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「ちょっとコーヒーいかない?」VOL.2 〜ナイスタックルを決めるラガーマン、小原錫満〜

「ちょっとコーヒーいかない?」と今回誘ったのは、ラガーマンでもある小原錫満(こはらしみん)。彼は高校や大学時代にラグビーで名を馳せてきた男だが、その経験は彼の仕事にもラガーマンらしい一面として表れていて、いつも大変興味深い。

土橋:この前、秋永と話したんだけど、北海道まで行ってドタキャンされたって話でちょっと盛り上がったんだ(笑) 錫満にもそういう、「今となっては笑えるけどあの時は…」って話、たくさんありそうだよね。

小原:そうですね。今年で3年目、重要なディールにたくさん関わらせていただいたこともあって、いろんな局面を経験させてもらっています。売却側クライアントのオフィスで役員と部長クラス7人に囲まれて、「お前、本当は誰なんだ!真実を言え!なんでこんな大変なこと今やらせるんだ!」と詰められる…みたいな、結構ドラマチックな出来事もありましたよ!

土橋:あぁ、あの小原が最初はIPOコンサルタントっていう立て付けで入らせてもらってたっていう案件だよね?

小原:そうですそうです。あの案件は、社長さんがM&Aを考えているということを周りにはまだ伏せていらして。当時上場を目指していらっしゃったんですが、現状の資本構成で上場を目指すのか、それとも一部M&A(売却)してファンドと一緒に上場を目指すのかを探りつつという状態だったんですよね。
それで僕は主幹事証券にもバレないように、IPOコンサルタントという体になっていて、水面下でM&Aのプロセスもすすめていたんですが、ちょうどDD(デューデリジェンス)をするタイミングで税務調査が入ってしまったんです。IPO N-1期に突入した中、、株式を動かすならこの時までにというギリギリの期限もあって、忙しなく準備をしていた時期、通常業務に加えてDD対応で忙しいのに、さらに税務調査対応が入り、社内は爆発的に忙しくなりました。

土橋:大きな会社になると、DDだって社長一人で対応できるわけではないから、周りにも頑張ってもらわなきゃならないもんね。そんな忙しい中でDDの準備…M&Aの可能性を知らされない方々に協力してもらうのは大変だったね。

小原:大変過ぎて、僕に対して「怪しい」という気持ちが膨らみ始めたんでしょうね(笑)このタイミングでのIPOに関するコンサルティングは必要なのかと大バッシングを食らいました。最終的に会議室で役員・部長クラス7人に囲まれて、「お前は誰なんだ!?」と詰め寄られることになったんです。ドラマのワンシーンかと思いました。心拍数爆上がりです。

土橋:人から素性を疑われるなんて、人生でなかなかない貴重な経験だよね!(笑)

 小原:そうですよね!まぁ、税務調査対応でものすごく忙しい中で、「事業計画の裏付けとなるバックデータや営業受注残やKPI資料などを出して」とか、すごく細かい数字をきいてきたりするIPOコンサルタントに対し、なぜ今そんなことを?という想いが強くなったのだと思います。まるで刑事ドラマのワンシーンを再現しているのかなと思うような詰められ具合でしたね~。あれは今思い出してもすごかったです。会議室に怒号が鳴り響きましからね。最近話題の「地面師」を見た時にクライアントからすると僕が「地面師」のような詐欺師にも見えそうですもんね(笑)

土橋:どうやって切り抜けたの?

