4/21(Fri)〜23(Sun)
累積距離 164.7km
累積標高 +6,451m / -6,493m
制限時間 44時間15分(the 4th wave)

走力

一年前までトレランの大会を走ったことはなかったが、フルマラソンやウルトラマラソン(ロード)はいくつか出ていた。FUJIエントリー時点の走力は次の通り。

'22/4 チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン118k　：完走(14時間40分)
'22/11 ちばアクアラインマラソン　　　　　　　　：完走(3時間53分)

フルマラソンは、2018年末にサブ3.5を達成したが、直後に膝を痛め、その後スピードを出せなくなり、今に至る。サブ4をなんとか死守しているレベル。そして、「トレイル100マイルに挑戦するなら、ロード200kmは走れなきゃいかんだろう」と考え、'23/3に小江戸大江戸200kに初挑戦してみることに。結果は、35時間半でギリギリ完走(制限時間36時間)。しかし左膝を痛めてしまい、後半50km(10時間半)は完全歩き通し。この痛みは疲労骨折だったようで、大会3週間後の整形外科受診で判明した(もう治りかけてるよと言われた)。これを含めて

3〜4月は(疲労骨折で)走れなかった
その流れでFUJIの試走行けず
2月下旬に突然発症した利き手中指のばね指が痛い(原因不明)
80kmを超えるトレランを走ったことがない
2晩も寝ないなんて耐えられるのか?

と悩みネタは際限なく出てきたけど、心配してもどうしようもない(悩んでも解決しない)、関門に引っ掛かるまでは絶対に前に進むと誓い、前日受付会場の富士急ハイランドへ。

前日受付〜当日スタート会場

前日受付

神奈川から新宿駅へ向かい、受付会場の富士急ハイランドへ乗り換えなしで行ける高速バスを利用。当日は快晴で暑く、受付・必携品チェックの長蛇の列が1時間20分ほど続いた(14時過ぎ時点。その後、16時半ごろ会場を後をするときには列は更に伸びていて、18時までの受付時刻が20時まで延長されることになった模様)。

必携品チェックでは「ボックスに全ての備品を出してください」と言われた。フラスクや衣類、補給食を別々に整理していたので出すのが大変。また、それを整理しながら戻すことはできず(後続の列が長いので)、宿で再整理する羽目に。実際の備品目視確認は数点ほどだった。

受付・必携品チェックを終え、リストバンドを装着してもらい、ようやく一安心。これで、本当にFUJIに出走できることになった。ふと思い立ってから1年。ようやくここまで来た、というのがこの時の気持ち。

スタート会場「富士山こどもの国」へ

前日は富士吉田市内のユースホステルに泊まったので、当日のスタート地点までの行動は以下の通り。

宿から富士急ハイランド(前日受付会場, 兼F5エイド, 兼Finish地点)へ徒歩で移動。
走る装備品だけ残して、手荷物とドロップバックを預ける(各々、別のテント)。手荷物預けは今年から有料の事前予約制(ドロップバッグは無料)
スタート地点「富士山こどもの国」行きバス乗車(事前予約制)。渋滞なしで約80分の乗車。
朝、コンビニで調達したおにぎりとアクエリアスで昼食。

バスがこどもの国に着いてからスタートまで3時間近くあったので、昼食を取っているランナーが多かった。トイレ建物横や木陰で横になっている(夜に備えて昼寝している)ランナーはいたが、こどもの国は日影が少なく、皆暑さに耐えながらスタートを待っていた。14時前、スタート地点近くに向かったところ、ウルトラのラン友さんがいたのでしばし歓談。自分以外はトレラン経験者・FUJI出走複数回なので、皆リラックスしてる。

そうこうしているうちに、14時ちょうど、第1 Waveスタートの30分前に開会式が始まった。レースプロデューサーの福田立花さん、大会会長の鏑木さん、コース上の市町のお偉方の挨拶。そしてあっという間に、スタート時刻となった。

