「法のデザイン」は #プロダクトマネージャー必読書
新しいサービスを作る時に法とどう付き合うか
ぼくの中で前提としてあった考えは「ビジネス・サービスは法律というOS上で機能するモノ」だ。なので、新しいビジネス・サービスを創る際には、そのドメインにおける法律を把握する必要がある。ただ、そこで一つ疑問が湧いた。法律は過去に起きた事実をベースにルールが創られていく。だとすると、新しいビジネス・サービスを創る際には、どういうスタンスで法律と向き合えばいいのか。全てを厳格に守ったら新しい事はできなくなるし、かと言って無視しすぎても後から刺されるかもしれない。PMとして新しいサービスを設計する際に、いい塩梅が全く分からなかった。そんなモヤモヤを抱えている際に、twitterか何かでこの本に出会った。
創造性とイノベーションは法によって加速する
これがこの本の副題なのだが、読了後に「自分の法律に対する理解は狭かったな」と考えを改めさせられた。読み始めから唸ったのが下記。
例えば、Google、Uber、Airbnbなどの米国企業が生み出すサービスまたはビジネスをみると、「コンプライアンス」という言葉を単に「法令遵守」という意味で捉えていたのでは到底生まれ得ないものが多く存在する。
(中略)法解釈あるいは法律自体が時代とともに変化しうることを当然の前提にしたうえで、法律家に自分たちのビジョンを裏付けるためのロジックを作らせ、時に法廷闘争に巻き込まれながら、その二、三年の間に市場でのシェアを奪い、同時にロビーイングをかけ法改正まで結びつける、ということをビジネス戦略として遂行するということも彼らは意識的にやっている。
水野祐.法のデザイン(Kindleの位置No.96-105).株式会社フィルムアート社.Kindle版.
サービスを創る人間の認識として重要なのは、法律は「絶対に守るべき対象」ではなく「時代によって変化するもの」だなと。ただ、今まではなんか法律って絶対的に守らなきゃいけないような気がしてた。なんで自分はそう思っていたんだろう。日本人がそう解釈しがちな背景を、著者の水野さんは「コンプライアンス」を「法令遵守」と和訳した事に一因があるのではと考察している。
「法令遵守」という和訳がイノベーションを阻害?
「コンプライアンス」は「法令遵守」と和訳され、日本では単純に法令を忠実に守ることを貫徹するという意味で理解されてきた。しかし、このような日本型のコンプライアンスは、社会が激変するなかで法令が予測していない事態を前にすると無力であることは、昨今日本からイノベーション企業が生まれていないことや、福島第一原発やさまざまな行政官庁、大企業の不祥事によっても明らかであろう。
水野祐.法のデザイン(Kindleの位置No.579-583).株式会社フィルムアート社.Kindle版.
イノベーションは「法令が予測していない事態」そのもの。法令遵守を真面目に遂行しようとすればするほど、イノベーションは未然に潰されて行くことになる。なんと言うことだ。アーメン。しかし、冷徹な現状認識だけで終わらず、次の一手を提示してくれるのが良著。
法の整備にもデザイン思考は効果的
アーキテクチャのみならず、法も人間の行動を規制するだけでなく、良い方向に、より創造性やイノベーションを促進・加速することが可能なのではないか。
(中略)一方で、単に法制度を設計するだけでは不十分であることもまた自明である。法の「余白」を使いこなすには、それを使う私たち個人、家族、法人ひいては国家の法に対する認識のアップデートも同時に求められる。その際に重要なことは、法律の解釈・運用や契約を活用することにより、個人がルールの形成過程に積極的に参画していくというマインドである。
(中略)デザイン思考における「共感・理解→定義・明確化→アイデア開発・創発→プロトタイプ→テスト」というプロセスは、法を含む制度設計にも有効に機能すると考えられるからである。
水野祐.法のデザイン(Kindleの位置No.496-511).株式会社フィルムアート社.Kindle版.
法は時代に応じて変わっていくものだとすると、この時代に生きている自分達こそ法の形成過程に参加すべきで、そのプロセスにデザイン思考は活用できまっせと。
今までやってきたプロダクト開発において、規約策定などで法務の皆様と関わる際に、彼らに「Yes or No」の答えだけを期待していた気がする。考えた仕掛けが法律に抵触しないかだけのYes or No。ただ、それは怠惰かつリスペクトの薄いスタンスだったなと反省した。ユーザーに前例のない行動を取ってもらうためにプロダクトを創っているのに、事前に起こってもいない事を白黒はっきり想定できるわけないし、ルールは立場関係なく一緒に創っていくもの。
「世の中をより良い方向に変化させる」事を目的とした行いという点では、デザインも、エンジニアリングも、セールスも、カスタマーサクセスも、そして法の整備も変わらない。「専門家ではないから」とか変な言い訳せずに、もっと積極的に首を突っ込んで行こうと思った。
おまけ
昨晩記事を描き始めたら、著者の水野さんがこんなツイートをしている事を発見。2018/6/25 9:45時点ではまだセール開催中。セール期間はいつまでかよう分からないので、興味が湧いた方はポチってみてください!
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