【2024年度】立命ロー前期入試 答案(憲法)

1 概要

 2024年度の立命ロー前期入試(憲法第1問)を解いてみました。(なお、私は受験生ではないので、当日受験はしていません)。
 以下では、問題文のリンクと参考答案、若干のコメントを付けています。なお、答案は1時間測って解いたものではないので再現性は低いです。あくまで参考程度に留めておいてください。

2 問題


3 参考答案


4 コメント

 本件のモデルとなったのは、名古屋地判令和4年1月18日(LEX/DB 25591643)です。判決原文も添付しておきます。

 評釈として、玉蟲由樹「判批」重判令和4 年度(ジュリ1583 号)8-9頁(2023)、毛利透「判批」法学教室500号101頁(2022)、TKC新・判例解説watch・憲法No.199などがあります。
 また、本判例も踏まえた学生向けの解説として、堀口悟朗「DNA型記録とプライバシー権」法学教室509号74-81頁(2023)が非常に参考になります。是非一読されることをおススメします。

以下では、答案についての若干のコメントを付しておきます。

  •  法令違憲を書くかどうかですが、法令違憲は書かない方が無難かと思います。
     問が「Xの請求は認められるか」という聞き方をしており、請求の可否を問うていることは明らかです。自己情報コントロール権が具体的権利でない限り、請求をするには具体化する立法が必要です。そして、わざわざ規則を参考法令として挙げてくれている以上、これを違憲無効とするのは適切ではなさそうです。規則7条を違憲無効で飛ばしてしまったら、請求の基礎となる条文がなくなり、請求自体が立たなくなってしまいます。
     したがって、本問との関係では、全く書かないか、あるいは書くとしても簡単に合憲だとしてしまう方がいいように思います。
    (そもそも、7条はDNA型情報をデータベース化して保持することを許可する授権規範ではありません。授権規範は、規則3条1項・2項及び6条です。3条1項・2項、6条を法令違憲で飛ばせば、保管する権原(データベースを作る権限)がなくなり、当然に削除することになりますが、規則3条1項2項・6条は問題文に記載がなく、六法にも載っていないので、この構成は無理です)。

DNA型記録取扱規則
3条1項
 警察庁刑事局犯罪鑑識官(以下「犯罪鑑識官」という。)は、警視庁、道府県警察本部若しくは方面本部の犯罪捜査を担当する課(課に準ずるものを含む。)の長又は警察署長(以下「警察署長等」という。)から嘱託を受けて被疑者資料のDNA型鑑定を行い、その特定DNA型が判明したときは、当該被疑者資料の特定DNA型その他の警察庁長官が定める事項の記録を作成しなければならない。
2項
 警視庁又は道府県警察本部の科学捜査研究所長(以下「科学捜査研究所長」という。)は、当該科学捜査研究所が警察署長等から嘱託を受けて被疑者資料のDNA型鑑定を行い、その特定DNA型が判明したときは、当該被疑者資料の特定DNA型その他の警察庁長官が定める事項の記録を作成し、これを犯罪鑑識官に電磁的方法により送信しなければならない。
6条1項
 犯罪鑑識官は、第三条第一項の規定により被疑者DNA型記録を作成したとき又は同条第二項若しくは第三項(第四条第二項の規定により準用する場合を含む。)の規定による被疑者DNA型記録、遺留DNA型記録若しくは変死者等DNA型記録の送信を受けたときは、これを整理保管しなければならない。

  • また、純粋な適用違憲も、無理があるように思います。適用違憲で検討する対象は、処分等の法令の適用行為です。しかし、本問では、国はまだ何も適用していません。問題文が「Xは規則7条に基づき、削除を請求したところ、これを不許可とする通知がなされた。この問題に含まれる憲法上の問題点を論じよ。」などであれば、適用違憲だなとわかりますが、そうなっていない。ここも、この問題の難しさであると思います。

  •  今回問題となるXの請求を請求権として構成すると、三段階審査は使えないと言う点に注意が必要です。(詳しくは、憲法ガール、憲法上の権利の作法参照)←追記参照
     本問に即して言うと、7条が請求の根拠規範であるとでっち上げて、要件・効果を解釈した後、これにあてはめるという民法的な書き方で良いように思います。この要件規定の解釈の中で憲法論を展開していきます。

  •  そうすると、憲法論のあてはめの部分も、Xの個別具体的事情を除いた一般的・抽象的な事情を用いたあてはめにならざるを得ないように思います。(もっとも、これが本当に正しいのかはなお、疑問ですが)。


 立命ローの入試については、詳細な解説がアップされます。正確な理解や解釈はそちらで確認してください。あくまで学生が書いた答案・コメントですので、誤りを多分に含みます。あしからず。


※追記

 本問では、削除請求権を13条の請求権的側面の問題として構成しました。しかし、裁判例や通説的理解に従えば、13条によって保障される人格権に対して制約がかかっている局面ということになります。したがって、請求権ではなく人格権に基づく妨害排除請求として構成するべきでした。つまり、13条の自由権的側面が問題となった事案であったというわけです。
 この点において、上記答案には構成ミスがあります。ご留意ください。



いいなと思ったら応援しよう!