好きなブランド
大手ブランドにとって、香水はドル箱で、特にヒット作が1本でも出ると、それだけでブランドが存続しうるらしい。
これは人から聞いた、信憑性は担保できないが、ありそうな話。
大手ブランドにおけるファッションショーにおいて、「お金持ってるなぁ」という印象を受けるのはCHANELとDIORらしい。逆に、「金銭的に苦しいのかな」と感じるのは、Yves Saint Laurentなんだとか。
これらのブランドの違いは、香水の大ベストセラーがあるかどうか。
確かにCHANELはNo.5がある。DIORはJ’adoreやEau sauvageなど、こちらも商業的に大ヒットした作品が複数ある。
一方のYves Saint Laurentは、そう言われてみると、確かにOpiumやParisなど、有名な作品はある一方で、ブランドを象徴する香りと言われると、ちょっと迷ってしまう。ベストセラーはOpiumだろうが、CHANELやDIORのベストセラーと比べると、少し見劣りするように感じるのは私だけだろうか?
さて。
ここ数日で、6人の若いフランス人女性と面接する機会があった。手伝っているブランドのリクルーティングのためだ。年齢は20〜25歳。
「好きな香水ブランドは?」
という質問に対し、4人がYves Saint Laurentと回答した。ちなみに残り2人のうち、1人はHermès、もう1人はTom Fordと答えた。
不思議だった。
6人中4人である。もちろんサンプル数は少ないが、それを差し引いてもかなり高い割合であるように思う。
確かに、2014年に発売されたYves Saint LaurentのBlack Opiumは、フランスの若者の間でかなり流行った。実際にYves Saint Laurentと回答した4人のうち1人はBlack Opiumを使っていた。
とは言っても、Black OpiumがYves Saint Laurentを代表する香りとなっているかと言われるとかなり微妙である。そもそもがOpiumの(似ても似つかない)フランカーであるし、一切オリジナリティのない香りである。それゆえ、ある程度売れるのはよくわかるが、発売から5年以上経った今でも香水売り場のベストセラーのポジションをキープできているかは甚だ疑問だ。
それではなぜ、彼女たちは、好きな香水ブランドと聞かれてYves Saint Laurentを挙げたのだろうか?
正直、私にもまだよくわかっていない。
よくわかってはいないのだが、いずれにしてもこの結果は、「好きなブランド」と「売れるブランド」の間に、大きなギャップを生み出していることをよく示している。
そもそも、「好きなブランド」として挙げておきながらそのブランドのプロダクトを使っていないケースは結構多いように思うし、場合によっては一生買わない、なんてこともしょっちゅう起っているはずだ。「いつか買いたいなぁ」とぼんやり考えていても、いざ実際に買って身に纏うとなった時に、自分のキャラクターやスタイルに合わない、なんてことはよくあるのだろう。
好きな香水ブランドとしてYves Saint Laurentを挙げた背景には、ブランドに対しての憧れが多かれ少なかれあるはずだ。それだけYves Saint Laurentは確固たるブランドイメージを築き上げた。一方で、それは、ブランドとしてやっていること、つまりオリジナリティ皆無のフランカーを大量の広告宣伝費と共に世に出すというマスマーケット戦略と、かなりの乖離が出てきてしまっていて、その乖離が、どんなにブランドイメージは素晴らしくても、消費に結びつかないという状況を作ってしまっているのではないか、というのが今のところの私の仮説である。
(念のため付記しておくが、「オリジナリティ皆無のフランカー戦略」が悪い、と言っているわけではない。マスマーケットにおいては間違いなく正しい戦略である。ただし、ブランド戦略を俯瞰した際に、明らかな齟齬があることを指摘したかった)
一貫性のあるブランド哲学の重要性を改めて感じさせる出来事となった。
上記の仮説に関して、何か思うところがあれば、ぜひコメントいただきたい。
ブランドçanoma(サノマ)のインスタグラム、ぜひフォローしてください!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?