第1 Wave　14:30スタート
第2 Wave　14:45スタート
第3 Wave　15:00スタート

第4 Waveの列の先頭。前方に見えるのが直前にスタートした第3 Waveの後方ランナー達。

次は自分が走る第4 Wave。いよいよ、165km / 44時間の長旅が始まる。

前半戦(Start〜F7)

いよいよスタート。前半戦のエイド地点と高低差はこちら↓

FUJI 2023 前半戦。StartからF7 山中湖きららエイドまでの約125km。

事前に用意していた完走目標の自作ペース表はこちら↓

完走目標のペース表。公式案内に掲載されている「遅いランナーの通過時刻」を参考に、エイド時間を加味して作成。目標は44時間弱(制限時間は44時間15分)。

ペース表は画像としてスマホに保存しておき、すぐに確認できるようにしておいた。F1〜F9の位置は、最初のコースマップを参照。エイド(=関門地点)毎に番号が割り振られている。

Start〜F1(富士宮)

第4 Waveは4/21(金) 15:15スタート。直前まで顔を出していた富士山は雲隠れ。天気は晴れ、且つ暑い。ゆっくりマイペースで、下り基調のルートを進む。鉄塔下を通るトレイル区間で何度も渋滞があり、特に2箇所は危機的な待ち状態。待ってる間に補給食を食べたり、ヘッドライトの準備をしたり。

鉄塔下を通るトレイル区間の至るところで渋滞発生。特に2箇所、立ち止まって待つほどの渋滞があった。第4 Waveは遅めのランナーのグループなので、特に渋滞が発生した模様。過去最大の参加人数ということも、渋滞に拍車をかけた可能性あり。

F1 富士宮エイド到着は19時前。この後、天子ヶ岳の山登りが控えてるので、エイドのバナナやパンを急いで食べ、フラスクに給水し、すぐに出発。序盤戦が始まったばかり。疲労なし。

F1〜F2(麓)

暗闇の中、本格的な山登りスタート。もちろん走らない。一歩一歩、足を進める。第4 Waveは遅いランナーのグループなので、皆ゆっくり→ここも渋滞発生。暗いし急登だし仕方ない。

天子ヶ岳の登り坂での渋滞。ヘッドライトを頼りに、滑らないよう、躓かないよう、足場に注意。

スタートして既に8〜9時間経過。そろそろ、登山道脇でうずくまるランナーさんが現る(体調が悪いというより睡魔→仮眠)。時間が進むにつれ、じょじょにその数が増えていく。自分もうずくまる誘惑に駆られながら、その横をスタスタ進む。

F2 麓エイド到着は日が変わった4/22(土)2時前。「富士宮焼きそばは富士宮エイドで出るもんだ」と思い違いをしていて、ここ麓エイドで出されていた(走ってる間、食べられなかった・もう無くなってたんだと落ち込んでた)。椅子は空いてなかったので、地べたに座り込んで補給。おもてなしメニューの大福も食べて、フラスクに給水し、すぐに出発。まだまだ元気。

F2〜F3(本栖湖)

スタートして12時間以上経過。しかも暗闇。そろそろ睡魔が、、、。歩きながらフラフラしてきたので「これはイカン」と。場所は覚えていないけど、登山道脇のちょっとしたスペースで、スマホタイマー10分をセットしてゴロン(仮眠)。一応スッキリし、また前へ。

F3 本栖湖エイドへ着く前に明るくなってきた。このエイドはみのぶ饅頭と水しか置いてないので、食べてすぐに出発。

F3〜F4(精進湖)

この区間はあまり記憶に残ってない。寝てたかも。途中のパノラマ台では富士山が見えなくて残念、、、。富士山があるはずの方向で証拠写真パシャ。

F4 精進湖エイドには8時半過ぎ到着。おもてなしエイドの田舎ぞうすいが暖かくて身に染みる。ぞうすい2杯目はエイドの塩おにぎりを入れてお腹を満腹に。フラスクに給水してすぐ出発。

F4〜F5(富士急ハイランド)

