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保育園の先生の掃除機がけPart2

 廊下も順調に吸い上げ、玄関に到着すると、はたきの部分も当然のように掃除機で吸い上げ、みんなが外から持ってきた砂やホコリを、一気に吸い込んでいきます。

 玄関は一階であり、自分たち3歳四歳児クラスのある教室は4階でしたが、自分が掃除機好きなことは周りの先生達になんとなく知られていたのか、職員室からその光景を、見せてもらっていました。

 一方、掃除機がけを進める先生は、玄関にあるすのこも持ち上げ、はたきの隅に溜まった砂もT字ヘッドのブラシでかき出しながら吸い込んでいきます。
はたきの前にあるマットも、T字ヘッドを押し付けながら、丁寧に吸い込んでいました。

 その後、玄関の隣にある多目的トイレの中も、親子ノズルのまま掃除機がけをした後は、今度はそのノズルではたきの溝に入った砂などを吸い上げていきます。
 そこで先生は、またスイッチを「強」にして、親子ノズルを滑らせるように、ホースを揺らしながら、掃除機をかけていくのです。それでも吸いきれないゴミなどは、延長ノズルを外して、手元ノズルに隙間ノズルを装着し、もちろん強のまま、隙間も綺麗さっぱりに吸いまくります。一通り先生の容赦ない吸い込みが終わった後は、スイッチを切らずに、今度は下駄箱の掃除にうつります。
 先生は、「ギュイーーン」という掃除機の音と、ノズル先から出る「シューー」という空気を吸い込む音を奏でながら、下駄箱にノズルを突っ込みます。
 保育園の下駄箱なので、横並びに四足ずつ男女分かれてみんなの靴が並んでいるような下駄箱でしたが、一列ずつ靴を取り出すと、隙間ノズルで奥にある砂や落ち葉のかけらなどをチャリ、チャリ、と吸い込み、隅に溜まった砂には、ここぞとばかりに隙間ノズルをつっこみ、ズボっと小石なども当然のように吸い込むと、みんなの靴の裏についた砂などもチャリチャリっと丁寧に吸い込みながら一足ずつ戻していきます。

 小さな保育園なので、綺麗好きであろう先生は、数も少ないみんなの下駄箱を一段ずつ、丁寧に吸い込んでいきました。下駄箱の上にあった棚や、紙を止めておく板などのすみにも、丁寧に隙間ノズルを当てていき、薄く積もったホコリをスルスルっと吸い取っていきます。時折、何かに吸い付き、ギュイーーンという音を響かせながら、先生は掃除機がけをしていました。
 シューーーッと吸い口から砂を吸い込み、時折ホースがブルンッと揺れる掃除機を、手で抑えながら操る先生の姿は、幼い自分にも鮮明に残っています。

 みんなの下駄箱を吸い終わった後は、延長ノズルを取り付けると、扉が開いた状態の玄関の溝の砂も、チャリ、チャリと吸い込んでいき、そこの掃除が終わると、下駄箱の下をなぞるように吸いながら、キューーンと電源が切れる音と共に掃除機がけは一旦終わるのでした。

 その後先生は掃除機を一旦廊下に置いてきて、自分と一緒に教室に来て手を洗い、おやつを食べ終わったみんなのところに来ていましたが、帰りの会が始まると、また掃除機がけを再開します。
しかし、帰りの会に参加しなければならない自分は、キーーーンという音や、スゥォーーという隙間ノズルの音を耳にし、そわそわとする心や、ムズムズを抑えながら、帰りの会をなんとか終わらせるのでした。

 このムズムズは、今でいう興奮の状態なのかもしれませんが、当時の自分にはそんなこと分かるはずもなく、ただその音に耳を澄ませながらうずうずしているのでした。

 そして、帰りの会が終わり、自由時間になると、先生のもとに階段を降りて下の階にいったのですが、その時の先生は、掃除機を置きっぱなしにして、どこかにいっているところでした。
 その掃除機は、フタが開いた状態で、程よく紙パックが膨らんだ状態でした。
 もちろん親子ノズルと延長ノズルははずされ、手元ノズルだけの状態でその場に置かれていました。

