クラウドワークスのユーザーインタビュー設計手順を大公開!
この記事は2019-02-15にクラウドワークス デザイナーブログにて執筆公開されたものです。
こんにちは!UXデザイナーの小阪(@yuta3594)です。
3月22日のサッカー日本代表vsコロンビア代表@日産スタジアムのチケットを取ることができました。
何気に代表戦をスタジアムで観るのは初めてで、今からとても楽しみです!
初めてだと何かとわからないことがありますよね。応援歌とか覚えておかないと…?
初めてでわからないと言えば、「ユーザーインタビューを始めたいけど、どうしたら良いかわからない…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ユーザーインタビューを始める前に、弊社では設計書を作成します。
設計手順はテンプレートとしてまとめられており、毎回そのテンプレートを使って新しい設計書を作成し、ユーザーインタビューをおこなっています。
本日は、そのテンプレートに倣って、
ユーザーインタビュー設計手順を大公開いたします!
なお、大前提として、弊社は人間中心設計の考え方に沿ってUXデザインをしています。ユーザーインタビューはその一部ですので、馴染みの無い方は人間中心設計についても調べてみてください!
各項目について、「新サービスを作りたいと思っている、訪日外国人向け観光メディアを運営するA社」でのユーザーインタビューを例に説明できたらと思います。
手順1:「背景」の整理
ユーザーインタビューをしたいと思った背景を整理することで、後の項目にある「目的」「ゴール」「知りたいこと」を整理しやすくなります。
例えば、A社の調査だと、
背景
・自社で訪日外国人向け観光メディアを運営しており、多くの訪日外国人にアプローチできる土台がある
・観光メディア以外に、同規模以上の売上が見込める新規事業を作りたい
・しかし、今まではSEO観点でしかメディアを作っていなかったため、訪日外国人が抱えている課題の検討がつかない
・既存事業のアセットを活かせる訪日外国人を対象に、ユーザーインタビューをおこない、課題を把握したい
などになります。
制約条件や、スケジュールなどもこの時点で整理されていると尚良しです!
手順2:「目的」の整理
目的が不明確だと、「いろいろ話聞けましたね!あれ、それからどうするんだっけ?」となりがちです。
調査にとって意味のない話ばかりを聞いてしまったり、得た大量の定性データの分析方法がずれてしまったりすると、良い調査にはなりません。
調査後、次のステップに繋げられるように目的を明確にしましょう。
例えば、A社の調査だと、
目的
・訪日外国人が抱える課題を明らかにし、解決策を検討する上での材料とするため
となります。
手順3:「ゴール」の設定
どのような結果・状態が達成されていれば、この調査は成功ですか?
インタビュー設計時、インタビュー台本作成時、インタビュー結果の分析時に常に立ち帰れるように、ユーザーインタビューのゴール設定をしましょう。
例えば、訪日外国人向け新サービスのための調査だと、
ゴール
・訪日外国人が抱える課題が強弱含めて整理されており、
・解決すべき課題についてチームで合意が取れた状態
になります。
上記のゴールを達成できれば、次はユーザーモデリングを行い、解決策のプランニング・検証に進むことになるかと思います。
※ユーザーモデリングは、ユーザーの現状の可視化をするもので、具体的には「ペルソナ作成」「As-Isカスタマージャーニーマップ作成」などを指します。ユーザーの現状を可視化してチームで共有することで、理想のユーザー体験を描く土台ができます。
ゴール設定は、スケジュールやリソースなどの制約、インタビューの目的などを複合的に考慮して設定しましょう。
このA社の調査は「訪日外国人の課題を知る」というざっくり感が強い調査のため、ユーザーモデリングまで最初からスコープにいれてしまうと、時間がかかりすぎる or うまくいかない可能性が高くなる気がして外しています。
各調査で適切なゴールを設定してください!
手順4:「知りたいこと」の整理
どのようなことを知ることができたら、ゴールを達成できますか?