この区間は、過去に何度が出走したチャレンジ富士五湖で覚えがあるルートが一部使われている。トレラン大会なのに山を走れない、その代わりに(Flatな)ロードだけは頑張って走ろうと前に進む。既に超スローペースだけど、周囲のランナーさんはほとんど歩いてるのでごぼう抜き。明るい富士の樹海も歩き + 時々JOGで進む。

F5 富士急ハイランドエイドに、13時直前にIN。事前に決めておいた完走目標ペースにピッタリ。レース序盤の渋滞待ち時間分を、ここまででリカバリーできた様子。用意していたTシャツ・帽子・アームカバー・手袋・五本指ソックス・シューズ・ネックゲーター等を一式交換。補給食も追加。ここまでで96.4km。足攣りなし、膝もまだ大丈夫。左手ばね指はミニギプスをしているから問題なし。気持ちを新たに再スタート。

F5〜F6(忍野)

富士急ハイランドを出てしばらくはロード区間だけど、気持ちが乗らず、日差しが強くなってきたのもあってダラダラ歩き。30分以上歩いてしまった。このままじゃイカンと、トレイル区間に入ったところでゆっくり走り出した。トレイル区間では履き替えたシューズがバッチリ。前半のは約1年使用してソールが半分削れていた上に、今回の大会の山登り降り、そして砂利区間でお陀仏に。山中の木の根で滑ることが多かった。履き替えたのはほぼ新品。グリップ力が半端ない。念の為と思って替えシューズをドロップバッグに忍ばせておいたのは大正解だった。

そんなこんなで忍野エイドには17時前に到着。スタートから25時間経過。すぐに暗くなる時刻なので、電池を交換してヘッドライト装着。昼間の日差し避け対策の帽子から、寒さ対策用の耳を覆えるネックゲーターに交換。Tシャツの上にウィンドシェルも着用。仮眠スペースはあるけど、まだ行けそうだからパスして出発。

F6〜F7(山中湖きらら)

眠気がないうちにスタスタ進む(相変わらず上りは歩き、下りは気持ち早歩き)。「きららからがFUJIの本番」という噂を聞いていたので、きららまでが前半戦だと思い、前へ前へ。大平山へ登る途中、下界(忍野？富士吉田？の街中)からの選挙街宣車の声が何重も聞こえてきて(沢山聞こえてくるので候補者名は聞き取れない)、「こんなに遠く離れた山の上にまでClearに聞こえてくるなんて、なんて騒音なんだ、他の音は聞こえてこないけどなんで？、周波数帯？、指向性？、自分の選挙区だったら騒音発生候補者には絶対投票しない」とどうでもイイことを考えながら眠気を覚ます。騒音は御殿場演習場の自衛隊からも。戦車かロケット弾か分からない重低音系と、打ち上げ花火に近い連射系の音が聞こえてくる。大平山といえば、山頂付近で自衛隊員10名ほどがライトをつけずに訓練中(ライトつけてたら敵に位置を知らせちゃうからかな)。登山道ではなく、藪を通って山頂に現れた。お互いに「お疲れ様です、ご苦労様です」と言い合いながらすれ違い。

そして、とうとう山中湖きららエイドに20時到着。前半戦終了。昨晩と違い、この日は夕方から冷え始め。この調子だと山の上はもっと冷えるだろうと防寒具(薄手のフリース)を着用。最終手段のGore Texレインウェアは温存。おもてなしエイドの豚汁が暖かくて美味しい。二杯目は、またしてもおにぎり投入。

スタートしてから既に29時間経過。エイドステーションがどんどん野戦病院の程をなしてきているように思えた。ストーブの周りで暖をとる人、椅子に座り込んで固まってる人、地べたに寝転んでる人、テーピングをし直している人、リタイア宣言してる人、、、。皆ボロボロのドロドロ。自分も同じだけど、足はまだ前に進めそう。腹ごしらえ・防寒対策バッチリで、エイドを出発。ここからがFUJIの本番だ。

ようやくここまで辿り着いた。この時点で目標完走ペースに対して1時間の余裕あり。ここまできたら完走を狙いたいけど、FUJI最大の難所と言われる岩登り & 杓子山を通ってないからまだ考えちゃいかんだろ、と戒めて前へ。

後半戦(F7〜Finish)

山中湖きららエイドを出発して後半戦の40km突入。ここからがFUJIの本番!