小原:「この資料を出していただく意味は」と1つ1つの行動に意味や意義を見出してもらえるように、誠実に対応しました。会社のために従業員さんにとっても良くなるためにという僕の想い自体には嘘偽りがなかったので、丁寧に誠実に向き合うことで、ご理解いただいたという感じです。

土橋:IPOを目指している中でM&Aも考えているという話は誤解も招きやすいし、伏せておきたい社長の気持ちというのも尊重しなくちゃいけない。錫満の立場からすると、社長との信頼関係も守らないといけないから、辛かったね。

小原:そうですね。役員の中には感づいている様子の方や個人的に追及してくる方もいましたが、最後までM&Aについては伏せ、社長との信頼関係を守り抜きました。でも、社長がミッション・ビジョン・バリューを語って社員を鼓舞されていたり、気持ちを奮い立たせる社員の皆さんの様子を見せていただいたり、この案件では会社全体が一枚岩なんだというのを強く感じることが多くて……本当によい会社とお付き合いさせていただいたなと思っています。

土橋:いい経験になったね。大事な局面でまっすぐ誠実に突っ込んでいくところ、錫満らしいよね。なんかもう一件すごく錫満らしいなと思った対応があったんだよね。売り側の会社の前で、社長を出待ちしてたっていう話。

小原:ありましたね。出待ちの最中に土橋さんから電話がはいったんですよね。

土橋:そうそう。真夏の炎天下じゃなかった?

小原:はい。M&Aのクロージングの最終局面で、売り側の譲れない部分と買い側の譲れない部分がぶつかり合って、なかなか折り合いがつかなかったんですよ。譲れない部分っていうのはそれぞれあって当然だし、すごく大事なことなので尊重したいんですが、この案件は客観的にみると、売り側の方のこだわっていた箇所が、譲っても決して損にはならない内容であったので、なんとか譲歩することはできないかと説得にあたっていました。
売り側の社長さんは、買い側の方々が(ご経歴的に)賢そうで、もしかしたら言い包められるのではないかというご不安もあったようで、警戒心も少しお感じになられている状態でした。そんな中では、いくら説明しても理解していただくことが難しくて……何とか僕を信頼してほしい、自分の誠実さや会社のためを想っている気持ちを行動で示して伝えたいと思い、思い付きで、新橋のオフィス(弊社)からいきなり思い立って、炎天下の中アポなしで、売り側の会社に向かい、いつ出てくるか分からないので、出口の前に立って出てこられるのを待ちました。

土橋:何時間ぐらい待ったの?

小原:4時間はまちましたね。8月の半ばですが、スーツにネクタイもしめて、汗だくで待ち続けました。やっと社長にお会いできて、「アポなしで来てしまいましたが、この件、決して不利になる内容ではないです。そして、契約書のやり取りは言葉だけ見ると強い文言もあるかもしれませんが、かなり誠実ないいお相手様です。」と伝えると同時に、気持ちが伝わったのを感じました。結果、譲歩してくださって、契約の運びになったんです。

土橋:契約上では小さなことでも、感情的に譲れないところは、経営者なら誰しもあるもんだよね。でも錫満はその気持ちを動かすことができた。「あの出待ち、どうなったの?」と話を聞いたときには、思わず「ナイスタックル!」っていっちゃったよ。ラガーマンの錫満ならではの強さを感じた。仕事の仕方にも、ラグビーやってた感じが出ているよ。

小原:ありがとうございます。タックルするときはタックルする。ロジカルな部分も大事ですが、マニュアル通りにやっているだけではなく、お客様のお気持ちをしっかりと汲み取り明瞭さや誠実さのお伝えの仕方を考えることはとても大事だなと勉強になった案件でした。その後1年経って会社は業績も伸び、売却した社長の臨んでいた働き方や今後のビジョンに則した経営が成されていて、非常にいいM&Aだったと振り返れますし、先日は社長の誕生日会にも参加させていただき、良い関係が保てています。買い側の方々とも今も良好にやり取りをさせていただいております。継続的に他の案件でもやり取りすることも多く、ご満足いただいているご様子を感じ取れ、三方良しのディールになったと感じ取れます。
土橋:それはすごくうれしいことだよね。成約して1年後その企業がどうなっているのかって大事だと思う。錫満は、もともと自我の強さが比較的前面に出ていて、その部分は良くも悪くもという印象だったんだけど、最近は冷静さもプラスされて、それが経験年数や実績とも相まって、良いバランスになっているなと感じるよ。

