見出し画像

たった2カ月半でM&Aを成約させた話

相談を受けてからM&Aが成約するまで、最短でどれくらい必要かと問われることがある。ケースバイケースなので明確な答えはないのだが、過去には約2か月半で売却に至った案件があった。

2019年のことだ。
ECでネイルチップを売るという、Web通販事業を売却したいということで、ご相談を受けた。私がECに経験値や見識があるということで、ご紹介いただいた案件だった。

早く売却できる企業や事業というのにはいくつか要件があり、この会社はそれを満たしていたが、一番の決め手は、管理が行き届いていたということだったと思う。ECという業種はその他IT関係の事業と同様、売上や利益等数字の管理がしやすい業種と言えるが、この会社は、それにしても徹底的に管理されているという印象があった。経営者はマーケティングにも長けており、数字に強い方だった。また倉庫も自社の中に持っており在庫も把握しやすい環境ができていた。つまり、数字だけでなく実態の管理もできていた。
ECにおこりがちな数字と実態とのタイムラグ、というのもなく、見通しの良い状態であった。

最初から売るつもりではじめた会社や事業ではない場合、時間が経つにつれて管理が甘くなるのが一般的だ。長年やっていくと、気の緩みがでたり、当初、思い描いていた売上や利益など数値的な目標には少しずれがでる事もある。

しかしこ会社はスタートしてから5年程経っていたが、管理状況が整っており、売りやすい状態が保たれていた。物流、販促、販売という3つについて管理が行き届いている…こういう会社や事業というのは、買い手企業から見て安心感があり、買いやすい。だからこそ、2か月半という速さで売却が決まったのだと思う。

もちろん、管理が行き届いていただけではなく、顧客もついていたし利益も出ていたこともすぐに売却が決まった要因の一つではある。

譲渡を考えた理由としては、自社で運営しているよりもECに強い会社や力のある会社に運営してもらった方が、より売上を拡大し利益を生み出せるなど今後の事業成長の可能性につながると感じていたからだ。発展途上中の事業でもあり、まだまだ伸びしろもある状態だった。

当然、買い手企業との出会いというのもとても大事だ。買い手となった企業は、北陸で着物系の製造販売などを手掛けている会社で、事業の多角化を図っていた。当時IT化にも力をいれており、BtoCの事業も増やしたいというところ。顧客の層が近かったこともあり、事業シナジーを感じやすかったと思う。
クロスセルが期待できた。

相互に非常に納得感のある状態でM&Aが決まり、大変喜ばれた成約案件となった。

売り手はその後やりたいことも決まっており、事業が売却できたらそれを軍資金に次のことに取り掛かりたいということもあった為、早く売却できたのをとても喜んでいた。こうしたアントレプレナーに協力できたことは、私にとっても大変なやりがいを感じられた。

売却後の事業がどうなっているのか、以前に関わった案件については常に気にかけているのだが、この案件については現在もプレスリリースが時折出され、ECサイトも活発に運営されている様子が見て取れる。ECの案件は業界ルールの変動があったり、M&Aの前後で売り上げに大きな影響がでてしまうこともあるが、本案件は大変よい形のM&Aになったと振り返っている。

このように早く売却できてしまうケースも、長い時間をかけて売れる事業、売れる会社へと成長させて売却するケースも、譲渡側譲受側、双方の話をよく聞き、ニーズにこたえられる組織として仲介させてもらいたい。今後も譲渡後にますます成長していくような良いM&A案件を創出できるような取り組みをしていきたい。

いいなと思ったら応援しよう!