海外移住でのボーナスカード
コミュニケーションが不安
私は2022年にドイツへ移住をした。それまで海外旅行の経験すらほとんどなかった私にとって、この決断は非常にチャレンジングなものであった。
元々内向的で友達も多くない私は、新天地でのコミュニケーションに大きな不安を抱えていた。言語も不自由だし文化的背景も全く異なっている「異分子」である私に、果たして友達が作れるのか?と。友達までいかずとも、歓談の場で場を乱すことなく、うまく目立たずコミュニケーションを交わすことはできるのか?と。
これから留学や海外赴任などが控えている方は、こういった類の不安をお持ちの方も少なくないだろう。海外ぼっちはつらい。右も左もわからないのに、それを尋ねる友達すらいない。力を貸してくれる親切な知人などいない。孤独である。
だが不安になりすぎないでほしい。海外に移住をし気づいたことがある。それは「海外移住でのボーナスカード」の存在である。
海外移住でのボーナスカード
「海外移住でのボーナスカード」とは?それはあなたがそのコミュニティで異分子であるために手にすることができるカードだ。私たちの場合は「日本カード」である。
私はドイツに移住後、様々な場に顔を出して知り合いを積極的に増やそうとしていた時期がある。その時に感じたことは、すべてのコミュニケーションは「あなたはどこからやってきたの?」から始まることである。
「あなたはどこからやってきたの?」という質問から、会話のテーマは自然に日本に関するものとなる。日本のどこ出身なのか?どこどこには行ったことはあるか?飛行機で何時間かかるのか?など地理的な質問や、この日本アニメが好き!この日本の車メーカーが好き!などの文化的なものまで、自然と会話が膨らみやすい。これがボーナスカードである。
(注意)私の住んでいるドイツでは、見た目でその人が外国出身であると決めつけることは非常に失礼な行為となりえる。そもそも他国にバックボーンを持つドイツ生まれドイツ育ちの方々も多く、見た目で判断すべきではない。上記の例は私が拙いドイツ語でコミュニケーションを図ったところドイツ出身でないと判断されたもので、決して見た目で外国出身と判断されたわけではない。
私がコミュニケーションに苦手意識を持っている理由は、自分の価値観や好みを否定されることが怖いからだと思う。なので積極的な自己開示ができない。ただそこに「日本」というフィルターを一つかませられれば安心なのである。
日本についてある程度の興味と知識がある人とは、日本についての意見交換をすればいい。日本についてよく知らない人とは、日本についての情報を与え相手の出身地と比較して楽しめばいい。とにかく、あなた自身の話をせずとも会話が弾みやすい。これはあなたが異国出身であって初めて手にすることができるボーナスカードなのだ!
ボーナスカードの有効期限
ただしこのボーナスカードには有効期限がある。私の見立てでは、初回はこのボーナスカードのみでなんとか乗り切れるだろう。だが二回目以降はそうもいかない。会話はよりパーソナルな領域へと突入し、そこからはより普通のコミュニケーションの場となる。
私のドイツの職場では、私の初日には皆が日本について色々と聞いてきてくれた。私も日本について話すのが楽しくて、意気揚々と積極的にコミュニケーションをとっていたことを覚えている。しかしそれもひと段落がついた今では、気の合う一人二人とコミュニケーションをとるので精一杯だ。日本にいた頃と同じ陰キャムーブ。ボーナスカードを使い切ったのであろう。
まとめ
とにかく何が言いたのかというと、海外でのコミュニケーションでは異国出身ボーナスカードがあるということ。最初のうちはそのボーナスカードを使った会話が弾むので、コミュニケーションに苦手意識を持つ方でも意外と問題ない。ただし初回のみである。二回目以降は日本でもしていたような普通のコミュニケーション、自身の価値観が否定されることに常に怯える労力のかかるコミュニケーションへと突入するのである。
まあ気楽に、気の合う少数の友人と付き合っていくのも悪くない。なんなら友人がいなくとも問題はない。くらいのメンタリティを持って、気を張らずに適当にやっていこうと思う今日このごろ。