ドドンパから脱出して古着屋へ
今日は久しぶりに時間を気にせず過ごせる一日だった。
かと言って、本当に時間を気にしないでいると「ドドンパ」くらい一瞬で今日が終わってしまうので、「あること」だけ決めてのんびりと生活をした。
その「あること」とは『着なくなった服を古着屋へ売りに行く』というものである。これさえ達成出来れば今日一日の行動は全て肯定されるし、逆に言えばこれすら出来なければ僕はこの先ドドンパから降りられないまま生涯を終えていくような人生になる。(?)それくらいの自由と責任を背負って挑んだのが今日のノルマだった。
起床、ほぼ昼ごろ。快眠快眠。
少し前までは睡眠時間が短くなる一方だったのだが、ここ最近は気温が下がったからか長い時間寝ていられる。
さあさあ、ここからが腕の見せどころやで!と腕をまくり、やっぱり寒いので袖を戻し、顔を洗いにいく。
売る服は頭の中であらかじめ決めていた。
ここ1年着なかった服はもう着ない。着る服は年齢や環境などによってがらりと変化していくものだ。
だから驚くほど時間はかからなかった。
問題はIKEAの青い袋みたいなでっかい容量が無いことだ。
結局、家にある大きめの袋に詰めて4つになった。
まだ売ろうと思えば売れたけど、腕が2本しか無かったからそれが限界だった。
ただでさえ持ち手か腕がちぎれそうでもあった。
電車に乗っている時はとにかく恥ずかしかった。
「あの人これから古着屋に行くのね、なんて大荷物なのかしら」など聞こえていない声が僕の肩に重さを加えてくる。
無論誰とも目を合わせることはない。
常に少し上を見ていた。
人は沢山居たけど紙袋4つを持ったバーゲン帰りみたいな人間は私を除いて周りには誰ひとりとしておらず、はやく古着屋に着きたかった。
査定に出して1時間。
あまり高価な服は無かったため、「せめて紙幣であってくれればいい...」とあまり期待をしていなかったが、予想以上にいいお金が貰えた。
「あれ...そんなにいいものあったの?」
「これメルカリで売った方が良かったんじゃね...?」などと頭の中で賛否両論が行き交ってはいたものの、『本来ならこれはお金になっていないまま部屋の一角で眠っていただけなのだ!』と思ったら売ってよかったが勝ち切った。
これで私の一日は全てが肯定された。
最高のパフォーマンス、そして結果。
気分のいい僕は安いスーパーに行って鍋の具材をいくつか買った。今日は鍋だ。一人暮らしだから強制的に、必然的に鍋奉行になる訳なのだが、今日だけはいつもよりも鍋奉行然としていたと思う。
たまにはこういう一日も必要だ。
部屋もちょっぴりスッキリとしたし、体も休まった。
明日はオーディションがあるから夜もぐっすり寝よう。
おわり