プール前のお掃除Part1


 保育園では夏になるとプールの時間がありました。小さな保育園だったので、子供用プールが常設されているような幼稚園ではなく、家庭用の物に毛が生えたようなビニールプールでしかありませんでしたが、他にもテントやレジャーシートに支柱など用意するものは多く、それらはすべて保育園の用具この中へとしまってありました。

 この日は、夏用のプールを準備する日とあって、先生たちは裏で忙しなく動いていたのが園児の自分でもわかりました。

「じゃあ帰りの会をしましょう!」

 僕たちは帰りの準備をした後先生のお話を聞いていましたが、僕だけは保育室の床に置かれたままの掃除機が気になっていました。

 帰りの会が始まる少し前、いつも通りさえ先生は掃除機を持って掃除機がけを行っていました。 
 ギュイーーン!!というお昼寝の後の目が覚めるような掃除機の音に急速に目が覚めていった僕は、そのままT字ヘッドが動く先を見つめ続けます。時折給食後の細かな食べこぼしを吸いにくる掃除機に、僕は心をドキドキさせていました。足元に差し掛かったT字ヘッドは、テーブルの下に落ちていたパン屑を難なく吸い込み、特に特別な音を立てることもなくその場から床に落ちていたものを消していきます。
 するするっと引き寄せられるようにして吸い込まれていくゴミ達を見ながら、僕は配られたおやつをまた床にポロポロとこぼしながら食べていました。すると、僕たちがおやつを食べている様子を見たさえ先生は、

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