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音ゲーを開発して「歌ってみた」はなし


はじめに

去年の12月に「スタジオしまづゲームコンテスト」と「1週間ゲームジャム」に投稿するゲームを開発していました。忙しい師走に無謀にも音ゲーの開発に挑戦したので記事に書き残しておきます。

音ゲー開発のきっかけ

ゲームに物語を入れたい

開発したゲームに物語(やキャラクター)を導入できないかと、以前より考えていました。 Nurikan先生のSAVE THE Iの様にゲームとして面白く、さらにどこか「人の心をうつ」作品を作ってみたかったのです。

じゃ文章を書いてみようかと思うわけですが。これはこれで結構悩ましいかなと。簡単じゃない。

個人的に、ゲームに登場する文章を読むパートは「つまらない」と感じる事の多い要素でもあります。結構な割合で「なぜゲームを遊びたいのに文章を読まないといけないのか?」って感じています。

単に文章がつまらないだとか、文章を出すタイミングと分量が不適切だとか要因はあるでしょうが。下手に手を出すとゲームを遊ぶ障害にしかならないなと。

(勿論、文章を読む事が面白いゲームもあります。ただ無計画にやると失敗することが多いと思いますよって事です)

物語を語る方法としての歌

文章を読ませるのは難しそうなので一旦やめて他の方法を検討します。

いっそ物語を伝える方法は「歌」でどうだろう?と考えました。もう物語を歌ってしまえ!という。

歌ならBGMとして流すことができるので、プレイを中断しなくても物語を伝えられる。ゲームのテンポも損なわれない。興味ない人は無視できる。

今まで遊んだゲームの中でも、歌が思い出として印象に残っているものは多い。ゲームとの相性は悪く無いはず。

個人ゲーム開発者で作曲している人は多い。でも「歌ってる人」ってそこまでいない。(あの方しか知らない) 差別化の武器としても使えそうです。

「歌」いいじゃないかと。

テーマは「愛」

そんなふう考えているときに「スタジオしまづゲームコンテスト」の開催を知りました。賞金なんと10万円!そしてテーマは「愛」

テーマは「愛」ときいて開発するゲームの内容は即決しました。

ど直球にラブソングです。切ない愛の思いの全てを歌にして、プレイヤーに届ける事が出来れば感動を生むに違いないと。ゲームは音ゲーでいいや。

締め切りまで残り20日くらですが。もう作りたい気持ちが爆発しているので開発開始です。音ゲーも作ったことないし、音楽経験もないし作詞なんて当然したことないです。

ですけどまあ。作りたいって気持ちがあるときは何とかなるんですよ。なるっていう出来るパワーが人間にはあるんですよ。ケツイってやつですね。

スタジオしまづゲームコンテスト 11/30 -12/20

さっそく開発を開始するのですが、まず肝心の楽曲を用意します。加工と歌入れも可能ということで、こちらからお借りしています。

※以下に書いてある歌詞の作り方は音楽経験ゼロの自分が、こんな感じかな?で実施した方法なので変かもしれないですが。お手柔らかにお願いしたいです。

作詞編

まず曲全体を把握します。音楽って普通に聞いていると構成を理解できないので。曲の雰囲気が変わるところで時間を計って区切ります。管理のために区間に適当な名前(Aメロとか)をつけます。同じメロディの部分には同じ名前をつけておくと歌詞つけるときに管理しやすいので良いです。

作詞_「あなたへの手紙」

原曲が5分近くあるので編集して2分程度に変更します。音ゲーは集中力が必要なゲームなので普通の曲の長さだと長すぎます。曲の中で2回繰り返してる部分を1回にしたりなど、曲をバッサリ切っていきます。

次に歌詞をつけていきますが、その前にシチュエーションを作ります。

まず自分の持ちキャラとして「きゅんぴ」というキャラクターが居るのですが。愛着もあり、性格などもある程度固まっていてお話も作りやすそうなのでこの機にデビューさせます。

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設定としては「片思いをしている子が夜な夜なラブレターを書いている」という事にしました。まずラブレターを書くという行為自体が可愛いですし。恋をしている時の揺れ動く感情。悶々としながらも真っ直ぐ向き合う様子を表現できれば最高に可愛いし、この切なさは「人の心をうつ」ことができるだろうなと。

歌詞をつけると言う事は、いわばメロディに文字を当てはめる事だと思うのですが、いきなりだと結構難しいので最初に意味不明でも良いので言葉を当てはめます。メロディに何文字の言葉が入るか理解するためです。