FUJI 2023 後半戦。F7 きららエイドからFinishまでの約40km。

F7〜F8(二重曲峠)

きららエイドを出てすぐに山登り開始。周囲は真っ暗だし、新月直後なので月明かりもなし。そんな中、黙々と登る、登る、登る。延々と登り。昼間だと周りが分かるし、山中湖が見えれば高さもある程度分かるけど、それらが見えないから距離感・高低差の情報が目から得られない。分かるのはGPS Watchの高度のみ。

二重曲峠のエイドまで、何度も登り・降りを繰り返す。コース途中のスタッフ(危険箇所には必ずいる)に聞いた「あと2kmで次のエイドですよ、1km進んで、その後1km下ったらエイドです!!」を心の支えに進むけど、、、歩けど歩けど何故か着かない、おかしい。1km以上、絶対に歩いてるはずだけど着かない。このまま永遠に着かないんじゃないかと思えるほど遠い。考えるに、平面地図での距離は2kmだとしても、トレランは高低差があるため、その上下方向の移動距離は含まれていないんだろう、と。それしか考えられない。そうすると、100マイルレースは実際のところ何キロあるんだ!?、もしかして200km以上あるんじゃない!?と、ロードの大会では考える必要のないことを考え出す。もう頭が回ってない。

ここでまた眠気が、、、。暗い山中で、しかも道の両脇は断崖絶壁(暗いからそう感じただけなのか、本当に崖なのかは明るい時に通ったことがないので分からない)。こんなところで、前後にランナーがいない時に落ちたら絶対に誰にも気付かれない、これはヤバいぞと仮眠を決意。昨晩同様、登山道脇で、スマホタイマー10分をセットして横になる。幸い、仮眠した時間帯・場所は無風で寒くなかった。10分で起きてレース再開。眠気は少しマシになったけど、またいつ睡魔に襲われるか分からないので、気持ち足早に。

二重曲峠エイドには、日が変わった4/23(日)1時過ぎに到着。ここはおもてなしメニューがないので、バナナや菓子パンを食す。インスタント味噌汁を出してくれているので、マイカップでいただく。暖かいのが嬉しい。しかし、、、峠のエイドは水道設備が万全ではないので、使い終わったマイカップを洗えず、味噌汁の水滴やワカメがカップ内に残ったままで、拭くことができない(マイティッシュで拭くという手段は、朦朧とした頭では思い付かなかった)。仕方ないので、そのままのマイカップを胸の前にぶら下げることに。

きららに続き、野戦病院化が一段と進んだ二重曲峠エイド。ここは仮眠スペースがないし、テントも小さい(狭い)から椅子が少ない。椅子に座ってうずくまれる人は幸せ、そうでない人は地べたに寝転がってる。所狭し、至る所で。狭いので足を伸ばして転がることもできない。まさに修羅場(に見えた)。自分も地べたに座った状態で仮眠を試みたけど、体育座りだとどうしても腕に力を入れて足を保つので寝ることができない。幸い、この時睡魔はどこかに行っていたので、仮眠は諦めて前へ進むことに。完走目標ペースから、まだ30分以上の余裕あり。この後の最大の山場「杓子山」区間を順調に進めれば、次の吉田エイドで30分程度仮眠が取れるはず、という希望を胸に(この後あっさり打ち砕かれる)。

F8〜F9(富士吉田)

