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たい焼きは、液体である

「焼き上がるまでに5分ほどお時間を頂戴しますが、お待ちいただけますでしょうか?」

この言葉を聞いた時、私はもはや興奮していた。


「恵比寿たいやき ひいらぎ」にてたい焼きを注文すると、バットのようなものに行儀良く並んでいる“とれたて”のたい焼きから1匹ピックアップされ、袋に入れて渡される。

だがしかし、今日は違った。さすがの人気店、一時的にたい焼きが品切れになっていたのだ。

5分後に“とれたて”が提供できるらしい。

つまり、私は、本当にとれたばかりのたい焼きを食べることができる…!!!


「恵比寿たいやき ひいらぎ」をはじめて食べたあの日から幾日が経っただろうか。そして、雨の日も風の日も、足繁く通った私…そんな私でもありつけなかった、正真正銘の“とれたてのたい焼き”…!!!


たい焼きを受け取る手は、心なしか震えていた。


いつも通り、近くのたこ公園に陣取る。

右手にはこちらも恵比寿の名店「猿田彦珈琲」、左手には、かつてエルドラドにあると噂されていた、幻の「とれたてのたい焼き」。


下顎のあたりから頬張る。


待っていたのは、「恵比寿たいやき ひいらぎ」の、隠された真の姿だった…


村上春樹の『羊をめぐる冒険』の後半、主人公と対話する鼠が放った

「そこではあらゆる対立が一体化する」

という言葉は、この「とれたてのたい焼き」に向けられた言葉だったのではないか…そう思わされた。


そう、ありとあらゆる対立が一体化していたのだ。

上と下、朝と夜、入口と出口、善と悪…これら全ての相容れない対立概念は、「とれたてのたい焼き」を中心として、昇華していた。

そこには、ただ「とれたてのたい焼き」があったのだ。


何が起こったか。

私が食べたのは、たい焼きだったはず。

だが、私には、それはもはや液体にしか感じられなかった。

固形物に歯を立てたのに、口の中に流れ込んできたものは、とろりとしたもので、気がつけばそれは身体に染み渡っていた。

たい焼きは、私に触れるとすぐ、私そのものになってしまったのだ。


否、そうではない。


私こそが、たい焼きになってしまったのだ、きっと。


私とたい焼きが渾然一体となった世界…そこに身を委ねていた永遠のような時間は、どうやらほんの刹那であったらしい。


気づけば、舞い散る桜が、春の終わりを予言していた。


続く…



というのは嘘。おしまい。


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