なぜエッジコンピューティングか? なぜFogHornか?
ここを読む前に以前投稿した ”なぜFogHornを立ち上げたか - 解決したかった問題" を読んで頂けたらマーケットの至上命題が分かり、今回の記事の理解が更に深まると思いますので、もしよろしければ読んでみてください。
今更だが2010年代を振り返ると、初頭にはクラウド/Big Dataそして後半にはIoT/AIが大きくマーケットを賑わせた。
この2つは非常に広義で且つバズりすぎてしまい、個人的には食傷気味だが、産業向けという文脈でよく聞いた・もしくは夢描かれていたものをまとめると以下のようになる。
”センサーやネットワークがコモディティー化したことにより、生産現場でデータを取得するための単価が下がり、様々なデバイスの”声”が聴こえる様になった。そしてそれら膨大なデータをクラウドへ送り、AIを用いて処理することにより何が起きているのか、また現場の改善につなげたい。”
しかしこれには重大な欠陥があった。
あの当時、IoT関連PoCが雨後の筍のように乱立したが、99%のケースでポシャっている。(そもそもマインドセットや進め方の問題(PoCを単なる実験と捉えているケース、IoTについて検討したと言いたいだけの会社などなど)が大いにあるが、今回はあえてそこには目をつぶり、技術的な側面にのみフォーカスする)
では技術的な側面として、どのような問題があったか?いくつか挙げてみる。
1. 現段階でもすでにデータ量が膨大すぎる上に、今後も指数関数的に増大していく
2. しかし産業系の施設は通信回線がファイバーであったとしても高速ではないため、すべてのデータをクラウドに送れない。(衛星通信を利用されるケースもよく見る)
3. また万が一に高速でじゃぶじゃぶの回線が敷設されていたとしても、それら莫大なデータをクラウドに入れるには時間がかかる上に、すべてクラウドにいれて解析をしたらコストが跳ね上がることになる
4. 現場のデータの殆どはその場でリアルタイムに処理をして使ってこそ初めて価値が生まれるものが大半で、クラウドに移して解析しても価値が目減りしてしまう性質のものが多い
5. ガバナンスから製造業の現場のデータをクラウドにあげること(工場の敷地外に出すこと)が出来ない
6. 機械学習などはモデルを作ることよりも、作ってからそれを”実行”し”成長”させることが重要。そのためには定期的にUpdateをかける必要がある
結果的に現場においてデータの活用が思い通りに進まず、本来のデータの旨味を十分に使い切れていないケースが散見された。
それを解決するためには、クラウドへデータを送る前に現場でリアルタイムにデータの処理・加工・解析を行い、すぐに現場に価値ある情報としてフィードバックをする。
そして1度データの旨味をすべて抽出し活用してから、必要な情報のみをクラウド、もしくはオンプレのサーバーへと送信する。
このようにすることで、現場で使用することにおいてのみ大きな価値を産むデータを最大限活用しつつ、その後のバッチ解析で利用価値のあるデータを作成・送信することができる。
この一連の作業を現場にて行うことこそ、エッジコンピューティングである。
ただ現存するオープンソースまたデータ解析のツールは大半はバッチベースのもので、リアルタイム性の高い部類のツールだとかなり大掛かりな仕組みが必要になってしまう(結果無駄にコストも高くなる)。そんなものは到底製造現場等にばらまくことは出来ない。仮にばらまけたとしても、誰が使いこなして管理するのか?現場にそんな人材はいない。
このことにより、今までOT(現場)とITの間に大きな乖離が生じていた。
そこでOTとITが互譲互助ができる環境を作ることで、今まで見えてなかった、聴こえていなかったデータの声をリアルタイムに解析・把握し現場にどんどん活かしていくことに着目する。
そのため我々は、現場にてリアルタイムにデータの処理・加工・解析を行うことに特化したソフトウェアのエンジンを開発し、その小型化を実現させた。これにより現場に導入されやすくなった。
そしてそれらはリアルタイムデータの特性を捉えた仕組みのため、従来では取り扱いの難しかったリアルタイムデータも容易に扱えるようになった。(HDD上に貯めて処理するのではなく、すべてメモリ上で高速に処理を行う)
またデータ処理のエンジン部分(CEP)だけではなく、クラウドのDeep Learning やAIとの親和性を高く設計し、いずれ到来するエッジのAI化ということを見据えて実装した。
その第一弾として、FogHornとクラウドのAI/機械学習を連携させ、クラウドで機械学習させモデルを作り、そのモデルをFogHornの中で実装・実行させる。そして定期的にクラウドでモデルをアップデートさせ、それをまたエッジに展開する、という”Closed Loop Machine Learning” を実現。
これにより、エッジにクラウドのようなどでかい仕組みを持ってくることなく、クラウドの知能を現場に実装することが可能になる。
それに加え様々なセンサーやデバイスからデータを取り込めるようなインターフェイスを実装したり、データ可視化用のツール、またロジックを構築するためのUI、様々な外部DBとの連携等、エッジで必要になる要件をまとめプラットフォーム化した。(さらにSDKも提供しており、必要に応じた開発の柔軟性も持たせている。)
そしてすべての設定を、GUIベースのマネージメントツールから行えるため、現場にある直感的に「こうしたい」、というニーズにすぐに答えられるようになった。
どんなに生産ラインの自動化が進もうとも、様々な現場において”人”が担っている役割はやはり重要で、改善のノウハウや緊急時の対応も人に依存する。ただそういったノウハウが、後継者・人材不足のため現在消えかけようとしている。
我々の仕組みはそんな消えかかっているノウハウをデジタル化して、保存することにも貢献できると信じている。
更に欲を言えば、日本が単にものづくりで終わるのではなく、それらデジタル化したノウハウを、ソリューションやサービスの一貫として付加価値を付けて売れるようになってほしい。
単にやらされている感満載の消極的なデジタル化ではなく、攻めの1手として海外で差別化を図るためのデジタル化であってほしい。もし我々がそのために必要な仕組みであれたら、起業冥利に尽きる。
日本の苦手(ソフトウェア)な分野で真っ向勝負するのではなく、そこはすでに買えるものを活用し、得意(ノウハウ)な分野でのみ勝負すべき。
To Be Successful, Do Only What You Do Best