エヴァ直撃世代のおっさんが若いオタクに聴いて欲しい90年代アニソン⑥
今シーズンからアーセナルでプレーしている新手のアフロ、グエンドウジくん19才。
またひとりプレミアリーグにアフロが増えたということで、アフラーのみなさんも大歓迎だそうです。
で、試合見て思ったんですが、彼ってDJ KOOの若いころに似ていませんか?
といっても昨今の若いアーセナルファンは若き日のtrfなんて知らないでしょうし、若きアーセナルファンにも比較検討しやすいよう、ユニフォームに付いているプレミアリーグのライオンマークをDJ KOOに挿げ替えませんか? 顔の部分だけ。
なんてぼんにゃりと考えていたのですが、世の中ではおそらくグーナーオフ会とか開催されているのでしょうし、ライアン・ギグスがFAカップ準決勝の再試合でアーセナルを切り裂いたころには見ていたようなおっさんグーナーと平成生まれが語り合ったりしていると思うので、そこでおっさんが「ねぇ、ところでグエンドウジって、DJ KOOって人の若いころに似てるんだけど、わかる?」とか話題にしていけばそれでいいと思いました。
そんな昭和生まれ臭いネタをふられた若者は、きっと引くでしょうけど。
さて、この連載は、90年代真ん中に精通を迎えた僕が、90年代に出会ったアニソンを、平成生まれのみなさんに紹介する的なアレです。
早い話、新しいものを吸収できなくなったおっさんの昔話です。
・90年代には物心がついていなかった
・いやちょっと待て。この世界はついさっき始まったばかりじゃないのか、「過去の歴史が存在する」という初期状態を備えて
・90年代はお餅を食べること以外興味はありませんでした
っぽい感じの、みなさん。
まぁキモい昔話ではあるんですが、紹介される曲は良曲なので、ぜひネットの力を駆使して聞いてみてください。
6、MIJK VAN DIJK「FUCHI KOMA」1997年
いつもは歌詞引用も動画サイトの埋め込みもしないんですが、今回は外国人の曲だし別にいいや、ってことで埋め込んでみました。
この曲はプレステで出たアクションゲーム「攻殻機動隊」のサントラの1曲です。
ボーカルは入っていません。6回目にして90年代アニソンという縛りがほんのり崩壊気味です。
この曲、というかCD、すべてテクノアーティストによる楽曲提供でなりたっています。
つまり、ゲームのサントラであると同時にテクノのコンピレーションアルバムでもあるのです。
音頭をとったのは電気グルーヴの石野卓球(なはず)。
参加しているのはデリック・メイだとかWESTBAMだとか、テクノを聴き始めたばかりの人たちが最初に知るような人たち、すなわち有名な人ばかりです。
日本においてまだテクノミュージックがマイナーだった90年代。
当時の日本のテクノリスナーが入手すべきアイテムというのがいくつかありました。
古い話ゆえ、顔からガーヴフレアが出るくらい恥ずかしいですが、列記してみましょう。
「電気グルーヴのテクノ専門学校シリーズ」「MIX-UPシリーズ」「テクノスポーツ」。
などです。
それらと並んで、入手すべきアイテムのひとつが、このCDでした。
ついでにいうと、今となっては拳銃で自分の頭蓋骨を撃ちぬきたくなるくらいダサくて恥ずかしい言葉ですが、「テクノ四天王」だとか「三種の神器」なる言葉が創成期の2ちゃんねるにはありまして。
テクノ四天王・・・Underworld、The Chemical Brothers、Orbital、The Prodigy
三種の神器・・・Aphex Twin「Selected Ambient Works 85-92」、Orbitalの二枚目のアルバム、Hardfloor「TB Resuscitation」
ひととおり聞いたり買ったりしたものですし、なんなら同級生が聞いていないジャンルをチェックしている優越感に浸っていたような気もします。。
あー恥ずかしい。
ま、テクノを普通の人がCDで手に取ることがあまりなかった(そこそこ売ってはいましたが)。ゆえにコンピのリリースが有効な時代だったということです。
攻殻は士郎正宗の漫画であり、95年公開の押井守による映画版が全米ビルボードチャート1位になったことは、再確認を必要としないくらい誰もが知っていることですが、やはり映画が海外でウケたことがこのサントラに影響をしているといえるでしょう。
というのも、各アーティストのちょっとしたインタビューが載っているのですが、多くのアーティストが「見たことある」「噂には聞く」とおっしゃっていますので。
総じて「クール」とか「次のAKIRA」とか好意的かつ簡潔なおこたえなのですが、そんななか、ひとりだけ興奮気味に答えているのが、この曲の作曲者、マイク・ヴァン・ダイクです。
「士郎正宗先生の漫画はドイツ語か英語で出たらすぐ買いますし、日本語版も入手しています! 映画もまずは日本語で見ました!」
とかほざいてます。唾とか確実に飛んでいるでしょう。
マイク・ヴァン・ダイクはこのアルバムのなかで特別な存在です。
なんせ、ひとりだけ別枠で文字数おおめのインタビューが掲載されていますので。
おそらくドイツ語か英語かでこたえているはずですが、日本語訳がオタク特有の早口になってます。
合コンで引かれる口調と言い換えてもいいでしょう。
東京ゲームショウで10分程度の、しかも音響も最悪で告知もないステージのためにわざわざ来日するだけあります。
で、この曲なんですが。
攻殻機動隊というのは神道や仏教なんかをネーミングのモチーフにしています。
草薙素子はまんま草薙だし、トグサはおそらく十種、バトーは馬頭観音でしょうか。
FUCHI KOMAも天の斑駒からきています。『古事記』の有名なエピソード「天の岩戸」に登場するのですが、乱暴もののスサノオによって皮を剥ぎ取られ、機織場の屋根から投げ込まれるというかわいそうな馬です。
ちなみに投げ込まれたことで驚いた機織女は女性器を怪我して死んでしまいます。こちらもかわいそうです。
で、その天の斑駒による、神道的電脳、サイバーパンク日本神話風味楽曲が、この曲です。
あまり展開がある種類の曲ではありません。
が、自然と体が動いたり、頭の中に自由な映像を思い浮かべて楽しんだりできるんじゃないでしょうか。
ゲーム本編をやったことないのでどんな場面で使われるのか知りませんが。
八百万の神をデジタル化して脳内に飼ってるみなさんにオススメです。
ついでにいうと、攻殻のサントラだけでなく、日本のために特別に作られたマイク・ヴァン・ダイクのベスト盤「Multi-Mijk」にも収録されていますし、そのジャケットは士郎正宗だったりします。ポプテピピックのEDをあんきらの声優が歌ったのと同じ種類オタクの夢のかなえ方です。
さらについでにいうと、「Multi-Mijk」の解説は、のちに「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」の脚本をつとめる佐藤大だったりします。世の中って狭いですね。
んじゃ、また。