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日本の医療の特徴は「低いPと高いQ」

日本で医師をしていた私が、医療政策学と医療経済学を学ぶために渡米したのは2010年のことです。

当時、私は増え続ける社会保障費と、救急外来を訪れる数多くの患者さんを見ていて、日本の医療はサステナブルではないと感じ、日本の医療が直面する問題を解決する糸口を見つけるために渡米しました。

医療経済学を大学院などで習うと、一番はじめにならう数式が下記になります。

総医療費=P(単価)×Q(医療サービスの提供量)

難しい話ではありません。「医療費の総額は、単価と量のかけ算で決まります」ということです。この原則が分かると、医療費の問題を考えるときに、まず最初にPとQのどちらの問題なのか、という考え方のフレームワークを手に入れることができます。

さて、日本の医療の特徴はどうなのでしょうか?以前の記事でご説明した通り、日本は昔は「医療費の安くて、医療の質の高い国」と理解されていましたが、近年では、日本の医療費は欧米と比べても高めで推移しており、最新のデータを見てみると、米国、ドイツ、フランスに次ぐ、世界で4番目に医療費の高い国となっています。

GDPに占める総医療費の割合の国際比較(出典:OECD Health at a Glance 2023

日本の社会保障費は137兆円に達しており、そのうち約3割が医療費となっています。そして、下記の図の「福祉その他」には、約11兆円の介護費が含まれています。

(出典:国税庁ホームページ

日本の医療費には、欧米と異なるかなり特徴的なパターンがあります。例えば、米国の医療費は世界一高いのですが、それは単価(P)が高いからであると言われています

一方で、日本の医療の特徴は、「低い単価(P)と高い消費量(Q)」です。

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