バーニー・フュークスの世界
12月9日金曜日、休暇をとった。
理由は池袋ではじまったミネラルショー。昨年と一昨年にも書いていた、毎年12月におこなわれているものだ。
今年は海外からの出展社が復活して、会場も1フロア増えた。昨今の鉱物ブームを考えると週末の混雑は必至。そして仕事のことを考えるとなるべく海外ディーラーとの情報交換はしておきたい・・・ということで、すこしでも混雑を回避できればと思って初日に赴くことにした次第。
仕事ではなく個人的に行くことにしたのは、仕事での手続きが面倒だということもあるのだけれど、ミネラルショー以外にも行きたいところがあったから。
というわけで、この記事はそのミネラルショー以外の部分について。
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ミネラルショーを後にして向かったのは代官山。これまで何度か書いているように代官山界隈はわたしの好きな街だ。とってもお洒落なお店が並ぶ雰囲気は歩いているだけで楽しくなる。各国の大使館があっていろんな国旗が見られるのも楽しいポイント。
で、目的はデンマーク大使館の向かいにあるヒルサイドフォーラム。この火曜日から6日間だけ開催されている展覧会「バーニー・フュークスの世界」。
バーニー・フュークスは米国のイラストレーター。現代の印象派と呼ばれた人物だ。今回生誕90周年を記念してこの回顧展が開催されたとのこと。
会場のヒルサイドフォーラムのギャラリーは、蔦屋書店に行くたびに前を通っていて存在は知っていたのだけど入ったことはなかった。入るのは今回が初めて。
この展覧会は、以前利用したことのあるアート系のウェブサイトからのメールで紹介されていた。メールにあしらわれていたエリザベス2世の肖像画が気になった。
メールは個人間のやりとり以外は後回しにしてしまいがちなのだけど、たまたま会期前に見たのはなにかの縁。そしてこの短い会期が、たまたまわたしが池袋に行く予定をいれていた期間と重なるのもなにかの縁。池袋から代官山はそう遠くない。というわけで、昼過ぎにミネラルショーを切り上げて代官山へ向かった。
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受付でもらえたリーフレットから、バーニー・フュークスについて書かれた部分を引用しておく。
この略歴にあるように輝かしい業績をもつイラストレーターだ。しかしながら、米国でのスポーツ誌などでの活躍が主流だったせいなのか、美術館での露出が(ほとんど?)なかったせいなのか、国内での知名度はものすごく高いわけではない。
わたしはバーニー・フュークスの名前を知らなかった。しかしいくつかの展示作品からはどこかで見覚えのある懐かしさをおぼえた。イラストレーションだからポスターやチラシなど商業的な媒体で利用されていたのを見ていたのかもしれない。
ポスターに使われていた人物画・肖像画、的確にとらえられたモデルの視覚的な特徴はもちろんのこと、勢いのある筆致の緊張感が魅力的だ。そして展示の大部分を占めていたスポーツのシーンは、写真でいう逆光やぼかしの表現がとても効果的に臨場感と生命感を与えている。
スポーツや屋外がモチーフの作品に共通しているのは、溢れんばかりの光の表現。光があれば陰がある。それらの対比から浮かびあがるかのような躍動感と生命感がスリリングでひきこまれる。
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図録などがないかわりに会場内は写真撮影OKだった。個々の作品はわかりにくいけれど、いくつか会場の様子がわかる写真を載せておく。
ひとつ、とても気になったけれど写真を撮らなかった作品がある。野球のスタジアムの外側からスタジアムを見た場面の作品。囲いの布の隙間からこぼれる強い光が印象的だった。外側から応援する人たちの心理が凝縮されたように伝わってくる。
この作品の前から動かずに鑑賞していたお客さんがいたので、わたしは遠巻きにしか観られなかったのだけど、それでもその魅力は伝わってきた。鑑賞していたかたはこのシーンに似た記憶に強い思い入れがあったのだろうか。それとも画面構成と明暗表現の素晴らしさに動けないほど感動していたのだろうか。
とにかく鑑賞者をそれだけ釘付けにできる作品は素晴らしい。
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受付の右奥からつづく展示室。ちょうど中二階のようになっているその展示室に、スポーツの一場面がモチーフの作品がならぶ。途中の階段をあがった奥に肖像画など。その奥から2階の別室につながり、風景や動物を描いた作品が展示されていた。
階下にはジクレーによる複製が展示販売されていた。これらの複製画も見応えがあった。おなじフロアのカフェスペースは絶妙な位置に配置されていて、鑑賞しつつ休憩や商談にスムーズに移れそうな感じだ。
無機質なホワイトキューブ系ながら、考えられた導線とカフェスペースと連続する空間には心地よさがある。こんな会場で個展ができたら良いなぁ〜なんてちょっと妄想した。
ついつい長く書きそうになってしまう。今回はここでおしまい。
会期がこの日曜日までなので、このnoteを目にして間に合うなら行ってみようかと思われる読者がいれば良いなと思っている。