設計事務所の住宅設計の進め方
このご時世により最近郊外に一戸建てを建てることを希望する人が増えているとよく聞きます。
だけど実際には誰に相談しても良いのかわからないとか、とりあえず住宅メーカーの展示場に行ってみるとか、そういう状況の方が大多数だと思われます。
そこで本記事ではこれからマイホームの建設を検討している方のために、実際に設計事務所がどのように住宅設計の仕事を進めるのかについて記載しようと思います。
この記事を参考にして設計事務所さんにご問い合わせ・ご相談されると良いと思いますよ!
全体の設計概要として新築一戸建ての場合は、次のような流れで設計を進めて行くことになります。
1.相談
2.初期提案、設計契約(4~5週間)
3.基本設計(2,3か月)
4.実施設計(2,3か月)
5.確認申請(2週間)
6.現場監理(規模によるが半年前後)
7.お引渡し
1つ1つ具体的にプロセスを説明していきますね!
1.相談
多くの場合、友人や先輩、後輩などの個人的つながりから住宅の相談に関して連絡を頂くところから始まります。
ご相談をいただいた時点では親族から譲り受けた土地に一戸建てを建てたいとか、これから土地を探す段階とか、2年後に設計開始をお願いしたいとか、プロジェクトごとに状況はいろいろです。
僕の場合、一応過去の完成写真集などを持っていき、それを眺めながらどのような構想やご要望をクライアントがお持ちなのか丁寧に聞くようにしています。
この時点では設計内容云々の話はあまりせずに、まずはクライアントがどうしたいのか、プロジェクトの方向性として何がよいのかを何度か会って話すことで、理解していくことを心がけています。
相談自体は無料です。
こうして何度か打ち合わせを重ねることで、コミュニケーションの確立や信頼関係の構築に努めます。
土地や物件を一緒に見に行ったりもします。
そして工事予算や土地などの検討がついた段階で、設計料や支払いについて、見積書と言う形でこちらから提示します。
設計料は予定工事費の7~12%ぐらいです。(事務所によっては最低金額を定めているところもあります。規模が小さかったり安くても設計の手間は変わりませんので。)
2.初期提案、設計契約
敷地が決まって設計の検討をお願いしたいという段階になって、初めて具体的に設計をスタートさせます。
いきなり本契約ということもありますが、
とりあえず提案について様子見したいという場合には初期提案費用として20~30万円頂くようにしている所が多いと思います。
敷地の法的条件などについてある程度役所に問い合わせたり、模型やプレゼンテーションを作るのに費用がかかってしまうためです。
僕の場合はだいたい4,5週間ほどお時間をいただいて2~3案ほどご提案を作るようにします。
この時点では具体的な仕上げ、設備などは想定せず、全体の間取図や模型をお見せするようにしています。
提案のどれかが気に入っていただければ、そのまま本契約を行います。
本契約の設計料はだいたい5つのパートに分かれていて、
1.着手金(初期構想費)、2.基本設計料、3.実施設計料、4.上棟時、5.完成時
となっています。設計料の分割割合は事務所によって全然違います。
先の初期提案費用は1.着手金として扱います。
もし気に入らないで設計をキャンセルしたい場合は、初期提案費用を振り込んで頂いて、そのまま設計契約はしないということになります。(幸運にも僕は今まで一度もこの経験はありませんでした。笑)
3.基本設計
基本設計では初期提案での反応を受けて、
全体の間取りや構造、設備などについて検討を進めて行きます。
現実には初期提案がそのまま建設されることはほぼなくて、この基本設計時でのいろんな要望を受けて、プランを変更しながら設計を進めます。
だいたい打ち合わせは1か月に1回行い、必要に応じてメールなどでご意見・ご要望を聞いたりします。
この時点で構造設計士への相談も開始します。
要望の変更によっては構造の柱や壁の位置なども変えていく必要があるからです。
また同時に施工をお願いする工務店を設計開始時(あるいは開始前)に決めることもあります。
工務店をあらかじめ一つに決めると、工事費見積を設計の各段階で取れますし、どの材料が良いか、どう施工すると費用が抑えられるかなど相談ができるからです。
また近年建材費が急速に上昇しているため、工務店にあらかじめ材料と価格を抑えといてもらうこともできます。
工務店を定めない場合は、次のステップの実施設計終了時に複数の工務店に実施図を提出して、相見積もりを取ることになります。
4.実施設計
基本設計でおおよそのプランなどが決まってきましたら、細かい仕様を決めていく実施設計に入ります。
打ち合わせの頻度は2~4週間に一回になります。
決めていく仕様は、内外装材や窓の種類、キッチン・トイレなどの水廻り設備、エアコンや照明の品番、家具など細かく多岐にわたります。
クライアントにとっても一番楽しく、ただ頻度や検討事項が増えるので大変な時間でもあります。
基本設計時にある程度内外装の目途をつけておけば、お願いしている工務店から一回目の見積を出してもらうことができます。
