第三者承継(社外承継)について~メリット・デメリット~
第三者承継(社外承継)とは、いわゆるM&Aのことを指す。私がM&Aについて語るとなると立場上メリットばかりを挙げると思わるかもしれないが、まず前提として、第三者承継は3つある承継パターンの一つであり、他のパターンに比べて秀でていると言うつもりはない。それぞれの会社にとって、最適な後継者がいる。他の承継パターンもしっかりと検討した上で、最適な後継者が第三者だった場合にお手伝いをしていきたいというのが、私の会社のスタンスだ。「どの会社にとっても第三者承継が一番おすすめである」と言うつもりはないことを、先にお伝えしておく。
第三者承継は、「最終手段」というイメージを持たれがちだ。インターネットで検索してもらうと、廃業することと比較して第三者承継のメリットばかりが検索結果として並ぶだろう。従業員の雇用が守れること、創業者利益を確保できることなどもあるので、廃業するのであれば第三者承継した方がいい。そんな気持ちで第三者承継を考える人が多いのかもしれない。
廃業と比較しなくてもメリットといえる面も大いにあると思う。
どの企業に譲り渡すのか、その時の条件がどういったものになるのかなど、ケースバイケースの話にはなってしまうが、第三者承継によって飛躍的に可能性が広がることがある。例えば、海外で事業展開している会社へ第三者承継をしたことによって、販路が拡大したという会社があった。また別の会社では、ホールディングスの傘下に入ったことによって、他の会社と協業でき事業拡大につながったという例もある。こういった展開は親族間承継や従業員承継にはあまり期待できないもので、第三者承継ならではの特徴といえる。
第三者承継するということは既に別の会社を経営しているプロの経営者に会社をゆだねることも多いので、会社成長のチャンスと捉えることもできる。しがらみもなく広く後継者を探すことができるという点は、第三者承継のメリットといえるだろう。
ただ一方で、第三者が入ってきて会社経営をするとなると、相性の問題も出てくる。従業員の雇用が確保されていたとしても、残った従業員と新しい経営者の相性が悪く、結局辞めてしまう人が続出するという場合もある。そういった承継後に対する不安材料が処々あるということが、第三者承継のデメリットだ。
適切な相手と出会えるかどうかというのは非常に大きなポイントであり、第三者承継の最大の課題だと思う。またその後の交渉も専門知識が必要になるなど、ほとんどの場合、仲介者を経由する必要がある。しかし仲介業社も乱立している昨今、それぞれ特徴を持っているがゆえに、選出に注意が必要だ。
当然のことではあるが第三者に会社を引き継ぐので、経営者自身は経営権を手放し、決定権を持たなくなるという覚悟をもって、その後を見守る必要はある。手放した後に従業員が解雇されたり、事業が縮小してしまうなどということも絶対にないとは言い切れない。当初話していた内容と異なったとしても、その時々の経営状況によってはそのような決断になることもあるのだ。
これはどの承継パターンにも言えることだが、経営権を譲ったら以後口出しすることはできなくなる。第三者承継の場合、経営を退いたことを、他の承継パターンよりも多少強く感じることがあるかもしれないというだけだ。
どの承継パターンにもそれぞれリスクやデメリットは伴うものの、先ほど述べた通り、どれが最適かは一概には言えない。ただ一つ確かなのは、廃業するよりも何らかの形で会社を未来に繋げることが重要だということだ。廃業は雇用の喪失や取引先への影響、さらには日本経済全体にも打撃を与える可能性がある。だからこそ、各企業にとって最良の形で承継が進めば、会社だけでなく、社会全体にとっても大きなメリットをもたらすと私は信じている。