論文"Declaration of Victory: The Meaning and Achievements of the Stanford University Baseball Team's 1913 Tour"の草稿のご紹介(4)
昨年12月、ロバート・フィッツ、ビル・ナウリン、ジェームズ・フォーの各氏の編纂した書籍"Nichibei Yakyu: US Tours of Japan"の第1巻がアメリカ野球学会(SABR)から刊行され、私も論文"Declaration of Victory: The Meaning and Achievements of the Stanford University Baseball Team's 1913 Tour"を寄稿しました。
今回は、論文の日本語版草稿のご紹介の第4回目となります。
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1935年に現役を引退したベーブ・ルースは、大リーグ史上最高の打者の一人として知られ、1936年には新たに設置されたアメリカ野球殿堂に顕彰された最初の5人の選手の一人にも選ばれた名選手である。しかし、そのような野球の歴史に燦然と輝くルースは、球団の監督になることを希望しながら、ついにどの球団からも招聘されなかった。
ルースが監督になれなかった理由の一つとして挙げられる理由が、ニューヨーク・ヤンキースの経営責任者であったエド・バローによる「自分を管理できないものがどうして他人を監督できるのだろうか?」(How can he manage other men when he can't even manage himself?)という指摘である[13]。
この指摘の対象には、ルースの球団経営者や指導者などに対する横柄な態度や規範意識の欠如とともに、体重管理を含む自己節制の不十分さも含まれている。従って、スタンフォード大学の選手の中に17日間で体重が12kg増加した者がいたことは、船内での快適な生活を享受し、自己節制が不足する事例があったことを示すのである。
ただ、一行が横浜港に到着した際、スタンフォード大学野球部の選手の体形について、日本側は「体躯が偉大」[14]と考えることはあっても、17日間で体重が増加したことは大きな注目を集めなかった。
例えば、読売新聞は「彼らはいずれも冬のスーツに鳥打帽という装いで、瀟洒な青年紳士である。そして、全フィリピン野球団を見た目にとっては、特に体躯が偉大なことが実感される。これだけでもわが野球界を圧倒する威力を備えているようである。」 と選手たちの様子を好意的に紹介している。
[13]Tracy Brown Collins (2009). Babe Ruth. New York: Checkmark Books, p. 91.
[14] 必勝を揚言す」『読売新聞』、1913年5月28日3面。
[15]同上。
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<Executive Summary>
Draft of Artcile: Declaration of Victory: The Meaning and Achievements of the Stanford University Baseball Team's 1913 Tour (IV) (Yusuke Suzumura)
My article "Declaration of Victory: The Meaning and Achievements of the Stanford University Baseball Team's 1913 Tour" is run on Nichibe Yakyu edited by Robert K. Fitts, Bill Nowlin, and James Forr published in December 2022. On this occasion, I introduce the Japanese draft to the readers of the weblog.
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