『クラシック音楽館』の特集「人間・ベートーヴェン」で思い出した稲垣吾郎さんにまつわるいくつかのこと
9月20日(日)にNHK教育テレビで放送された『クラシック音楽館』の特集「人間・ベートーヴェン」の概要と番組の意義については、9月21日(月、祝)の本欄で検討した通りです[1]。
そこで、今回は番組を視聴した際のいくつかの所感をご紹介します。
この日の番組の司会者は稲垣吾郎さんでした。
私が初めて稲垣さんのことを知ったのは1989年にNHK総合テレビで放送された連続テレビ小説『青春家族』で、稲垣さんは主人公である清水美砂さんの弟役で出演していました。
『青春家族』で最も印象的であったのは清水さんの父親役を務めた橋爪功さんでした。橋爪さんについては前年の大河ドラマ『武田信玄』で軍議の後に周囲の様子を盗み見ながら団子を懐に忍ばせた真田幸隆の役を興味深く視聴しただけに、味わい深い演技を半年にわたり目にできたのは愉快なことでした。
この時の稲垣さんは外見的な線の細さに応じた繊細な演技であり、いかにも初々しいものでした。
当時、私は稲垣さんについて新進の俳優であるとばかり思っており、歌手とは考えていなかったため、後にテレビの音楽番組でSMAPの一員である姿を目にして意外の感を覚えました。
その様な稲垣さんが歌手としても俳優としても一家をなし、舞台でも存在感を発揮していることは周知の通りです。
先日の『クラシック音楽館』では、ベートーヴェンの手紙「不滅の恋人」が紹介され、稲垣さんが手紙の一節を朗読しました。
情感豊かにヨゼフィーネ宛の手紙を読む姿にはある種の風格も感じられ、『青春家族』でのある種のあどけなさと比べれば、隔世の感を禁じ得ませんでした。
そして、この場面から、31年にわたって芸能界の第一線で活動する稲垣さんの姿が立ち現われ、感慨深く思われたのでありました。
[1]鈴村裕輔, 『クラシック音楽館』の特集「人間・ベートーヴェン」が番組と視聴者にもたらした大きな成果. 2020年9月21日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/cee0131dbeb2bccfad22b11a9e601106?frame_id=435622 (2020年9月23日閲覧).
<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Mr. Goro Inagaki through "Classical Music Hall" (Yusuke Suzumura)
A TV programme Classical Music Hall broadcasted by NHK Educational was hosted by Mr. Goro Inagaki on 20th September 2020. In this occasion I remember miscellaneous impressions of Mr. Inagaki.