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『伝え方の本質』~伝える前にまずは聴く
わたしはいままで、伝え方でなんども失敗した。
いまでも忘れられないのが、同期の退職をやめるよう説得したときの話。
根拠はまったく無いのに、「わたしなら彼の退職を止められる」と自信満々で、会社のすばらしさを力説し、辞めずに続けるべきだと熱く訴えた。
しかしその数か月後、彼は退職する。
退職の理由は分からない。
何に不満があったのかも分からない。
しかし彼は退職した。
*
後になって、自分の浅はかさに気付いた。
わたしは、彼が辞めたい理由も会社への不満も、まったく聴こうとしてなかった。
彼の悩みに耳を傾けず、自分の話を一方的に伝えていたんだ。
そんな伝え方で、ココロを開くわけがない。
むしろ、「コイツは何も分かってないな・・」とあきらめられていたと思う。
・・・
わたしたちは何かを伝えるとき、自分中心に考えてしまう。
彼に伝えたのは、『わたしが退職しない理由』。
彼の気持ちなんてまったく考えて無かった。
*
何かを伝えるにはまず、自分が聴く。
辞めたいと思った理由、決断の決め手、将来の夢など。
真剣に誠実に聴けば、きっと彼も応えたと思う。
こちらの記事にも書いたように、自分の意見を一方的に伝えると、相手は否定されたと感じる。
否定されたと感じた人は、反論する。
こうなるとお互いの気持ちが交わることはないんだ。
つねに一方通行。
ふたりの魂は、共鳴しない。
・・・
伝え方の本を読んだら、
・数字を使いましょう
・客観的事実を大事にしましょう
・論理的に伝えましょう
と、書いてあった。
確かに会議の場では、数字が有効だ。
だけど、1-1のコミュニケーションではそうもいかないと思う。
表面上は納得しても、ココロが納得しない。
*
こんなエピソードがある。
あるとき、上司からの急な指示があって、担当のAさんに作業の追加をお願いしたんだ。
するとAさんはすごく怒った。
「なんでぎりぎりになって変更するんですか!」と。
わたしだってそんなの知らない。
たぶん上司の機嫌が悪かっただけ。
だけど、上司がどうこうはAさんには関係ないんだよね。
予定外の仕事を振られたこと自体がイヤだったんだから。
わたしは反論せず、怒りをただただ受けとめた。
そしたら数時間後、「できました」と言って新しいデザインを見せてくれた。
きっとAさんも、やらなきゃいけないって分かってた。
だけど、いきなり仕事を増やされたのが納得できなくて、気持ちが整理できなかったの。
そんなときに必要なのは、正論を振りかざすことじゃない。
相手の気持ちを受けとめて、理解すること。
・・・
相手の気持ちを受けとめるとき、わたしはいつも"あること"をしている。
それは意識してやってることじゃなくて、しぜんと体が覚えた感覚。
ここからは、その感覚をことばにしようと思う。
それは何かというと、相手と同じ立場になりきって会話すること。
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