この見積価格を見て、全体の予定工事費に近づけて行けるように設計を工夫します。
経験としてほぼ確実に予算オーバー状態になりますので、どの要望を採用して、どの要望を捨てて行くか、クライアント、工務店と話しながら取捨選択していきます。
実施設計が進みましたら、実施図として工務店に図面を提出し、工事費用を算出してもらうようにします。
5.確認申請
実施設計が終わるくらいに、新築予定の物件が建築基準法などの各種法律に適合していることをチェック・証明する確認申請という手続きを行います。
手続き先は指定確認検査機関という街中の事務所で行うことが多いです。
費用はだいたい4万円ぐらいです。
提出する図面が確認申請用で少し独特のフォーマットなので、確認申請代理事務所などに頼む業者も多いようなのですが、僕の事務所では自身で全部作成して提出しています。
新築一戸建て住宅の場合おおよそ2週間で審査手続きが終わるので、確認済証が発行されたら工事を開始することができます。
確認済証は発行されたら、スキャンして速やかにクライアントにお渡しするようにしています。
先の実施設計での金額が工務店から提出されて、金額調整を行ったら施工契約を結んで工事に入ります。
複数の工務店での相見積もりを取った場合は、見積内容を比較しながら工務店を選定・施工契約をします。
6.現場監理
工務店を決めて金額と施工スケジュールが決まったら、地鎮祭を行って工事の開始となります。
設計事務所の担当者が現場に行く頻度は、事務所と現場との距離で大きく変わります。
近場の場合(東京の事務所が首都圏を現場とするとか)は週一回ほど、
遠方の場合(東京の事務所が九州を現場とするとか)は月一回ほど
の頻度で現場を訪れることになります。
遠方の場合ですと、設計料の他に交通費・出張費などを請求しなければならず、現場へ行く頻度を上げるとクライアントの金銭的負担が増してしまうからです。
この現場では設計図通りに工事が行われているか、あるいは職人さんからみてもっと良い方法があるのかなどを見ていきます。
基礎配筋や建物の構造に関わる時には、構造設計者も現場を訪れて構造的に問題がないか確認します。
また現場が進んでくるとクライアントから新しいご要望が出てくるので、それに応じて設計者や工務店が丁寧に対応していくことになります。
だいたい
1.基礎~2.構造~3.断熱~4.外装~5.内装、設備~6.外構
の順で施工されていきます。
工事が無事進み完成が近づいてきたら、ついに引き渡しです!
7.お引渡し
工事の完了が近づいてきたら、引渡し前に完了検査というものを指定確認検査機関にお願いしないといけません。
費用は3~4万円です。
完了検査では、建設した建物が確認申請通りに建てられているか、変更点の有無、各種法的に問題ないかなどを確認します。
建物が高すぎないかとか、換気は問題ないかとか、自動火災報知機がちゃんとキッチンに取り付けてあるかなどが見られたりします。
検査自体は一戸建て住宅ですと問題がなければ30分から1時間で終わります。
無事終了すると、検査済証が発行、送付されてくるので、クライアントにお渡しして大切に保管してもらいます。(将来改修時に必要となります。)
また設計者自身でも建物内部をくまなくチェックしておかしいところがないか確認します。
傷などがあれば、工務店に修復してもらいます。
そうしてようやく完成した建物を、工務店からクライアントにお引渡しとなります。
お引っ越しされてきたら、ついに生活開始!
設計者としてクライアントの幸せな新生活を祈ります!
8.その後
ただこれで終わりではなく、お引渡しや設計料の振込み後もたまにクライアントと連絡を取ります。
家の住み心地はどうか、雨漏りなどの問題はないか、冷暖房の空調はちゃんと聞いているかなどのご意見を聞きます。
是正工事が必要な場合は、工務店とやり取りして修繕してもらったりします。
また設計事務所によっては完成後一年ぐらいしてから、自主的に一年検査したりします。
そうして設計終了後も設計者とクライアントと工務店とのつながりはずっと続いていくのです。
・まとめ
いかがでしたでしょうか?
これらが住宅メーカーなどではなく、設計事務所に新築一戸建て住宅の設計を頼んだ場合の大きな流れとなります。
この流れを参考に、設計事務所さんと相談されるとイメージがつかみやすいのかなと思います。
個人で設計されている方は、芸術家気質の気難しい人もたまにいますが、
僕の周りですと人当たりが良く誠実な方が多い印象です。
マイホームを新築されたい場合には、一度ご相談されてみたら良いでしょう。
疑問点などがあればご連絡いただけますと幸いです!
また設計の相談などがあれば、弊社ホームページあるいはInstagram、Facebookなどでご連絡いただけますと大変嬉しいです!
長い文章をお読みいただき、どうもありがとうございました!
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