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街の女
随分前のことです。ノルウェーの友人が港に街の女を見に行った、などと言ったことがありました。ふーんノルウェーにもその手の人はいるんだと思ったものでした。
国によって彼らのたたずまいはものすごく違います。メキシコで彼らを見かけた時には、何か悲しい感じがしました。
私と夫は買い物を済ませウインドーショッピング、あるいは街並みを見ようと店から一歩足を出したところだったのです。
若い子、十代だったでしょうか。薄明るい街灯の下に立っていました。
最初の一人を見かけた時には気にも留めなかったのですが、すぐに気が付きました。3、4m間隔で何人も女の子たちは立っていました。私はそのうちの一人と目が合ってしまって、本当に私が何か悪いことをしているような気がしてしまったのです。私は見てはいけないものを見てしまったように感じていました。後は、もう彼らを見ないように歩いていました。
そういう界隈だったのか、よく知りません。メキシコの彼らが一番暗く見えました。家族の生活までが彼らにかかっているような気がしました。
メキシコは数回旅したことがあり、彼らを見かけたのはテキサスから南下して国境を通過して入ったモントレーという町でした。メキシコ市やカリフォルニアからは要れるテフアナより貧しい所だったのかもしれません。
街の中、クリスマス時の雪が舞い散る街の中で娘二人を連れた女性・・・乞食さんもいました。彼ら、その娘たちもいずれは上記のような子たちになってしまったのかもしれません。
今回のお話はだんだんに明るいエピソードになります。彼らを見た順番は違いますが。
次はシンガポールでした。宿泊したホテルの道を挟んだ向かい側がそんな女性たちの家だったのです。一見、ドミトリーと言った感がありましたが、実態は外の門のところには男性が一人座ってすべてを管理しているように見えました。
時に大きな声で「また、電話してきて」などという女の子の声も聞こえてきて来ました。ホテルから外に出てレストランで食事するにも私がそんな女性の一人と思われているのでは、と人目が気になりました。
タクシーに乗ったとき、運転手さんに聞いてみたのですが、国の中の高級地に行くと、もっとハイクラスの娼婦がいると教えてくれました。私たちが宿泊したホテルの向こう側の女性たちは地方の島から出てきた出稼ぎの子たちだとも。
モンマルトルでも「いくら?」などと値段交渉をしているのを何回も見かけました。
あっけらかんとしているのはベルギー、オランダです。初めてオランダに行く前に「飾り窓の女」とかの話は聞いていたのですが、アムステルダム駅から歩いてすぐの一角(隣は教会ですよ)、そんなところにもいくつかの部屋が道に沿ってあり、ほとんど裸の女性が恥ずかしがるでもなく外を見ながら立っていました。
アムステルダムとは不思議な街だと思ってしまうのですが、それから後、アムステルダムに行くたびに、もっと開放的になっているように感じました。
ガラス張りの部屋がいくつか。その前をガイドさんが旗を持ち観光客を引率して通っていく…観光客は両方向からやってくる・・・。まるでコミカルな映画のシーンではありませんか。
世界のどこにもそんなところはないと思います。少なくとも私は知りません。そしてこれはアムステルダムにもブラッセルでも見られることなのですが、列車がその駅に近くになるにつれ、駅に間近なところにある建物の中にはっきり見えてくるのは裸の女性たち。一人二人ではありません。各部屋に一人ずつ見えるのです。
彼女たちはドラッグとかでとにかくお金が欲しくてそんな世界に入り込んで出られなくなっていると夫は言っていましたが、真偽のほどは私には分かりません。
言えるのはメキシコの彼女たちに比べ彼らは非常に明るい、この明るさは何だろうと思ってしまいました。あるごく普通に見える若い女性は自転車でやってくるとそんな一つの部屋に入っていきました。その前に、到着した途端に顔見知りか初老の男性と話をしていましたが、本当にそのあたり、どこの世界でも見られるような普通の女性の普通の世間話のシーンに見えました。
ノルウェーのオスロでも最近何かそれらしい女性を見かけるようになりました。夫はノルウェー人ではなく東欧とかからやって来てドラッグに手を染めてしまった女性だと言っていましたが・・・。
で、トルコなんかでもレストトランで食事をした後、私が先に外に出て待っていると、それはやめてくれ、と夫に言われてしまいました。彼女たちと間違われるからって。
それで、思い出しました。私がまだ40代の頃のことです。今ならそんな馬鹿らしい間違いはあり得ないと思うのですが、夫と私が二人で神戸に行った時のことです。娘が一緒に行っていたらそんなこともなかったと思います。
前方から歩いてきた女性(当時の私よりは年上だったと思います)がすれ違いざまに言いました「どこから来たの?」
私にじかに行ったのではなく独り言のように聞こえました。しかし、私のことを指して言ったのは確かでした。
私は私でその女性のことをその手の人で、私は彼女の縄張りを犯した不届きな奴、と思われたのかと思ってしまったのでした。
そうでなかったら、どう判断します?教えてください。