野戦病院を後にして、FUJI最大の山場「杓子山」へ。この区間は、遅い完走ランナーペースでも3時間でClear可との事前情報があったので、意気揚々と山登り開始。開始直後に声をかけてくれたランナーさんと話ながらどんどんと登っていく(もちろん歩き)。そして、杓子山名物(!?)の岩場登り到着。なんと、、、渋滞してる、、、。自分たちの前には幸い15〜20人程度が並んでいただけだけど、後ろにはどんどん列が長くなっていく。この渋滞はヤバい。区間3時間Clearが厳しくなるかも。でも追い越すわけにはいかない(できない)から、待つしかない。暗い中、ヘッドライトだけを頼りに三点支持で岩場を通過。試走をしていないので、岩場を通ったらすぐに山頂!と思いきや、そこから更に進む進む。いつになったら山頂なんだ!?という偽Peakをいくつも過ぎて、ようやく山頂到着。しかし真っ暗だから富士山なんてどっちの方向かも分からない。疲れてるけど、ヘッドライトの電池を朝方切らすのは不味いと思い、ここで交換。

山頂の鐘を鳴らすことなく、下り開始。急な下り坂を、暗闇の中、ヘッドライトだけで降りるのは正直怖いので、ゆっくりゆっくり、しかし気持ち足早に降りていく。シューズを履き替えておいて正解だった。残りまだ20km以上あるので、ここで膝を痛める訳にはいかない。ひたすら降りるけど、吉田エイドになかなか着かない。「ここから3kmでエイドです」のスタッフの暖かい言葉はもう信じられないし(ごめんなさい)、実際その通りの移動距離には現れない。朝5時前、明るくなってきてから幻覚が見え始めていて、白いドーム形状の建物がエイドだと思い込んだり(単に宿泊施設だった)、この道の向こう側にエイドがある・人が沢山いる、という思い込みをしたり(本当にそう見えた)。幻覚って、きっと見たいものが見えるだろうね、、、。そう思いながら、区間3時間でClearの願いは脆くも打ち砕かれる。吉田エイド5時前到着予定が、5時半過ぎになってしまった(4時間弱かかってしまった)。

完走予定ペースでは、吉田エイドを6時に出ればFInishには十分間に合う算段だったが、既にその20分前。ここまでの仮眠は山中での10分 x 2回のみ。このエイドでの優先順位はトイレ・仮眠・給水・給食だったけど、トイレと給食(吉田うどん)を選択。「完走」を最優先事項にするには仮眠を諦めるしかない、と。明るくなってるのでヘッドライトと防寒フリース・ウィンドシェルを急ぎバッグに詰めて、朝5時55分に吉田エイドを出発。いざ、ラスボス「霜山」へ。

F9〜Finish(富士急ハイランド)

前区間の渋滞で時間的余裕がなくなったけど、この区間、14.7kmを5時間でClearできれば完走できる。ここまできたんだから眠いなんて言ってられない。ここでも、山に入る手前のロード区間をゆっくり走る。そして登山開始とともに歩きに。しかし足はまだ残ってそうだったで、山頂までは止まらず行ってみようと決意。ゆっくりだけど、止まらずに進む進む。しかしここも、、、進むけど一向に山頂が見えてこない。そろそろ山頂!?という地点を過ぎても、何故か、どこからか、登り道が現れる。GPS Watch的には頂上に達してるんだけど。霜山恐るべし。それでも、なんとか止まらずに霜山のPeakまで登り切った！

さぁ、下り開始。ここまできて、ようやく制限時間内のFinishを確信。残り、全て歩いても絶対間に合う。脚が上がらずに躓くことが増えてたので、それだけ気をつけて、ゆっくりJOGで降りていく。ここでも、途中スタッフさんから「Finishまで下りトレイル2km、その後ロードで2kmですよ」と言われたけど、トレイル分2kmはもう信じない(ごめんなさい)。

ロードに出たあと、まだ足は残ってそうだったので、ゆっくりJOGで進む。時間的に余裕はあったけど、「もしかしたら42時間を切れるんじゃない!?」と最後の最後で新たな野望が芽生え、JOGのペースを気持ち速めに。Finish地点「富士急ハイランド」が見えてきたら、更にペースUp。そして、、、

4/23(日) 9時14分40秒 Finish !
→ 41時間59分40秒
→ I am a hundred miler, now !

