いつの間にニラ至れり尽くせり
降ったり止んだり、ある時はすごく晴れたり。
踏んだり蹴ったりまでじゃないけど厄介な空模様だ。
雲はすばしっこく流れて街には湿気を含んだ力強い風が草木を揺らす。人や建物に当たっては別の何処かへというのを気が済むまで繰り返しているみたいだ。
僕は癇癪が収まったのを見計らって美容室へ向かい、
心地良い髪型にしてもらって機嫌よく店を後にした。
珍しく人はまばらで散歩したくもなったがすぐさま家に向かう電車を選択し、帰路を辿った。
電車の窓には再び強い雨が当たり始めていた。
最寄り駅についたのは14時過ぎ。
朝はR-1と葡萄しか食べていないので流石にお腹のランプが赤く点滅していた。
これは早急に腹拵えしなくてはと立ち寄った先は近くの中華屋。こっそりずっと気になっていた店だ。
赤い暖簾をくぐると大将が「もうすぐ店仕舞いだってのに」と言いそうな微絶望を感じさせる顔を向けて「らっしゃい」と言った。
今思えば罪悪感から僕が一方的にそう読み取っただけで大将の顔は至って通常の表情だったのかもしれない。
そうは言ってもラストオーダーギリギリに来るのが宜しくないことは僕も経験上ものすごく理解している。
今日は別を当たろうと思い、一回そのまま暖簾から出ようとした。すると、奥から女将さんが出てきて「お兄ちゃん大丈夫食べていきなよ〜まだ全然いいから!」と引き戻してくれた。
そのとき女将さんの周りはきらきらと輝いていた。
これも僕の感謝のフィルターのせいだろうか。
兎に角僕は念願の最寄り中華屋に座ることができた。
迷った末に頼んだのはレバニラ炒め定食。
でっかい中華鍋を豪快に振る大将の顔には先程のマイナスの要素は一切削ぎ落とされ、職人の真剣な表情に変わっていた。背後のテレビにはドキュメンタリーがなかなかの音量で流されていたが僕は大将の料理を見ていた方が楽しかった。
そして出てきたレバニラ炒め定食。
お腹の赤ランプが400m走った後の鼓動くらい激しく赤い点滅を繰り返す。
匂いからしてもう美味しいじゃないか。
実際に食べてみる。
うん、やはり美味い。味付けが丁度いい。
レバーも臭みがなくてご飯を唆る。
僕の他に二人、ゆっくりとご飯を食べている先客がいたのだが、無我夢中で食べ進めていたらいつの間にか二人をぶっちぎって食べ終わっていた。
大将は声のトーンが上がって少し機嫌良さそうだった。
会計と礼をしてすぐ店を出た。また行こう。
お腹のランプは明るい緑色にかわっている。
外に出るとこれまた晴れ模様、
踏んだり蹴ったりとは真逆の言葉をつかいたくなったがそのときすぐには見つからないまま家についた。
思い出したらタイトルにでもしよう。
そんな日。長文失礼。
おわり