あとは頑張って物語に沿った表現と言葉に置き換えていくんですが、どうしても当てはまる言葉がない場合は Ah〜♩とかでごまかしましょう。

作詞_「あなたへの手紙」

最初のサビと最後の方のサビで同じフレーズを使うと意味合いを強調できる様な効果があるんですが「歌詞の節約」にもなるのでおすすめです。

歌入れ

歌詞ができたので曲に合わせて肉声を入れていきます。最初はパソコン内蔵のマイクで録音すれば良いと思っていましたが。ノイズが入るというか「ぼやっ」っとした声しか取れないので評判良さそうな以下を購入。

そのままではおっさんの声なのでピッチを変更してます。編集した曲と、録音した声を合わせると楽曲の完成です。

ここで一番気をつけないといけないことは「ご近所トラブル」に関することです。僕はアパート暮らしなので騒音には結構気を使います。つまり作業できるのは昼間に活動できる土日などの休日に限定されるという事で、それを考慮したスケジュールを組みましょう。

ゲーム開発の最終目標って端的にいえば「みんなを笑顔にする」って事です。開発の過程で人様に迷惑をかけたら0点なんですよ。知ってた?

開発編

音ゲーの実装

ビートマニア系の音ゲーって僕は遊ぶの苦手で、特にノーツが流れてくるのを目で追いかけるのが苦痛ってのがあります。

そこまで目で追いかけなくても良い「jubeat」や目を閉じていても、音を聞いただけで、ボタンを押すタイミングが理解できる「リズム天国」が好きです。ということで今回はリズム天国を作ります。

どの音ゲーにも共通してる部分は、プレイヤーにボタンを押させて、そのタイミングが正解のタイミングと、どれだけズレているかを判定するということでしょう。

なので作り方としては

1) 曲が始まってから何秒にボタンを押して欲しいかを設定する。これを正解の時間とする。 2) ボタンが押された時に今が曲の何秒なのかを取得する。3) 押された時間と正解の時間を比較して、どれだけの時間ズレているかを判定する。4) ズレが0.3秒未満(要調整)だったらEXCELLENTやGOOD それ以上ならMISSとする処理を書く。という感じです。 

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基本的にはこれだけですが、精度上げるために、ボタン押下を検出した処理からズレを判定する処理までの間に何秒(ms)かかっているか計測して補正するとか、そういった細かいこともしてます。

あと「曲が始まってから何秒にボタンを押して欲しいか」の設定は手書きで設定していくと大変すぎるので。曲を流しながらボタンを押すと自動で設定ファイルを書き出すようなツールを最初に作ると良いです。

※音ゲー作りたいけど実装よくわかんないから教えて欲しいって人がいた場合はいくらでも説明しますので本当に気軽にDMでもどうぞ

歌詞の表示

せっかく歌詞づくり頑張ったので、カラオケや音楽番組の様に画面に歌詞を表示させます。以下のアセットを利用して文字を震わせたりフェードインさせたり作品の雰囲気にあわせて演出を行なっています。

画面のどこも動いていない、いわゆる死んだ画面を作らないため、文字を動かす演出は今後も使えそうです。ヨッシーアイランドのスコアボードで文字が動いてるのとか好きだし取り入れていこう。

絵を出す

アニメっていうのは繰り返しが基本だと思うので、特定の時間になったら ループAを開始。(ループAの中で絵が1->2->3->1->2.. と紙芝居のように切り替わる) また特定の時間になったらループBを開始的な処理を実装しています。

今回は絵を嫁さんに描いてもらいました。今後も依頼させてもらおう。

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結果画面

最後に結果画面を作ります。今回はボタンを押したタイミングによってEXCELLENTとGOODとMISSを判定しています。全てのノーツでEXCELLENTをとると100点満点になるように調整します。

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ただ、曲に登場するノーツの数が87個とか中途半端な数字だと100点満点にすることが難しいです。なので「ボーナス」を用意して適当な数字で帳尻を合わせます

この過程で作った「プレイありがとうボーナス」は自分でもお気に入りです。ボーナス名も作れて感謝の意も表現できる一石二鳥のアイデアです。

子供の頃に遊んだスーパーマリオ64でマリオが最後に Thank you so much a-for-to playing my game って言うんですが。これが本当に本当に好きで。

ゲームを世に送る態度はコレだなと心に決めております

ほんと遊んでくれてありがとうです

おまけとして、点数によって結果画面の絵が変わるようにしています 80点以上で笑顔のきゅんぴちゃんなど5段階 (0点も違う絵が出るようにしてます)

という感じで完成です。

肝心の評判ですが、これが結構よくて。「感動した」とか「きゅんぴちゃんが可愛い」といっていただけました。作ってよかった。

やったぜ! (うれしー!)ちなみにコンテストでは準優勝という結果になりました。やったぜ!