42時間弱で無事Finish !(注 : 画像のタイムは第1 Waveスタートからの時刻なので45分差し引く)。ミニ•ギプスのおかげで利き手のばね指は痛まずに済んだ。

今年、いや、人生最大の挑戦は無事終了。目標44時間よりも2時間短い42時間で完走。完走ジャケット2023を受け取り、シューズに取り付けた計測Chipを外して、ようやく「100マイル完走」を実感。長い3日間(睡眠時間10分 x 2回 at 山の中)、大崩れなくFinishできたことが素直に嬉しい。公式HP掲載のFUJI 2023完走率は70.7%だった。この中に入れて本当に嬉しい。

上段が前半使用のHOKA。ソール下半分がツルツルで滑りやすかった。下段は後半使用のASICS。ほぼ新品なのでグリップ力ばっちり。

所感

この大会は、トップランナーは20時間、遅いと44時間なので、ランナーそれぞれ、同じ場所を違う時間帯に通る。今回の挑戦記は42時間での記憶(記録)だけど、別のランナーさんには異なる景色・別のドラマがあったはず。30時間前後のランナーさんの感じた景色はどんなだったのか、ちょっと興味あり。

スタッフさんには、エイドでもコース中でも様々な声をかけていただいた。コース整備、エイド設営・運営、撤収など、選手以上に過酷と思われる裏方業務を、徹夜で提供いただいた。真夜中、冷える山中で続々と来るわけではない選手を待ち続けるスタッフさんに会うたび、「ありがとうございます」と感謝の言葉しか出てこない。沿道でも、地域の方や応援RUNの方々が、見ず知らずの自分達ランナーに声援を送ってくれる。素晴らしい大会だった。

一年前、「自分も！」と出走を夢見たことから全ては始まった。苦しく辛い、でもそれを乗り越えたことを想い出すのが嬉しい、最高の三日間になった。

備忘録

トレラン初心者の自分がウルトラトレイル完走に向けて気をつけたこと、現地で気付いたことを残しておく。完走に向けてやれることは全部やる(ストレスを極力ゼロにする)、の心持ちで。

1. GPS Watchのクセ(個体差)

GPS Watchには個体差がある。距離が長くなったり短くなったり。しかし傾向はほぼ決まっていると思う。自分のSuunto 9は必ず長めの距離になる。ほぼ一割増し。長めに出ることが分かっているので、レース中は「この時計だと180kmがFinishだ」と思うようにしていた。結果は176km。いい感じ。Finishは165kmだと思っていたら、165kmを過ぎた時点で心が折れていたかもしれない。危ない危ない。

GPS Watchにはクセ(個体差)があるので、普段から把握しておくことが大切。

また、100マイルのようなウルトラトレイルでは、トップ選手を除いて30〜40時間以上かけて完走を目指す。GPS Watchの電池の消耗を避けるために心拍を計測しなかったりするが、最も効くのはGPSの精度を落とすことだろう(例：毎秒受信→毎分受信)。すると距離の表示タイミングが遅くなったり、速度・ペースの更新が普段からワンテンポもツーテンポも遅くなる。これはGPS受信精度を落としているから仕方がないことだけど、慣れていないと戸惑ってしまう。この点は、大会前に大会で使用する設定で実際に走ってみることで気持ちの準備が出来る。本番での焦りを一つ減らせるのでお薦め。

2. ドロップバッグにカップラーメン

F5 富士急ハイランドエイドに到着すると、かなり多くのランナーさんが特大カップ麺を食べていた。「どこかで販売してるん？だったら欲しいなぁ」とキョロキョロ探したけど見当たらず。そうか、このエイドはお湯がでるから、皆ドロップバッグに食べたいカップ麺を忍ばせておくのか！と理解。来年以降参戦するなら、絶対にドロップバッグに特大カップ麺を入れておこうと決心。その楽しみ(頑張ってる自分へのご褒美)があれば、前半もっと頑張れそう。