 すると、その先生が
「ゆうくん、触っちゃだめだよ!」
と自分に言いながら駆け寄ってきて、膨れた紙パックをすばやく新しい物に変えると、古い紙パック持って、フタつきのゴミ箱を指さすと、
「掃除機で吸ったゴミさんたちは汚いから、ぽいしよーねー!」
と言って、パンパンの紙パックを外します。その後、自分と手を繋いだ状態で、もう片方の手で紙パックを持ち、ゴミ箱に捨てにいくと、
「ポイできたね!」
と言って自分の前にしゃがみ込み、
「〇〇くん、先生の掃除機がけ、これでよかった?」
と少し困ったような顔で聞かれました。自分は今さっきあんなに掃除機をかけていた先生が目の前にいて、普通に話せる状態ではなかったので、
「うん、、」
と言うのが精一杯でした。
 そう反応した自分に対して、先生はニコッとしながら、
「そっか、よかった!また〇〇くんのために掃除機をかけてあげるね!」
と言って、ニコッと微笑んでくれました。

 ただ、プラグは刺さったままの状態で、新しい紙パックに変えた先生は、
「じゃあ、先生はもうちょっとお掃除するね。危ないから離れててー。」
と言って、手元ノズルと延長ノズル、T字ヘッドをくっつけると、みんなが他の先生と遊んだり、帰る子もいる中、職員室の机の周りの掃除機がけを始めます。先生は、落ちてるゴミや毛やホコリなどを、机ごとに丁寧に掃除機がけしていきます。

 時折、椅子に本体がぶつかったりする様子や、ホースが角に当たって揺れる様子、親子ノズルに変えて角を吸い込む中、カーテンに引っかかって、ホースが縮み上がる様子を、幼い自分はじっと見ていました。
 時折、こちらを見て笑ってくれる先生もまたあいまって、自分のそわそわは収まりませんでした。

 そして、職員室の掃除を終えた先生は、プラグを付け替えると、今度は2歳児クラスのある上の階に向かって掃除機をかけていきます。
 T字ヘッドの掃除機を持ち、丁寧に一段ずつ掃除機をかけていく先生の後ろ姿は、やっぱり印象的でした。

 その後は自分も階段を上がっていって三歳児四歳児クラスに戻って友達と遊んでいましたが、階段に掃除機をかけている音や、時折T字ノズルを外して細くなったホースを通る空気の音などが響き、またもや自分をそわそわさせます。そして、階段を上がって自分の教室に近づいてくると、廊下からT字ヘッドが覗き、掃除機を持った先生がまた教室に入ってきました。出しっぱなしのコードを、園児が引っ掛けないようにしっかり持ちながら、自分たちの教室に入ってきて、掃除機がけの準備をしながら、
「おやつ食べたところも掃除機かけるから、みんなあっちで遊んでねー!」
と先生が言うと、みんなは
「はーい!」
と返事をして移動し、先生はコンセントにプラグを刺します。
 そして、食べかすなどが落ちた床などを掃除機がけしていきます。そして、机の上も豪快にT字ヘッドを載せて、溢れている食べかすを一網打尽に吸い取っていくのです。

 この日ではありませんが、延長ノズルごと外して手元ノズルの状態にして、机の足についたホコリを吸い取っていたり、誤って落ちていたブロックをカチャっと吸い込んだりする先生でした。しかし、この日は特に何もすることはなく、キューーンとスイッチを切ると、机の上を台拭きでふいて、
「お掃除終わったからこっちでも遊んでいいよー!」
と言って、先生は掃除機を片付けにいくのでした。

 そんな感じで、自分の保育園の掃除は行われていました。今となっては、それが自分を掃除機好きにさせた1番の要因なのだろうと思っています。

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