小原:入社当初は我が強かったですよね(笑)土橋さんにもぶつかりましたね(笑)でもこの仕事をしていると、いろいろな知識が複合的に必要で、一人でできることには限りがあると感じるようになりました。得意不得意もそれぞれにあって、必要なものを補い合う仕事の仕方、というものを学んだと思います。土橋さんの懐のでかさや、士業の方のプロフェッショナルな仕事の仕方など、尊敬できる方々に囲まれていることもありがたいことです。お客様は基本的に経営者の方なので、僕にとっては人生の先輩ばかり。お付き合いさせていただく中で人として勉強させてもらうこともすごく多く、まだまだではありますが自分でもこの3年、いろんな意味で成長できたなと感じています。

土橋:落ち着いて自分のことも仕事のことも俯瞰できてきているよね。インターンの中にも錫満と仕事をしたいと言っている子がたくさんいるよ。

小原:うれしいですね。たまにお客様と喧嘩してしまったり、ぶつかりすぎてしまうこともあるんですが……どうしてもお客様への思いが強くなってしまって、自分事になってしまうところがあります。

土橋:でもそれは錫満の良さだし、それだけ当事者意識をもって寄り添ってくれるコンサルタントは貴重だと思う。お客様へのレスポンスも速いよね。
錫満を見ていると、ただディールを決めたいとか自分だけのためにやっているわけではないのが伝わってくる。いつもお客様のために動いているなというのがよく分かる。いろいろな局面、特に辛い時にしっかりお客様に寄り添っているかどうかはすごく大事。仲介者は、どうしても当事者にはなれないけれど、いかに当事者に寄り添えるのかっていうのを、考え続けていくことが必要だと思う。利益相反な立ち位置でもある仲介者だから、一線引かれたり怪しまれたりもしがちだけれど、錫満の仕事の仕方なら信頼されると思うよ。プライベートでも人のために動いちゃったりするほうなの?

小原:そうかもですね、、僕に関係のないことでもヘルプが来たら時間かけて一緒に行動したりすることはよくあるかもしれません。あと、僕がキューピット役になって結婚したカップルが2組で付き合ったまで合わせると累計8組くらいいます(笑)割と相談されやすいですし、つい一生懸命になってしまいますね。ラグビーでは自己犠牲の精神を培われたので、意外とご奉仕型かもです(笑)

土橋:コンサルタントの仕事は、誰に任せるのかで大きく変わるところもあって、人間性が問われるよね。人間性を育くむのは、仕事以外の時間が役割を担っていると思うんだけど、錫満のプライベートってどんな感じ?

小原:って、土橋さんともしょっちゅう飲みに行ってるじゃないですか(笑)僕の女の子事情は大体土橋さんにバレちゃってますね(笑)(笑)社長に恋愛相談できる会社なんてなかなかないと思うんですが。会社のみんな、自然と仲が良くて、垣根もなくて、食事に行ったりサウナに行ったりと一緒に楽しめたりするので、うれしいです。お人柄が良い人に恵まれた会社もなかなかないのではと思って感謝しています。

土橋:たしかにみんなべったり仲がいいわけではないけれど、何かしようかと声をかければ自然と集まってくるような、程よい距離で仲が紡がれているよね。案件の話になっても、お互い共感できてよかったねと言い合えるような関係。見ていて気持ちがいい。楽しい時間も共有できると関係性も深まり、いい人間関係が構築されているように思う。
社内でも社外でもいろんな人間関係から刺激をもらって、人間力を上げていってもらいたいな。まだ若いけど、熟成してくる3年後くらいがまた楽しみだね。部下もついてくるだろうし。

小原:今出している結果をしっかり積み上げて、人としてもコンサルタントとしても成長していきたいなと思います。

ロジカルに案件を進めつつも必要な局面では良いタックルを決めてくる小原錫満。私は彼の、寄り添う力を買っている。今後たくさんの経営者にとって心強いコンサルタントになってくれるだろう。彼の今年の活躍とそのまた先の3年後にも、大いに期待している。

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