この「知りたいこと」がこの設計手順の中で一番重要かもしれません。
目的やゴールは、抽象度が比較的高いです。
よりインタビュー精度を上げるためには、ゴール達成のために必要な要素を具体化する作業が重要です。
具体的なイメージ、つまり「知りたいこと」がないままインタビューの内容を設計しても精度は低くなってしまいがちです。
弊社の場合はこの「知りたいこと」「インタビュー対象者」は関係メンバーで集まって一緒に決めることが多いです。そのほうが合意含めて色々と早かったりします。
手順的には、
1. 関係メンバーで集まる
2. 「背景」「目的」「ゴール」を確認する
3. 知りたいこと、ユーザーに聞きたいことをブレストする(付箋に書き出すでも良いし、ホワイトボードに書き出しても良い)
4. 目的やゴールに沿うように、出たアイディアを取捨選択・構造化していく
5.最終的に2〜3個くらいに絞る
といった形で進める形が多いです。
「知りたいこと」「聞きたいこと」と上記で記載してますが、別ものとして捉えています。
「知りたいこと」は、ゴール達成のために必要なことで、インタビューで聞いた話を分析することで見えてきます。(ちなみに聞いたことをそのまま鵜呑みにすることはありません。必ず手順7の分析をおこないます)
「聞きたいこと」は知りたいことを知るために具体的にどんなことを聞いておきたいか、です。
上記3のブレスト段階では、アイディアを出しやすくするために区分けは考えずに出しまくりますが、4で整理するときには分けて考えます。
ちなみに「聞きたいこと」は「手順6:インタビュー内容」を考える時の材料になります。
例えば、A社の調査だと、
知りたいこと
・日本旅行への期待
・実際の旅行はどうだったか(旅行前、旅行中、旅行後)
・今回の旅行に足りなかったもの
など。
課題は理想と現実のギャップなので、旅行に期待していたものと、現実の旅行はどうだったかを知りたいです。
それだけでも課題は把握できますが、別視点でも話を聞いてみたいので「今回の旅行に足りなかったもの」というものを入れてみました。
足りなかったものには、マイナスをプラスにする要素と、プラスをさらにプラスにする要素の両方を含めています。
手順5:「インタビュー対象者」の設定
「知りたいこと」を知るために、正しい人から話を聞く必要があります。 そのために、知りたいことを聞ける人の条件をしっかりと定義しましょう。
例えば、A社の調査だと、
インタビュー対象者
・旅行が目的で、
・1ヶ月以内に訪日した
・外国人
ビジネス目的で来ている人は観光メディアを運営しているA社のターゲットから少し外れるので除外。記憶の新しい人に話を聞きたいため、1ヶ月以内に来た人。という所でしょうか。
同じ属性の人であれば5名に話を聞けば、だいたい見えてきます。
インバウンドビジネスについて私があまり詳しくないため微妙な所ではありますが、必要に応じて「年齢」「家族構成」「旅行した都市」などで細分化して、その属性で5名に話を聞くかもしれません。(それらが違うことで、旅行の課題に大きく差異が出る可能性が考えられるためです)
とりあえず薄く広く聞くであれば、細分化した属性3名ずつでもある程度の結果は得られるかと思います。
■リクルーティング
条件を決めた後はリクルーティング作業です。
リクルーティングとは、インタビュー対象者を集めることですが、 実は、ユーザーインタビューではここが一番コントロールが効きづらく、難しい部分だったりします。
しっかり話を聞きたい人を定義して集めているのに、意図しないインタビュー対象者が集まってしまうのです。
上記のA社の例だと、「旅行が目的で1ヶ月以内に訪日した外国人」という条件で集めても、じつは昔10年くらい日本に住んでて日本のことは何でも知ってる人が来てしまったり、とか。
旅行でたくさん困ったことがあった人に話を聞けば訪日外国人の課題を見つけやすい=ゴールを達成しやすいという仮説で「旅行が目的で1ヶ月以内に訪日した、海外旅行に行くのが今回初めての外国人」という条件にしていたとしても、リサーチ能力が高くて完璧に旅行を終えてしまった人が来てしまったり、とか。
色々難しいです。
弊社ではリクルーティング精度を少しでも高めるために、「データベース」「事前アンケート」で絞り込みを行っており、その絞り込み条件もインタビュー設計書に書いています。
データベースで絞り込み可能な部分は、ユーザー抽出時点で絞り込んでおき、データベースだけでは絞り込みきれない部分は、事前アンケートを作成して答えてもらい、インタビュー対象者選定の材料にします。
5名のインタビュー対象者を集めたい場合、約50名に事前アンケートに答えてもらいます。50名に事前アンケートに答えてもらうために、約500名に声をかけます。それだけ慎重に絞り込みをおこないます。
自社ユーザーであれば上記のようにデータベース等を利用して集められますが、非自社ユーザーは集めるのは大変かと思います。そんな時はクラウドワークスでインタビュー対象者集められますので、ぜひご活用くださいw
手順6:「インタビュー内容」の設計
「知りたいこと」を知るために、実際に質問をしていく内容を考えます。
その際、必ず「ラポール形成(信頼構築)」→「本題」という全体の流れの意識します。その上で、ユーザーさんが話しやすい内容で、かつ我々のゴールを達成できるようにインタビュー内容を設計していきます。
※ラポール形成は信頼構築という意味で、ユーザーさんから話を引き出しやすくするためのテクニックです。ラポール形成や、その他ユーザーインタビューのテクニックについては、こちらの記事をご参照ください!