1週間ゲームジャム 12/20 -12/29

スタジオしまづゲームコンテストへの投稿が完了した数時間後に今回のお題発表となりました。テーマは「あける」!!

この時点で、歌ネタでもう一本くらい作ってみたいという気持ちでしたので音ゲーの開発を続行します。工数削減もかねて「きゅんぴのラブソング」で作ったコードを使い回す感じでいきます。

企画

ゲームジャムで企画を考えるとき、まずお題からゲーム内容を連想するフェーズがあると思います。例えば今回の「あける」というお題であれば、何を開けると嬉しいか -> 宝箱をあける -> 宝探しゲームという具合にテーマからいくつものモチーフを連想して、そこから絞りこむ必要があるのかなと。

ただ今回は音ゲー前提にして「思いついたものは全部開けよう」という感じでいきます。たくさんの種類の物が音楽に合わせて次々と登場するので、リズムに合わせてボタンを押すと「あける」ことが出来るゲームとします。

傘とか、目とか、宝箱とか、揚げるとか...最後には年末らしく年が明けて2021年になる!という事でオチも付いておあともよろしいかなと。

全部で35種類(差分を含めて画像70枚)くらい用意できればボリューム感もあって良いかなといいう感じです。嫁さんに1日10種類ほど描いてもらってなんとかして頂けました。 (ギャラはハーゲンダッツ20個)

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開発編

コードは基本的には使い回し。1週間ゲームジャムはいつもゼロベースで開発しているので大変なんですが使いまわせると楽ですね。追加機能としてボタンをタイミングよく押すと絵が差し代わる処理とかを追加しています。

また、今回はせっかく「あける」ものがたくさん用意できているので、図鑑機能も追加して、ジャストで開けれたものが記録される機能を作りました。

図鑑がエンドコンテンツになるので、ここを基準に難易度を調整します。3回くらい遊ぶと図鑑が90%埋まるかなくらいの難易度にします。

作詞編

開発時期が年末や正月なので、とにかく明るい感じを目指そう。ということで歌詞を作っています。特に物語とかなく「あける歌」になっています。

単一のワードを連呼する様な歌になってしまいました。まるで昔NHKで放送していたむしまるQの歌のコーナーの歌みたいだなと思い、曲を作った後に画面を歪めてブラウン管風にしたりしています。

きゅんぴちゃんの歌と比べるとテーマが弱いこともあるし、ひとの心を打つようなものには出来ませんでしたが。歌として楽しいものにはなったのかなと思います。ということで、完成しました。

結果としてはサウンド部門で2位(すげー!)を頂くことが出来ました(結果発表直後は1位だったらしい。キャプチャ取っておけばよかったー)

思うこと

今回は、歌付きの音ゲーに挑戦したのですが、嬉しい感想を頂いたりサウンド面で高評価をいただいたりと、年末という忙しい時期でも、歌による一点突破で良き成果を出すことができたかなと思います。

個人ゲーム開発者として歌に対して思うこと

ゲーム開発者で歌っている人って少ないので、ゲームジャムでは結構目立てるのかなと思います。未開拓の領域ではあるので参入の余地は大きいかなと思います。(今後はたくさん現れると思いますので今のうちに)

歌はSNSだと目立たない。基本は無音で見ていて目から入る情報の方が強いのかなと思います。歌単体だとSNSと相性が良くないのかなという印象です。歌単体で拡散って難しいかも?

ゲーム会社のゲームには歌がついていることは多いですよね。世の中的にゲームに歌がついてることって普通なんです。じゃあ私たち個人ゲーム開発者が歌をつける意味ってなんなのでしょうか。

闇雲に歌をつけるのではなくて歌をどのようにワークさせたいのか、しっかり考えて取り組みべきだと思います。歌をただの添え物にするか主役に引き上げるかは、開発者の意思にかかっています。(表現したいことがある。物語を伝えたい。歌が持っている感情を表現する力を利用するなど目的が重要) 

最後に

まあ小賢しい事をいろいろ書きましたが、今回取り組んでみて分かった一番大事なことは「歌作りは楽しい」趣味としておすすめって事です。今後も音ゲーを作り続けるかは不明ですが、歌作りには挑戦していきたいです。

ゲームの一番アツい展開の場面(例えばラスボス戦の前とか)で歌を流して、みんなをびっくりさせてみたいですね。

あとは作曲にも挑戦していきたいですね。

ゲームをもっと面白くするために。ゲーム作りをもっと楽しくするために。

ということで振り返り記事でした。次回もお会いしましょう。

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