3. スティックコーヒー

お湯が出るエイドでスティックタイプのインスタントコーヒー(粉末タイプ)を出してくれていた(インスタント味噌汁も)。しかし、ミルクと砂糖は置いてなかったので、苦いだけのインスタントコーヒーだった(一回飲んでみた)。自分はコーヒー好きだけど、これには閉口。来年以降参戦するなら、甘めのスティックコーヒーを必携品として持っていこうと決心。疲れている時には甘めの暖かいコーヒーが最高(個人差あり)。

4. スポーツドリンク

エイドではスポーツドリンク(メダリスト)を出してくれていた。前半はそのまま飲んでも大丈夫だけど、後半になるとスポドリの濃さが気になる場合がある(胃腸がやられると、飲みたくなくなってくる)。自分は、スポドリと水をエイド毎に交互にフラスクへ補給し、常に薄めのスポドリになるよう配慮した。幸い、胃腸は最後まで快調だった。

5. 飲めるようかん

初めて使ったみたANDO。確かに飲みやすい(食べやすい)し美味しい。お薦め。沢山持つと重いけど、ドロップバッグに分けて入れておけば分散できる。

6. 日除け対策

三日間、昼間は曇りだけど暑めだった。昼間は庇付きの帽子とサングラスで日除け。太陽が背中側にきたら、庇の向きを後ろにして首筋をガード。夕方〜夜〜朝方は、(帽子ではなく)ネックゲーター(バフ)を頭に着用。耳を覆うとある程度の寒さはしのげるので、急に寒くなっても大丈夫な準備をしておいた。二日目夜、杓子山は風が冷たかったので重宝した。

日除け対策をしたつもりだったけど、大会後一週間くらいは顔面、目、そして唇の日焼けがキツかった(日焼け止めは塗っていなかった)。曇っていても日焼けは進行する、と改めて実感。サングラスをしていたけど目が痒いのは、紫外線Cutの力(遮光率)が低いから？もっと良いサングラスなら目の日焼け(痒み)は防げるんだろうか？

7. スマホ設定

電池の消耗を避けるため、必要なアプリ以外はモバイル通信オフ(合わせて、無用の通信を避けるためにWi-Fiオフ、Blue Toothもオフ)。走っている最中は画面の輝度を落とし、見る時だけ輝度Up。機内モード設定は緊急連絡/SNSが受信できないのでNGだと思う。また、山中での仮眠10分 x 2回の間、モバイルバッテリーに接続して充電(GPS Watchも腕から外して充電)。たった10分だけど、動いていない時間帯は有効活用。これでスマホ電池は最後まで大丈夫だった。

8. 完走ペース組み立て

自作の完走ペース表は、通常のエイド休憩は10分、ドロップバッグエイド(F5)は30分を組み込んでいた。しかし、通常のエイドでは、靴内の小石を取るのにシューズ着脱、トイレ順番待ち、エイド補給、フラスク給水(エイド出発時には1L以上持つ(必須))、と色々やることがあり、10分では足りなかった。最低15分は見ておきたい。ドロップバッグエイドでは着替えてリフレッシュしたかった。結果として30分はあっという間に過ぎてしまった。ここは45分は見ておきたいところ(カップ麺も食べたいし)。来年以降参戦するなら、15分と45分を確保して組み立てよう。

9. 必携品のライト2個

必携品として、ライト2個と、各々の予備電池を常に持つ必要がある。色々と考え方はあるが、自分はLEDLENSERの

ヘッドライト　NEO10R
ハンドライト　P6R CORE

を選択した。この二つのライトは同じ充電池を使用できる。つまり予備電池をどちらのライトにも使えるのが最大のメリット。(トップランナーは一晩だけど)、二晩確実にお世話になる遅めランナーにとって、電池切れに関する不安を少しでも解消できるメリットはかなり大きい。