例えば、A社の調査だと、
インタビュー内容
・普段の生活
・日本へ旅行に来たきっかけ、理由(この旅行に期待していたもの)
・旅行前にしたこと(どの瞬間が楽しかったか、何か心配事はあったか)
・旅行中にしたこと(どの瞬間が楽しかったか、何か心配事はあったか)
・旅行後にしたこと(どの瞬間が楽しかったか、何か心配事はあったか)
・もう一度、日本に来るとしたらどんな準備をしたいか
「普段の生活」は完全にラポール形成目的です。
「日本へ旅行に来たきっかけ、理由」はラポール形成と、旅行への期待を把握することを半々くらいずつ目的にしています。
残りは旅行者の課題を知るためのインタビュー内容です。
知りたいことにある「今回の旅行に足りなかったもの」は、「もう一度、日本に来るとしたらどんな準備をしたいか」というパートで回収しています。
もちろん、旅行前・旅行中・旅行後の話を聞く中で色々話は聞けますが、知りたいことを確実に知るための追い打ちですね。
とか、色々考えながらインタビュー内容は設計します。
こういったざっくりとしたインタビュー内容を作った上で、さらに詳細な「インタビュー台本」を別途作ります。
実際のインタビューは、インタビュー台本を手元に置きながら進めますが、台本通りに質問していかないことは多々あります。
あくまでインタビュー中に強く意識するのは「知りたいこと」で、それを知るために話の流れを活かしながら会話を広げ深めていきます。
そのため、大もとになる「知りたいこと」は非常に重要です。
手順7:「分析」の設計
■目的
ユーザーインタビューは分析をしないと意味がありません。しっかりゴールを達成するために、聞いた話を分析していきます。
ユーザーの声を聞いて開発をすることの失敗例でありがちなのが、ユーザーさんに「Aという機能が欲しい!」と言われて、そのままAという機能を実装することです。
これは病院に例えると、「胃が痛いから手術してくれ!」と言われて医者がそのまま手術するようなものです。
ユーザーさんは、どんな背景や課題、欲求があって「Aという機能が欲しい!」と言っているのか、それをインタビューと分析で明らかにします。
話していたことをそのまま聞くとA機能を作るべきだと思うかも知れませんが、一度立ち止まって深く分析してみると、実は課題は別の場所にあって、B機能を実装することが最善だったりするのはよくあることです。
例えば、A社の調査だと、
分析の目的
・どんな人が、どんな期待を持って日本にきて
・どんなポジティブ・ネガティブな体験をしたか
・その要因は何だったか
の3点を抽出する。
■進め方
どのように分析を進めるかを、インタビュー設計時点で考えておきます。「どのように分析するか」から逆算して、インタビュー内容等を調整することもあります。
例えば、A社の調査だと、
分析の進め方
・個人分析(KJ法AB型)※上記3つが抽出できるように意識
・統合分析
などです。
個人分析と統合分析ってどうやるねん!というツッコミが聞こえてきそうですが、それはまた大きな話になるので、いつか記事にできたらと思いますw
設計手順は、こちらで以上です。
少しでも皆様のユーザーインタビューの参考になれば幸いです。
今後もデザインやプロダクト作りについて発信していきますので、
クラウドワークス デザイナーブログと、
私のnoteとTwitterのフォローをどうぞよろしくお願います!
ユーザーインタビューの分析手順についてはこちらをご覧ください。